表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生転移ってありふれてんのかな……  作者: 十二
第一章 竜と成る
1/27

√1=1 竜と龍、どっちかな……


 眠い。


 ひたすらに眠い。目を開ける気にはならない。だが、起きてしまった。妙に息苦しくて、二度寝もできそうにない。


 今何時だ……?日の高さを確かめるために、目を開けてみようとする。


 正月休暇は寝正月にするんだ、と意気込んだものの。ストレスが残った身体では寝ることすらまともにできなかったようだ。


 あれ、目が開いてる感覚はあるのに何も見えない。深夜に起きてしまったんだろうか?何だか喉が乾いてるし腹も減ってるから、夜食でも食うか。


 ……う、動けん。何だこれは、金縛り?心霊現象?


 いや違う、()()のだ、狭い空間に身体を押し込まれて身動きがとれなくなっているのだ。


 しばらくモゾモゾ動いていると、腕が少し自由になった。見えない周囲の状況を確認するために、手探り状態となる。

 どうやら、壁のようなもので周囲を囲まれているらしい。


 パントマイムのような動きを続けて、何となく分かってきた。この空間は、上側と思われる方が先細りしている、カプセルのような形をしているようだ。

 腕でコンコン小突いてみると、返ってくる衝撃は些か軽い。壁は薄い。


 これくらいなら破れそうだ……と思ったが、勝手に壊してよいものだろうか?

 もしかしたら、寝てる間に火災に巻き込まれて救出されて、病院の一室でガチガチに固められた状態になっているのかもしれない。


 そんな可能性が脳裏を過ぎるも、そうだとしたら、せめて顔の部分は開けておくとか無かったのか。こんな暗くて狭い場所に閉じ込められては流石に気が参りそうだった。

 悪いのはこんな監禁のような処置をした奴だ、としておいて、壁を叩き壊すことにした。


 何度かガンガンと殴りつける中で、ふと爪を立てるようにした方が威力が出そうな気がした。掌を緩く開いて、曲線的な壁を爪で穿つ。


 バキッ、と軽く乾いた音が鳴って、空いた穴から光が射す。陽光が目を灼く。

 ピースが一つ欠けたパズルのような壁の、ヒビ割れからも光が漏れている。身体と視界の完全なる解放を求めて、欠け目を拡げて裂け目を作る。


 両手が入りそうな裂け目ができて、手の甲を向かい合わせるようにした手を滑り込ませる。

 カーテンを開くような動作によって、外界と対面する。


 夢でも見ているのだろうか。


 ()()()()に目を細めて、「がぁはぁ……(なんなんだこれは)」と……


 待て、今の()()()は何だ?人間の、俺の声ではない。「なんなんだこれは」と言うつもりだったのが、獣か何かの呻き声のようになっていた。


 信じ難いことが起きている。理解すればSAN値(正気度)が削れそうな事態であろうが、しかし、自分の身に起きていることから目を背けるなんて、取り得ない選択肢だろう。


 身体を見下ろす。腕を、胴体を見る。脚も見える。岩のような色合いの鱗に覆われたそれらが見える。指先に足の爪先は太い爪が生え揃い、首を背中に巡らせれば、真後ろまで顔を動かせ、目が()()と羽根の無い蝙蝠のような()、今までこの身体が囚われていたであろう()()()を捉える。


 止めとばかりに、脳内にまるでゲームのインターフェースのような、樹形図(スキルツリー)が浮かび上がってきたのだから、思考を放棄したとして、誰が俺を責められようか……









 状況を整理しよう。


 まずここは、森の中だ。そして俺は、というか俺の身体は、()()()()になっている……らしい。


 俺の所在については見てわかることしか分からんが、身体やらスキルツリーについては、こと細かく()()()()()()()

 それというのも、俺が転生転移者関係のスキルを生まれながらにして持ち、そのパッケージに《開平》なるスキルが含まれるから、こと細かい説明書きを見れるのである……


 《開平》:√systemの知覚と、情報の閲覧が可能になる。


 《接木苗》:《開平》、《剪定》、《意思疎通》を含む。

 備考:今回の一連の転生転移事故の被害者計六千名に与えられた。本来は√systemの権限レベルを最大にしなければ得られないスキルが含まれる。


 転生転移事故の被害者六千名……


 転生転移事故……


 六千名……


 え?俺みたいなのがあと六千もいるの?この世界大丈夫?

 とはいえ、俺が心配した所で、何か変わるわけでもないか……


 今は自分のことに集中するべきか。どうも、《開平》は√system……このスキルツリーみたいなものの情報しか見れないらしく、事故がどんなものかとか、周りの物質についてとかの情報はそれぞれ知識系統のスキルがなければ分からないようである。


 ライトノベルの何でも分かる鑑定ではないってことだ。


 《剪定》:√systemの成長を任意に行える。成長をストックし、割り振ることができる。

 備考:成長は個体が学習及び鍛錬することで行われる。故に、知能が高い種族に顕著。


 このスキルがない場合、普通の成長の仕方しかできない、というスキルだ。便利ではあるが、記載通りに受け取ると素振りをするだけで植物の博士になれる知識を得られる、と言っているようなものだが……果たしてどういう原理なんだろう?恐ろしすぎるぞシステムよ。


 《意思疎通》:発散する魔力に意思を載せることができる。他生物の魔力から意思を拾うこともできる。


 これは便利だ。この世界がどんな所かは知らんが、多分言語どころか身体の作りからして違うだろうしな……俺、今ドラゴンだから……


 《ドラゴン》:√systemとの作用により、個体によって違った形態を見せる。親個体からの遺伝により傾向は偏るが、総じて生態系の頂点捕食者である。


 これが、今の俺の種族。


 ファンタジーお約束の最強種族、ドラゴンだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ