102. ザカリア伯爵領の闇 ⑤
ーーーーゾルア、聖ピウス正教会
「おい、闇ギルドからの連絡はまだないか」
「はい、ありません」
「いったいどうなっているんだ。もうすぐアヘンの在庫が切れてしまうぞ」
「本国への通信も依頼しているのですが何の返信もありません」
「くそう、アヘンがないと知って暴動が起こったら我々では対処できんぞ」
「そうなった場合、隣のセンドーサ領にアヘンの在庫があるとニセの情報を流してみてはいかがでしょうか。薬でいかれた連中が大挙して隣を襲うのは目に見えてます」
「ふむ、それも悪くはないな」
タンガに連れられて俺達は領主邸へと向かった。
「お初にお目に掛かります。私はセンドーサ伯爵タイガ・センドーサと申します」
「私はアレキサンダー・ケン・シュトラウスと申します。ヨルド川の向こう側、シュトラウス王国の第二王子です。そしてこちらがセイガです」
「お噂はかねがね弟から聞き及んでおります」
「今日お越し頂いたのは、隣のザカリア領のことなのです。実は先日夜陰に紛れて荷を運ぼうとしていた怪しい商隊がありまして荷を没収したのですが、荷を運んでいた者はことごとく自害してしまい詳細を聞けずにいました。これが何なのかお分かりになりますか」
といってあるものを持ってこさせた。
するとセイガが「あ、これアヘンだ」と叫んだ。
「やはりそうでしたか。これが人を狂わせるという・・」
「ということはザカリア領にアヘンが供給されていないということになります。それを没収してのはいつ頃の話でしょう?」
「かれこれもう一月近くなりますが」
「そうなると非常にまずいことになります。アヘンがないとわかると中毒者が暴れる可能性が出てくる。もしかすると大挙して隣のセンドーサ領へ来るかもしれません。軍の主立った者達がアヘンに毒されているのはわかっているので大変な騒動になるでしょう」
「なんですと」
「まずいつ襲われてもいいように領境の軍備を固めてください。何なら王都へ救援を要請した方がいいかもしれません。狂った者達は普段の実力以上の力を発揮します」
「すぐ、準備を始めます」といって近くの騎士に合図を送った。
「私達のところに、次期ザカリア伯爵の四男がいます。こちらで預かって頂いても宜しいでしょうか」
「次期ザカリア伯爵は今・・・」
「聖ピウス正教会に捕らわれているようです。軍部がアヘン欲しさに裏切ったようです」
「なんと・・・わかりました。こちらでお預かりいたしましょう」
「あと、私達はゾルアに乗り込むつもりです。護衛を数人貸して欲しいのですが」
「もちろん、タンガ、お前もいくのだろう?」
「ああ、王命だからな」