101. ザカリア伯爵領の闇 ④
「シン・サクライが私とどんな関係があるというのは分かりません。むしろ、それを確かめるために『黄金の道』に来たのです」
「まずは情報収集だな。ゾルアの街のことをもっと知りたい」
「でも、ヒースとエルは街に出るとまずいんじゃない?」
「手分けしよう。エルとロン、ヒースは宿に待機。俺はセイガと、タンガ、単独行動になるが構わないか?」
「ええ、大丈夫です」
「あと、エル、待機中にペンダントの記憶、特にシン・サクライとヴァンパイアを分かる範囲で書きだしてくれ」
「わかった」
俺とセイガ、タンガはシギルの街に出た。広場まで来ると早速セイガが鼻をピクつかせ始めた。屋台があちこちに出ている。ここで俺達はタンガと別れ、屋台を覗いてみることにした。
「う~ん、これは牛の串焼きの匂いだね」
「お前、さっき食べたばかりだろう」
「そうなんだけど、あ、あそこで甘い匂いがしてる。デザート食べてなかった」
「しょうがねえな。2つくれ」
「あいよ。兄さん達は旅のお人かい?」人のよさそうなおばさんがクレープもどきに蜂蜜をかけてくれる。
「ああ、王都から来たんだ。これから南の方へ行こうと思って。はい、これ20シリング」
「ありがとうよ。南の方へは行かない方がいい。なんでもゾルアに行った連中が帰ってこないって噂になってる。それも一人二人ではなく商隊もだって話さ。悪い事は言わない、東の侯爵領に行くといい」
「へえ、そいつあ怖いなあ。盗賊かい?」
「いや、盗賊だったら兵隊が動くだろ?隣の兵隊も全く動いてないみたいだ。そういうのじゃないんだろうさ」
「ここの兵隊は?」
「ああ、ここの兵隊さんは領境まで出張っているらしいんだけど」
「物騒だな。東に行くか」
「その方がいいよ」
「そうか、ありがとう」
ベンチに座ってクレープもどきを頬張りながら、やはり軍隊は機能していなかったなと考えているとセイガが
「ねえ、ゾルアだけででなく他の街や村もおかしくなっているってこと?」と聞いてきた。
「それは十分あり得るが、単に上からの命令が来ないってこともある」
「領境に兵士を出しているということはここの領主はザカリア領を警戒しているということだな。何か掴んでいるのかもしれない」
「ここの領主に会ってみれば?」
暫くすると、タンガが戻ってきた。二人、見慣れぬ騎士を連れている。
「アレクさん、ここの領主に会っていただけないでしょうか」
「実はセンドーサ伯爵は私の兄なのです」