~閑話~ 一方……
「クックックッ......もうすぐ、もうすぐこの国は儂の物に......笑いが止まらんわ」
儂はジャーメント子爵。この国、ヴァンーリン王竜王国のグリタブル領を領土として持つこの国でもトップクラスの軍事力を有している貴族だ。
この国の王が危篤になり、国内の覇権争いが激しくなった今、領土拡大をしなければならないのだが……
「しぶといのう。小娘が」
あの男爵。ベルゼナート男爵さえ潰せば、障壁はないも同然なのに......
素早い関門の封鎖、冒険者などの人脈を使った兵力の増強、なによりも、完璧な情報操作。
これのせいで今の今まで迂闊に攻め込むことができなかったのだから。
だが……
「時は満ちた。今こそフローリア領を潰す準備ができた」
ああ、目をつぶると王冠を被った自分が見える。
いままで仕え続けて、ずっと我慢してきた。なのに……なのにだ、こんな辺境に追いやられ最後を迎えさせられる、こんなことが我慢できるだろうか。そして転がってきたこのチャンス。
逃すはずない。儂を追いやった王族、公爵そいつらに復讐するチャンスだ。今度はこっちの番だ。
だが奴等から学んだこともある。一つだけだがな。それも至極当然なことだ。
圧倒的な戦力。これこそすべて。
力が無ければ、理が例え自分たちにあろうとねじ伏せられる。現に儂がねじ伏せられたのだから。
理知的な外交? 各国と連携した軍縮? 笑わせないでほしい。
そんなものは仮初の平和でしかない。
例え...例え後世に悪と書かれようと、儂は進むしかない。
立ち止まることが出来る段階は、とうに過ぎている。
「……我が正義のために、我が力、此処に振るう」
儂は、儂の正義を信じて力を振るうのだ。
この国に縛られ、自由に出来なかったぶん、ぞんぶんに暴れてやる。
さあ、決戦の時だ。
むっ、急いでこちらへ走る音が聞こえる。儂はよく知ってる、この足音を。
「ほ、報告! フローリア領からの遠距離魔法兵による本陣への奇襲を受け、わが軍がパニック状態に! 脱走兵が続々と出ている模様です!」
嫌な予感が当たったな……小娘め、やりおるな。
「儂が、前に出る。統率は任せろ。お前たちは一部隊一部隊確実に潰せ」
「はっ!」
まずは一本、相手に取られたか。
戦鬼・ジャーメントの異名を持つ儂が直々に相手してやろう。
潰してくれるわ。
正義の反対は正義
今回は、ジャーメント子爵視点の話になりました。




