表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生転移ってありふれてんのかな……  作者: 十二
第一章 竜と成る
2/27

√2 ハードコアサバイバル


 《仔竜》:ドラゴンの幼体。その姿や能力は親個体の影響を強く受ける。


 卵から孵ったばかりだから当然の話だが、俺はまだまだ幼体だ。きっと可愛らしくて弱々しい見た目をしているだろう。


 この世界がどんな所かは知らないが、この地……俺が生まれたこの森は、自然環境だ。野生の獣が棲まう地だ。


 とくれば、始まるのは過酷な生存競争、サバイバルである。一刻も早く√systemによって成長しなければ、食い殺されてしまうだろう。


 正直なところ、まだ自分の置かれた状況を飲み込めてはいない。が、先程から妙なざわつきが止まない。言うなれば、嫌な予感がするのであった……













 走れぇぇええええエエェ!!!!!!!クソがあぁァ!!!!!!ちくしょう、俺は生後十分しか経ってないのに、俺より一回り程度は大きな灰色の狼が三匹も!三匹だぞ?!追ってきている!


 嫌な予感は大当たりだな!狼どもは後ろから広がるように、俺を包囲してきていた。囲まれる前に駆け出したから良かったが、判断が遅れていたら既に噛みつかれていたかもしれん。


 にしても、ドラゴンって生まれたての癖して運動神経が良すぎる。狼はまだ本気を出していないようだが、俺は多分、人だった頃より速く走っているぞ。


 しかしながら、持久力がもたないかもしれない。生まれてから飲食をした覚えがないから、当然と言えば当然だが、エネルギー不足なのだ。


 狼は付かず離れずの距離を保ったままだ。多分、抵抗されないように此方の体力を削るつもりなのだろう。仔竜であっても腕力が結構あるから、実際とても合理的な行動である。


 ジリ貧だな……と思っていると、何やらザアザアという音が耳に届く。これは……


 滝か?


 そう思った瞬間、即座に滝と思われる方へと転換した。高さによるが、狼を振り切れるかもしれない。というか、崖やら何やらを跨ぐような縄張りは持たないだろうから、諦めてくれるのでは?


 これは予想以上に良い案だろう。そうであってくれ。逃げるしかできることがない以上、どこかで撒かなければと考えていたので、賭けに出る必要があった。


 戦いなんぞ経験したことのない俺が、狼に手傷を負わせなければならなかったかもしれないことを鑑みれば、僥倖である。


 ……まだか、まだ着かないか。スタミナが足りない。あと一歩なのだが……


 呼吸が乱れる。脚が縺れそうだ。


 そうだ、√systemを使えば、なんとかなるかもしれない。


 √systemのインターフェースはあくまで仮装上のもので、視界を遮ることはなく、手で操作する必要はない。思考で操作可能である。


 スキルツリーから、持久力を高めるスキルを見積もる。


 《体力補填》:魔力を体力に転換できる。


 これが良さそうだった。他のは生命力を削ったり、基礎的な持久に効果があるものだったので、絶えかけた俺の身体を救えるようには見えなかったのだ。


 一縷の望みにかけて、習得……できない。当たり前だ、まだ何の経験も積んでいなかったのだ。


 絶望が身体中を支配する。もはや打つ手は無い……


 ……あ、よく見たら習得済みだ。どうやらドラゴンは生まれながらにして、スキルを持つらしい。


 《体力補填》ッ!!!


 瞬間、身体の中の何かが削れた。凄まじく気持ちが悪くなるが、代わりに肺が、脚が、力を取り戻す。心なしか腹も膨れたように感じる。


 「グオオオォッ!!!」


 精一杯の強がりで、雄叫びを上げてやった。狼どもは更にスピードを上げるが、まだまだ余裕だ。


 木が疎らになってきた。崖は近そうだ。


 一瞬、滝があったとして、此方側が滝壺の側だったらどうしようかと思ったが、杞憂だったようだ。


 大きな大きな滝が、目の前にあった。


 迷っている時間は無い。


 翼を畳んで、滝壺に頭から飛び込んで行く……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ