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112. エルの覚醒 ⑤

「エルが目を覚まさなかったって?」


「私は500年もの間、赤子のまま眠り続けていました。教会の奥で。シン・サクライはその時がきたら目を覚ますと言っていたようですが。教会の司祭達はその言葉を信じ、私を守り続けていたようですが・・・」


「それで血迷った奴らがもうこの赤子は目を覚まさないと勘違いをして暴挙にでたと?それが聖ピウス皇国の奴らだな?」


「はい。私を連れて逃げてくれたのは多分司祭の一人かと」


「じゃあ、その時とは今なのだな。本当にシン・サクライとは神のような男だな。始めから見越していたようだ。エルはこの後どうしたい?」


「できるなら、皆と一緒にゾルアに行ってその正教会の司祭という人に会ってみたいです。その人がシン・サクライの部下で裏切っているとしたら・・・」


「わかった。でもエル、君は何か勘違いをしている。俺達は仲間だろう?なんで一緒に行かないと思うんだ」


「でも、私がヴァンパイアだったら・・」


「ヴァンパイアだったら何?大体今の話ではヴァンパイアが悪ではないだろう?それを利用して悪事をする者が悪だ。そんな事で悩むな」


エルの瞳に涙が浮かんだ。


「返事は?」

「はい。悩むのを止めます」

「よろしい。それで、その、エル。随分、成長したようだが」

「そうなんです。ゾルアに出発する前に服を買いに行ってもかまいませんか」

「あたりまえだ。早く行ってこい」

「はい」

「僕も行く~」と言ってセイガもエルについて行った。


自分の部屋に戻りながらアレクは深い溜息をついた。


「お話し合いは済みましたか」

タンガが心配そうに聞いてくる。


「ああ、エルは自分の出自について悩んでいたんだ。気付いてやれなくて。ところでタンガ、エルを見て驚くなよ。あいつ、随分成長したからな」

「え、成長とは?」

「立派な女性にな」

「ええー!エルさん女の子だったんですか?」

「そうだよ、知らなかったのか?」

「全然、でもきれいな子だとは思いましたが」

「おい、変な気起こすなよ」

「しませんよ。アレクさんがいるし」



夕飯時、タイトなズボンを身につけたエルが降りてきたが今までとは明らかに違っていた。どこからどうみても女性にしか見えない。


「おまたせ。あーお腹減っちゃた」

席に着くエルをびっくりしたタンガが凝視する。


「あーオホン、エル遅かったな」

「うん、買い物で時間かかっちゃって」

「ついて行かなきゃ良かったよ。エルったら服選ぶのに大変。僕もう疲れたよ」

「キュイ」

「そんなにかからなかったでしょう」

「えー、そんなことないよ、なあ、ロン」

「キュイ」

「まあ、取り敢えず早く食え。明日は早くから出発だ」


翌朝、一行は宿場町ヘトを後にした。



















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