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転生転移ってありふれてんのかな……  作者: 十二
第一章 竜と成る
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√3 五十キログラムの生命


 飛び出してから着水まで、五秒はかかっただろうか。実際にはもう少し短いかもしれない。落下の恐怖が時間感覚を引き延ばしたように感じたのだろう。


 基本的に、水面へと飛び込む際には危険が伴う。水は落下の衝撃を和らげるとして、水に衝突すること自体が身体を破壊しかねない。


 だから、水面には突き刺さるように。全身が浸かったら、身体を広げて水底にぶつからぬように。恐怖の中で、ただ生きねばならぬと何かに突き動かされるように、最適な動きを取り続けた。


 どぼん。


 身体が一気に冷える。ここは水中だ。ごぼごぼと水音がうるさい。それから、着水の衝撃で耳鳴りがするようだ。

 余程深くにいるのか、太陽の光も射さない。


 水を掻き分けて、浮上する。ドラゴンの流線型の身体は、どうも流体の中を移動するのに適しているらしい。飛べる身体は、泳げる身体でもあるのだろうか。


 息を吸う。肺も強く、身体中に酸素が行き渡るのを感じる。心臓が力強く拍動する。血が流れている。


 生きている。人であった頃からは信じられないほとに力強く。


 滝壺を少し離れて、穏やかな水面を覗く。俺の姿を見たかった。

 見てみれば、爬虫類のような、それより獰猛で凶暴な顔をしていた。生まれたてのはずなのに、弱々しさなど欠片も感じさせない顔をしている。


 鱗の下、皮下脂肪や筋肉は荒縄のように盛り上がって、力強さが見て取れる。

 この身体の骨格は、恐竜に似ていた。だが前の脚も発達しており、四速での走行も、二足と腕を使っての格闘もできそうだった。

 翼は現状全長一メートルもある身体を支えられるとは思えないサイズだが、滑空には問題無く使える。そしてドラゴンが生まれつき備えたスキル群によって自由飛行も容易い。


 ドラゴンは強者だ。卵から這い出て初めにすることが生死をかけた逃走劇であっても、成功させてしまう。

 恐らくだが、水を飲んで少し休めば、翼を利用しながらのロッククライミングで、崖の上まで登れるだろう。《開平》でスキルを見れば、翼関連は重力に作用できるらしい。


 少し経験を積んでスキルを取れば、地を這い回ることなく生活できる。逃げるしかなかった狼への対策も、空を飛んでのヒットアンドアウェイで解決だ。


 こんな生物がどうやったら出来上がるのか。そして、√systemとの関わりが強いこの身体を、《剪定》スキルで鍛えたら、どこまで強くなってしまうのか。


 そんな悪寒がこの身を襲う。


 嗚呼、俺は一体どんな怪物になると云うのだろうか?












 少し休んだ。この滝壺を上流とする川が流れているのだが、そのあたりの動物の足跡を見るに、この水は動物が飲んでも大丈夫な水質らしい。遠慮なく飲んだ。

 相変わらず腹は減っているが、喉は潤った。


 肉だ。肉を所望する。


 色々考えたが、腹が減っては戦はできぬのだ。こんな空きっ腹で悩んだところで何が変わるわけでもない。

 俺は好き勝手に生きる。その果てにバケモンと成り果てようと、最早人であった頃とは全く違う世界なのだから、環境が悪いのだ。俺は悪くねぇ。


 そんな頭の悪い理論で武装し、俺はこの森を平らげる算段をつけた。


 第一に必要なのは、飛行能力。ドラゴンは飛行できる癖して、肉体が頑強だ。その強みを最大限活かす。

 そのタネは重力に作用するスキルと飛行に使える風系スキル、《体力補填》などのように持久力を底上げすることで、重く丈夫な身体を空中に持ち上げる飛行方法だ。


 もはやスキルと魔力に全てを頼りきった生命体のような気がするな、ドラゴン。√systemがないとポンコツ種族だろうこんなの。欠点が見つかった。


 第二に、魔力を使った攻撃手段。ドラゴンは魔力による身体強化も抜かりなく備えるが、魔法や魔術も勿論得意だ。それらを使った遠距離攻撃手段が欲しい。


 √systemによれば魔法なる記載は見当たらず、この世界には魔術だけがある。魔術は知識があれば()()()()られるらしく、全ての魔術スキルは知識のカテゴリに入っている。


 そして、《魔術基礎知識》なるスキルがある。


 《魔術基礎知識》:魔術言語と記法の知識。

 備考:魔術スキルを取得せずとも、このスキルから組み立てることは可能。


 √systemの知識カテゴリは、どうも()()として用意されている節がある。覚えるのではなく、検索エンジンを持ってくるのに近いズルさだ。

 しかし、生物や植物についての知識に加えて、数学や化学、魔術や果てにはチェスのようなボードゲームの知識までも、√systemはスキル化している。


 何が言いたいかというと、基礎的なことから、発展的な事柄を導き出せるものがいくつかあるのだ。

 √systemは基礎ができていなくとも、発展的なことができますよ、と言ってくれているが……

 基礎さえ取得すれば、経験値を割り振らなくても大魔術を使えるようになる。


 そして、説明を見る限り魔術は理論的で基礎から発展できる。


 以上のことから、飛行に関するスキルと、《魔術基礎知識》を取って、空中から遠距離攻撃できるドラゴンを目指すこととなった。

 【通知(1)】

 『√systemより通達』

 チャットへの招待状が届いています。参加しますか?


 Y/N?


 接続しています……






 『User さんが 入室しました』


√:企画を拝見させて頂きました。不明点がいくつかあります。

U:書いてある通り、一人にはドラゴンの身体で生まれてきてもらうんだ。

√:リスクが些か大きいかと。竜種は《剪定》があれば容易に制御不能な強度を得ます。

U:六千人も送り込んで、今更でしょ?余力がある内に何とかしたいって思ったからって、こんな無茶して。

U:なら、リスクよりもリターンを重視すべきだ。それにさ、折角僕が始祖竜の遺伝子と歴代最強の竜の遺伝子から卵を作ったんだから。

U:僕もこの世界は好きだ。まだ、彼の子孫もいるし。また神代みたいに、賑やかな世界にしたい。

√:分かりました。検討してみましょう。

U:ありがとう。


 『√system さんが 退室しました』

 『User さんが 退室しました』

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