到着、そして異変
遅くなりました。
投稿頻度をこれくらいにします。
フォレスト=ホーンと戦い終わった俺は、街に向かうことにした。
理由? そんなのないけど?
そう、俺は魔王、魔王なのだ! ……いや、魔王は城でどっしり構えてるか。
てか、やっぱ俺って魔王って枠、大分外れてるんじゃね?
まぁいいか。俺は俺だし。哲学みたいだな、これ。
さて、どうやって行こうかな。
地図もないしなぁ……あっ、ナントカカントカ男爵からサイン貰ってたわ。貰った時はよく見てなかったけど、裏になんか書いてあるな。
~謎のアオイへ~
アルトナイン・ヴァン・ベルゼナート男爵じゃ。
このサインの裏を読んでいるということは、恐らくヒトの国へ行こうとしたが、場所が分からなくて困ってるって感じじゃろ?
あってたら、食料をくれ。こっちの事情じゃが……
地図を同封しておく。これでも見ながら国に行くといい。
~愛しのアルトナイン・ヴァン・ベルゼナート男爵より~
……予見眼すげぇな。さすが男爵といったところか……コイツもイカれてやがったのか。
愛しのってなんだよ。会ったの1回だけだろ。
地図は普通に助かるけどさ。
……はぁ、細かいこといちいち気にしてたらいつか病む気がする。
もう気にしない、気にしないんだ。
どうやって行こう...
地図見る限り、大分遠いんだよなぁ。
シェラに乗っていくのも、飛んで行くのもな~。
いいや、飛んで行こ。バレない様にしないとだけど……何とかなるか。
「シェラ、行くぞ~」
「分かった。たしか、ローレンス? だったか?」
「そうそう、なんでも領都らしい。そういえば、シェラは人化解いたほうが移動速度って速い?」
「いや、変わらんな」
「俺は飛ぶか――」
「アオイも走るぞ」
「マジ?」
「うむ」
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「ハァ、ハァ、ハァ」
「体力をもっとつけろ。そんなのでは中心部にいつまで経っても行けんぞ」
「ハァ、ハァ、分かってるよ。......とりあえず着いたな。街に」
「して、どうやって入る? 我はフェンリルだぞ」
「人化してるから大丈夫だって。前より人化の練度、上がってるだろ?」
「そうだが……」
「よし、じゃあ徒歩で街に入るか」
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「おぉ、きれいだ...」
目の前に広がっていたのは、水上都市だった。語彙力がなくなるぐらい綺麗な場所だな。
街の中央にでかい館と塔があるから、シンボルみたいになってる。
よし、入るか。
門番「待て」
「ん?」
門番「身分証明書は?」
「ないけど」
門番「なら、通すわけにはいかないな。さぁ、さっさと去れ……いや、嬢ちゃんなら、身体で払ってもらってもいいぜ」
門番はニチャアっと気色悪い笑みを浮かべる。
気持ち悪い。街が綺麗でも、人の心は汚れ切ってるな。
「ないけど、これならあるぞ」
俺は門番に、イカレ男爵のサインを見せる。すると、みるみるうちに顔が青ざめていき……
門番「す、すみませんでした。ちょっとしたジョークってやつですよ。ハハハ」
汗だらだらじゃねぇか。
「フン、じゃあ、通るぞ。 最後に言っておくけど俺、男だから。変態クソ野郎」
そう俺は吐き捨てて門をくぐった。
「やっぱ、人間は信用ならねぇ...ボソッ」
「……」
中に入ると、案外活気がなかった。
「どういうことだ? この規模ならもっと賑わっていてもおかしくないのに」
街中にポスターが貼ってあるし。
~戦える者よ、男爵命令により中央屋敷へ集え~
外にいるのは、冒険者っぽい姿のやつだけ。
情報収集するか。
「なぁ、男爵って誰のことだ?」
「なんだ、知らねぇのか、アルトナイン男爵様だよ。巷じゃ未来視持ちってよく言われてるな」
「へぇ~、助かった。ありがとよ」
「おう!」
冒険者はいいな、根が良いやつが多い。
俺も、行ってみるとするか。
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中央屋敷に俺たちは向かった。
「……!……、……」
なんか演説してるぞ。誰がやってるんだ?
「今こそ、今こそ立ち上がる時! 忌々しいグリタブル領の領主を打ち取るのじゃ!」
怒声に近い歓声が、屋敷を震わせる。
演説は終了したっぽい。あとでイカレ男爵に会ってみるか。
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「ふぅ、疲れた……」
妾、いや私はベル。転生して、今は男爵の地位にいる。この世界、私がやってたゲームと状況は一緒なのよね。未来視持ちとか言われてるけど、全部その知識のおかげ。
ホントはこんな面倒臭い仕事、さっさと辞めて自由にのんびり暮らしたいのに……
書類を片付けても片付けても……頭が痛くなってきた。
こんな時は、あれを飲むといいんだ。
「ふぅ...」
ハーブティー美味しい……なんだか眠たくなってき――「ひっ!」
誰かがノックしてる。鍵穴からそっと覗いてみようかな......怖いの苦手なんだよ......
女の人が2人いる。1人はなんか見たことあるような……
「反応なし、強引に開けるか」
ふぇっ?待って待って。止めてっ。
「この扉高いんだからーーーっ!!」
し、しまった。屋敷中に響いたかも。
い、いや、防音だから大丈夫な。聞こえてないはず。
「やっぱいるな。普通に開けるか」
いや、開けな――八ッ。
「待って、ちょっと待って。開けたら殺す」
ヤバい。最近熱いから、ランジェリーしか着てなかった。
何でもいいから何か着ないと。
私はすぐそばに畳んでおいてあったネグリジェを着た。
「は、入るのじゃ」
この喋り方嫌いなんだけどな。
「お、お邪魔しま――フッ」
馬鹿にしたよね、この人。てかこの人、私の声バッチリ聞いたわ。
「あっ!」
「ひ、久しぶり」
そこにいたのは、以前助けてもらった彼女、アオイだった。
「き、聞いたのじゃな……」
「うん、バッチシ」
慈しみの笑みをこちらに向けてくる。やめて、本当に恥ずかしくなるから。
「貴女、聞いてたのね……」
「うん」
か、隠し通せてたのに……ここまでか。
「こ、このことは内密に……」
「イカレ男爵がまさかこんな奴だったとはなw」
「だ、誰がイカレ男爵ですって!」
「だって、手紙に愛しのって付いてるんだぜ。ヤバいだろ」
「……たしかに、というか性別がホントに分かんないんだけど。姿は女性、喋り口調は男性って、どっかの高校生探偵のパクリなの⁉」
「俺は男だが……それより、なんでそのネタをお前が知ってるんだ?」
「え?」
このネタ伝わる人、初めて見た……
そ、そんなことより、なんで?
「「お前もしかして異世界人?」」
そうだったのね。これは、思ったよりいい展開かもしれないわね。
「あの、唐突なんだけど、依頼出してもいい?」
「内容によるな」
「同じ異世界人のよしみでどうか。おねがいっ」
「ん~。どうする? シェラ」
「いいのではないか? アオイと同郷なのだろう? しかも騙されてたとしても我が蹴散らせばいいではないか」
「それもそうか……よし。依頼、受けさせて貰おう」
「失礼かもしれないけど、この方は?」
「我は、偉大なるフェンリル。シエルだ」
私はとんでもない人に依頼したのかもしれない……
あぁ、本当に速く仕事辞めたいな。
シェラ「この我をみても無反応だと⁉ この女、やはり只者じゃないな。凄みを感じるっ」
なぜかシェラからの評価が上がるベル
ベル「(あんまり関わりたくないな。なんか怖いし)」
シェラのことを怖がっているベル




