表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/54

第三章 宝探し

露店街へ近付くにつれて、パソコンの処理速度が落ちて来る。

それだけ人口密度が高いのだ。見渡す限りに、露店の看板、看板、看板。

露店とは、人によってはバザーなどと名を変える。

しかし、機能などはどこのゲームも代わり映えはしない。



昼間は露店で店を出して放置、夜は本格的に活動するって人が多いのだろう。

賢く軍資金を稼ぐには、最も手っ取り早い方法だとも言える。ただ、それが売れればの話だが。

その露店を漁る人……今現在活動中の人の方が圧倒的に少ないのは、今が昼時だからかもしれない。



俺達は、その圧倒的に少ない部類に入る。



――――――――――


【PT】TIGER:来たぞー、何か探し物か?


【PT】Riou:あぁ、一番安い回復薬を探してるんだ。希望は単価15Gくらいだな


【PT】緋熊:ちなみにLv45以上の回復薬!


――――――――――



ふむ……。そうとなれば俺も必要だな。

まぁ今はレベル上げは出来ないし、のんびり探し物も良いかも知れない。

希望単価が15Gで、Lv45以上の回復薬だなんてそうそう見つかる訳がない。

何故なら、その条件に見合うここの平均価格はせいぜい20Gだからだ。

それをこんな露店の中から探すのは、なんとかの山から針を見つけるのと一緒だと思う。



しかし、今は何となく暇だ。

付き合ってやっても良い、俺も少し安い回復薬を探さないとな。



――――――――――


【PT】BEAR:先輩、見つかんなかったらどうする?


【PT】TIGER:つーかいくつ必要なんだ?


【PT】Riou:いっぺんに喋るな!見つからなかったら20Gのを買う、必要数は限らない!


――――――――――



時折そんな会話を交わし、俺達は全員で回復薬を探すことになった。

まぁ、どうせ皆も探したい物はあっただろう、これはほんのついでだ。

当の俺はと言うと、実は探している物があった。



それは何か。ずばり付加効果つきでLv50、戦士用防具一式だ。

防具はそれぞれシリーズと呼ばれる物があり、それを一式揃えると、様々な恩恵が得られる。

例えば、戦士用初期防具のレザーシリーズ。

これは一式揃えると、HP+80、攻撃力+10……と、まぁ初期にしては良い効果が発動する。

シリーズによってそのオマケは変わって来るため、事前にWIKIなどで必要なシリーズを調べると良い。

しかし、そのシリーズも同じLv帯で三種類もあるため、探す方が困難だったり、見つからなかったりする事もしばしば……。



ボスドロップレア装備、生産装備、店売り(モンスタードロップ)の普通装備と、集める方の身にもなって欲しい。

ちなみに俺の探しているのはボスドロップのレア装備、猛破【もうは】シリーズだ。

その内また違うなんとか装備が出るんだろうな。ギルド装備シリーズとか。



頭の中を切り替えて、俺は宝(回復薬と装備)探しに没頭する事にした。

 


端から端まで一つ一つを覗いて行く。

……が、目的の物は一向に見つかりはしなかった。

必要な時に見つからず、不要な時にぼろぼろと……。全く、世の中呆れるほどに不親切である。


念のため皆にも、猛破シリーズを見かけたら声を掛けてくれる様に言ってある。

それでも、何の声もないのがまた寂しくなってくるのだ。



と、その時一般チャットによる会話がログに飛び込んできた。

一般チャットは、近くのプレイヤーと会話する時に多用される。

特徴としては、会話の内容が他人にも見える事など、時には周囲のプレイヤーを巻き込んだ大規模な会話に発展することもある。



その一般チャットで会話されていたのは、今話題の獣化についてだった。



――――――――――


【一般】KEI:こん、えじさん今日何日目だっけ?


【一般】えじぷと:こん!俺は今日で4日目、左足まで来たよ


【一般】KEI:うわ、来てるね;;僕はまだ2日目だ~


――――――――――


他愛ない会話ではある。

だが、周囲にいたプレイヤーは皆この会話に注目している事だろう。

何故なら、自分だけが獣化している訳ではないとの、安心感を得たいから。



かく言う俺も、その一人。


 

――――――――――


【一般】KEI:そういえばさ、全身まで獣化したらどうなるのかな?


【一般】えじぷと:さぁ、どうだろうな。やっぱ自我無くなるとか、そういうオチじゃない?


――――――――――



そこまでは俺も想定している事だ。他に何があると言うんだろう。

そこで、一般チャットを交わしていた彼らの間に乱入者が現れた。



――――――――――


【一般】影狼:君ら二人、こんな所で物議かもしてるなら内緒でやってくれる?ログ流れるんだけど


【一般】えじぷと:なら一般チャットが見えないようにOFF機能使えばいいじゃないっすか?


――――――――――



OFF機能とは、特定のチャットログを非表示に出来る、うるさい奴がいる時などに活躍する機能だ。

ログが流れるとは、チャットログと呼ばれる発言の履歴が、一定の発言を超えると消えてしまう事である。有益な情報がログ上にある場合、別のチャット機能で会話をしている場合、ログが流れてしまうのは好ましくない。

 


この時は、影狼……かげろう?さんの方が有利だろう。

何が有利か?正当性だ。

こう言った小競り合いは、至る所で展開される。

どちらか一方が立ち退く、もしくは折れなければ、際限なく続く。



――――――――――


【一般】影狼:多分この辺りにいる人も一般はうるさいと思ってるよ


【一般】KEI:済みません・・・内緒でお話します


【一般】えじぷと:けい良いよ、向こう行こうぜ


――――――――――



それを期に、二人の会話が表示されることは無かった。どこかへ行ったのだろう。

影狼さんは、どこへ行ったか知れたもんじゃない。


影狼さんの様に、他人の非をつく人は、このネット社会でも少ないのが事実だ。

それは、行動後に何をされるか分かったもんじゃないと言う、恐怖から。

もしくは、ただ面倒くさい、関係無いからと言う考えからの場合が多い。


俺は……ただ二人の意見を聞きたかっただけかな。

そうでなければ俺も影狼さんのように注意していたはずだ。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ