103. ザカリア伯爵領の闇 ⑥
宿に戻り待機しているエル達と合流した。
「と言うわけで、ヒース、お前はセンドーサ伯爵邸に行け。俺達は出発の準備をする」
「ありがとうございます。何とお礼を言ったらいいか・・・」
「お礼をいうのはまだ先だ。君の家族を助けだしたら、だろぅ?」
「はい。宜しくお願いします」
ヒースはぺこりとお辞儀をして、護衛の者達と伯爵邸へ向かった。
「さて、俺達は出発の準備をするか。そうだエル、何か分かったことはあったか?」
「今のところ、仲間を増やす方法ぐらいかな」
「仲間を増やす方法?」
「うん、相手を死ぬ寸前まで血を啜って、今度はヴァンパイアの血を飲ませるんだ」
「へえ、俺も聞いたことあるぞ。いや、前の世界の知識か」
「キュイ」
「あ、そうだロンが報告したいって」
ロンが人間型をとった。
「僕ねえ、結界魔法を使えるようになった。お婆様みたいにすごい強いものじゃないんだけど。それなりに強度はあるから」
「それはすごいな。どのくらいの範囲ができるんだ?」
「分からないけど、この街の範囲くらいかな」
「それは心強いな。いざとなったら頼む」
「キュイ」
あ、戻っているとエルが指摘しながら笑った。
「ところでタンガ、ここからゾルアまでどれくらいだ?」
「そうですね、馬車で2~3日でしょうか」
その時、街にすさまじい衝撃音が響いた。
竜体と化した竜人が飛来したのだ。
「ロン!結界を!」
「キュイ」
あとに続いた竜体の竜人をロンの結界が弾き飛ばした。
「くそっ、やっぱり来たか。セイガ行くぞ!」
市街に出るとそこには竜に変身した竜人が2頭暴れていた。警備兵はなんとか押さえ込もうとしているようだが、抑えきれず、狂ったように尾を振り回していた。
「がああ、薬をだせええ」
「お前達が隠してるんだろう、早くだせええ」
「ここは俺に任せてください。早く怪我人の救助を」
「バインド!」
光の紐が彼らの体にまといつき拘束した。
「はなせ、はなせ、薬をー」
まだジタバタと暴れていたが魔力がなくなったのか元の竜人に戻る。
それでももがく彼らをセイガが気絶させやっとこの騒動が収まった。
「結界の外はどうなっている?」
「10頭程暴れていますが、魔力が消えたのを見計らって拘束します」とタンガが指示を出し、結界の方へ向かった。
「ゾルアの市街も大変な事になってるだろうな」
そこへエルが飛び出してきた。
「ロンがそろそろ限界みたい」