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真実

昔書いた小説を少し手直ししたものです。

よろしければ、お読み下さい。

 鏡の映像が途切れた。

「これが、あなたが亡くなるまでの経緯ですね」

 レイが鏡の縁から手を離した。

「そう、私は階段から突き落とされて死んだ……。犯人の顔は見ていないけど、私を殺したのはあの女……ジェニファー・グレイに決まってるわ。私が『愛の果て』のヒロインに選ばれたことをあの女が知っていたかどうかわからないけど、私がいなくなれば確実にヒロインはあの女になるわ。私が邪魔だったのよ!」

 パトリシアは唇を噛み、両手を震わせた。

 そんなパトリシアを見て、レイは不敵な笑みを浮かべた。

「本当にそうかしら?」

「……どういうこと?」

「この世界に時間という概念はありません。自由に現世の時間を行き来できる。あなたが亡くなった数日後の世界を見てみましょうか」

 レイが再び鏡に手をかけた。


 鏡に映ったのは、パトリシアの葬儀の様子だった。多くのファンが教会の入り口に集まっている。すすり泣く声や、パトリシアの名を呼び叫ぶ声等、いろいろな声が聞こえた。よく見ると、ファンだけではなく、マスコミ関係の人間も集まっているようだった。

 急に、カメラのシャッターの音やマスコミ関係者の声が大きくなった。教会から出てくる人影をよく見てみると、出てきたのはルイーザだった。

「ルイーザさん、パトリシアの遺体の第一発見者はあなただという情報があるんですが、実際はどうなんですか?」

「犯人の姿をみたんですか?」

 ルイーザは、両目を赤く腫らしながら答えた。

「……逃げる……人影は見ましたが……、犯人の服装や顔は……見えませんでした……。私が……パトリシアを一人にしなければ……こんな事には……」

 ルイーザは泣きじゃくり、それ以上記者の質問に答えることができなかった。


 次に教会から出てきたのは、ジェニファーとマイクだった。記者が、また一層とざわめく。

「ジェニファー、パトリシアが亡くなったけど、今の心境は?」

「ジョージ・ハミルトン監督が次の映画でパトリシアかあなたを起用するつもりだという噂があったんですが、監督から何か話を聞いていますか?」

「パトリシアが亡くなった今、確実にあなたが次の映画のヒロインでは?」

 たくさんのフラッシュがジェニファーに浴びせられる。

「ハミルトン監督の次の映画の事については何も言えません……。ただ、これだけは言える。パトリシアの死を、私はとても残念に思っています……」

「あの女、私を殺しておいてよくもまあぬけぬけと……!」

 鏡を見ていたパトリシアは思わず叫んでいた。レイが鏡をひと撫でする。


 次に鏡に映ったのは、葬儀の数日後の『愛の果て』の制作発表会見のようだった。たくさん出演者が並ぶ中、中央の席に座っているのは、ハミルトン監督とジェニファーだった。

 監督が言う。パトリシアの死は非常に残念だったが、ジェニファーという才能ある若き女優に期待したいと。ジェニファーが言う。パトリシアの分まで頑張りたいと。


「何よ、何なの、これ……。あの女、逮捕されていないどころか、ちゃっかり『愛の果て』のヒロインの座に納まってるじゃない。レイ、私、やっぱりジェニファーに恨みを込めた手紙を……」

「もう少し先を見てみましょう。それからでも遅くはないわ」


 次に鏡に映ったのは、会見が終わって更に数日たった後の様子だった。ジェニファーは舞台の仕事を終え、控え室に戻ったところのようだった。控え室には、ジェニファーとマイクの二人がいた。

「お疲れ様、ジェニファー。明日から『愛の果て』の撮影が始まるし、今日はゆっくり休むといいよ」

「……ええ」

 ジェニファーは、浮かない顔で、マイクの方も見ずに頷いた。

「元気がないね、ジェニファー。パトリシアのことを気にしてるのかい?本当、彼女はかわいそうだったね。『愛の果て』のヒロインに一旦は選ばれたのに……」

 ジェニファーはしばらくの間化粧を塗り直していたが、ふとその手を止めた。

「ねえ、マイク……」

「なんだい?」

「何故、パトリシアを殺したの?」


 鏡を見ていたパトリシアの目が見開かれた。

「……どういう事?マイクが私を殺した?……嘘よ。だって、あの女……ジェニファーには、私を殺す動機があったし、私が死ぬ直前、ジェニファーがいつもつけていた香水の香りが……」

「続けて鏡の映像を見てみましょう」

 レイに促され、パトリシアは、もう一度鏡をしっかりと見た。



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