11.ペンダントの記憶 ③
シンは人間じゃなかった!?
「それじゃあ、まず、環境を整えようか」
シンは洞窟の中を広い空間に変化させてから様々なものを取りだし設置していった。机、椅子、ベッド,etc...
それはあっという間に貴族の部屋もかくやと思われる程の豪華な部屋となっていった。
「これくらいでいいかな。あれ、どうしっちゃったかな?」
シンは呆然としているユイに笑いかけた。
「そう、僕も魔法が使える。でもね、僕は人間じゃ無いんだ。僕らのことを人は『ヴァンパイア』、血を吸う悪魔と呼んで忌み嫌っている。厳密には血を吸っているわけじゃ無くて『人の精気』をもらっているんだけどね。特に真祖と呼ばれる僕みたいな個体は特殊能力を持っていてね、僕の場合は『時渡り』かな」
「ヴァンパイア・・・」
「ヴァンパイアって知らない?」
ユイは頭を振る。
「この世界にヴァンパイアはいないか。うん、都合がいいね」
「あのう・・・私、食べられちゃうんですか」
「まさか。命の恩人を食べちゃうなんてことしないよ」
「私に魔法を教えてください。そのためならなんでもします。」
「うん、いいよ。でも文字の読み書きを覚えるのが先かな。魔法書を読まなきゃいけないからね」
とシンが言ったところで、ユイのお腹がぐぐうと鳴った。
「アハハ、ユイが真っ先にしなければならないのは食事かな。ちょっと待ってて、今用意するから」といってシンはまた空間から出来たての料理を次々にとりだした。
「ヴァンパイアは人間の食事はしないって思われてるけど、そんなことはない。僕は美食家でね、美味しいものがあるとそこへいって料理を楽しむんだ。で、それを収集して保管してあるからユイもきっと楽しめるよ。あっこれ魔法で作ったものじゃないから安心して」
ユイは目を皿のようにして出てくる料理を凝視していた。生まれてからこのかたこんなご馳走食べたことない。漂ってくる料理のいい匂いに頭がクラクラした。
「じゃ、食べよっか」
最初はおずおずと食べていたユイだが、気が付けば片端から皿を空にしており夢中で食べていた。なぜか涙が止まらなかった。泣きながら食べるユイを見つめるシンの瞳は温かかった。