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元最弱の討伐対象  作者: いこま
1章 棄街脱出篇
3/4

03,「今までで一番」

「大したもんは作れないけど食ってけ」そう言った男の言葉通り大したものではなかった。

具なしのバターライス、玉ねぎだけのスープ。店の賄い飯といった内容のそれらは、客に出すような華やかさはないが紫帆には輝いて見えた。


「まぁ、なんだ、お前ぇも苦労してんだな。

それ食ったら、仕事でも探しな」

それだけ言って厨房の作業に戻っていった男の後ろ姿には、少しの同情と心配。優しさと照れが混じっていたように見えたのは紫帆の見間違いかもしれない。


華やかさの足りないバターライスとスープは、優しい味がし、温かかった。

心まで温かさが届いた。

久しぶりに温かさを感じた。

そして何より嬉しかった。

華やかさの足りないバターライスとスープは、今の記憶では文句なしに世界一の美味さだった。

少しずつかみしめるように食べる紫帆の目の端には光が宿っていた。


 ◇ ◇ ◇


「うちは、異能持ちを雇う気なんかないんだ!」

「そこをなんとか…」

「しつこいなぁ!いい加減にしないとねぇ、こっちにも考えがあるんだよ?」


警察などを呼ばれたら問答無用でお縄だ。  


「頑張れよ。」そう言って男が送り出してくれたから仕事を探しているわけではない。わけではないが、その心遣いがうれしかったのは事実だ。


だが、保証人もいない様なぽっと出の異能持ちを雇ってくれる所が無いのもまた事実であった。

先程のところは対応がまだいい方だ。5件ほど求人を回ったがそのほとんどが、しょっぱな(話し合い)であった。


そもそもの話、信頼が売り物ともいえるような客商売、サービス業では絶対に雇ってもらえないだろう。

飯屋におけるゴキブリ、ネズミと同じである。


証拠として先程賄いを恵んでくれた男も、「職を探せ」と言ったが、「ウチで働いてみるか?」とは言わなかった。


異能持ちがまともな所(・・・・・)で働くには、それなりの学歴、信頼等々が必要になる。どれもこれも紫帆が持ち合わせていないものばかりだ。


「はぁ、」


パチンコ屋の横、少し高くなっている場所に腰掛けると同時にため息が零れた。

駅に近く、パチンコ、ゲーセン、カラオケ、高架下のショッピングセンター、電気屋が立ち並んでいるごちゃごちゃとした通りは、車が滅多に通らない車道まで人が溢れている。


休日であるからか、学生然としたグループや、家族連れが多く見受けられる。


学生グループ、親子、親子、学生、カップル、ヲタク、カップル、カップル、学生カップル、カップル、カップル、カップル、カップル、カップル、学生カップル、カップルカップルカップルカップルカップル、親子三代、カップルカップルカップル、ぼっち、既婚者、カップルカップルカップルカップルカップルカップ、学生グループ、ルカップルカップルカップルカップルカップルカップルカップルカップルカップルカップルカップルカップルカップルカップルカップルカップルカップルカップル


全員が全員楽しそうだ。


キャッキャ、ウフフ。と言った感じの声が恨めしい。


シネバイイノニ、紫帆は、楽しそうな奴らの気に当てられた所為で働かない頭で無意識に考える。


職探し×人混み×ガラの悪い一般人からの圧×楽しそうな奴ら(バカども)のオーラ、と言うコンボで気疲れしていた紫帆は気が付かない。目の前にいつの間にか立っている少女に。


その少女は、水色とピンクの中間のような髪を肩まで伸ばし、ワンサイドアップで、緋色の目を持ち、品の良い白と赤のドレスを身にまとっている。

年のころは、12歳から14歳と言ったところだろうか。その年には似合わぬ凛と引き締まった雰囲気と、見た目のギャップがえも言えぬ存在感を醸している。


その立ち姿はまるで、異国の王族とでも言えようか。


そのどこか高貴な雰囲気の少女は、何も言わず紫帆を上から見下ろしている。


下を向いていた(リア充(大馬鹿ども)の所為)紫帆はなかなか気が付かない。

数十秒後、紫帆が、なんか暗いな、と上を向くのと少女が、ねぇ、と声をかけるのは同時だった。


「「…」」


「なぁ、お前は…」「ねぇ、貴方(あなた)


被った…


「「…」」


「ねぇ、貴方(あなた)、なぁにをバカみたいな面で黄昏ているのかしら?ひがみ?」

「あぁ、そうだよ。ひがみだ。で、お前はなんだ。迷子か?」

「藪から棒に失礼ね…そんな年に見えるの?」


すっごい能面で問うて来る。物凄い怒りをその静かな表情に感じる紫帆。ちょっと怯んでしまう。


「それで、なんの用だ?普通人間共(ノーマル)をひがんでいる異能持ち(アブノーマル)に何の様だ?」


怒りのオーラのせいで日本語が少し怪しい。

ものっそい露骨に話を逸らしたが、ぶっちゃけすっごいそんな歳に見える。


「さぁて、何の用でしょう。」


今度は憎たらしい余裕の笑みを浮かべている。

感情も表情もころころ変わるやつだ。

まぁ、この無駄話はまだまだ続く。


―――――――――――――――――――――

後書きと解説


Q,世の中の異能持ちはどうやって暮らしているのですか?全員スラム暮らしですか?


A,政府が『異能者雇用法』という物を発布しています。ただ、この法律が適用されるのは雇用が500人を超える企業(いわゆる大企業)にのみ適用されるためよほど高学歴の異能持ちしかまともな雇用はされません。(異能持ちで高学歴になるのは無理ゲー)なので、異能者は、手に職を付けた個人経営の生産業(農家や職人)、海外で傭兵、犯罪者集団、国の対異形機関、民間の対異形機関に入ります。それ以外は犯罪者だったり、わざと軽犯罪でつかまったり、スラム住みだったり。

因みに異能者雇用法によると、最低全体の2%以上異能者を雇用することとなっています。


後書き

スイマセン短めでスイマセン。

副題の為に次回まで引っ張りたかったんです。

中身は無いケド、将来的にごにょごにょ。

てなわけで次回の更新はまた一週間後。

また後書きでお会いしましょう。


いこま

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