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第一章 共通点

朝から変な物を見た。

俺の様で、そうじゃない異質な物を。



俺はその日はどうも学校に行きたくは無かったが、他の三人にも変な事が無かったかを聞きたくて、登校した。

家から学校まで小一時間。

職員室に直行して、例のあの面倒な書類を書いて貰う。



「……中村、今日顔色悪いぞ?夜更かしなんてするなよ」



担任の坂田は本当に心配そうに俺の顔を覗き込む。



「あぁ……ちょっと睡眠不足なだけです」



それでも尚心配そうな顔をする坂田に頭を下げ、職員室を後にした。

今日はいつもより大幅に遅刻だ。あと三分で一時間目が終わる。



……あいつら全員来てるかな。





一時間目終了を告げるチャイムが校内に響く。

俺は授業終了の挨拶をみんなが終える頃合を見計らって、教室に駆け込んだ。



「……虎獅!」



藍琉だ。

いつもより明るさに欠ける暗い表情をしている。

教室の後ろの方から入ったが、何故だか後ろの方にあの三人が固まっていた。



「よう。どうしたお前ら。後ろに固まってさ」



「あぁその事についてだ。来い」



明るく話し掛けた俺の腕を、奏江がぐいと引っ張って行く。



「ちょ……なんだよ、かな……え……?」



「いいから。資料室行くぞ」



資料室――?

何であんな人気の無い所に……。



まさか。

遥霞を見ると、遥霞もまたやつれた顔をしている。

それに奏江のこの態度。

眉間にぎちっと刻まれた皺が、事の重大さを物語っていた。



こいつらにも何かあったのか? 

資料室は生徒の教室のある所から少し離れた所にあり、近寄る者は少ない。

そんな所に行って話があると言う事は、余程の事なのだろう。



「……ごめんな、虎獅。でもすぐに話さなきゃならなくてさ」



俺の腕をそっと放した奏江は、済まない、と言うかの様に肩をすぼめた。



「いや、緊急なら仕方ないだろ。それに、話ってなんだよ?」



俺がこう切り出すと、着いて来た藍琉と遥霞は俯いて奏江は眉根を寄せてしまった。

しばしの沈黙は、身じろぎをする事すら躊躇われた。




沈黙を破ったのは、遥霞。





「……今朝、俺達は鏡に映る獣人を見たんだ。それぞれの作ったキャラクターにそっくりの」



あぁ、やっぱりお前らも。



「俺達3人が全員同じ様なことを言うから、試したんだ。男子トイレにある小さい鏡で。

 その鏡に3人で映っても、そこには狼と熊とライオンの獣人しかいなくて」



ゆっくりと話す遥霞はどこか苦しそうで。

見ていると慰めてあげたくなる程、気落ちしていた。



「……このままみんなに何かあったら、獣化伝を薦めた俺のせいだ」

 


遥霞はとうとう自分を責め始め、今にも涙腺が緩んでしまいそうだ。



「そんな事ねぇよ。それに、まだ俺達には何の危害も無いだろ?大丈夫だよ」



そんなの、一時の慰めにしかならないとしても。



「俺も、朝洗面所で顔洗ってたら見たんだ。黒い……虎の獣人をさ」



途端、3人の顔が引きつる。



「お前も……か」



奏江の額に深く皺が寄せられる。

もし鏡に映る幻想が真実ならば、俺達は今後人として生きてはいけないかも知れない。



「本当に獣人になったらテレビに出まくってやろうぜ!」



でも、こいつらが沈んでいるのなら、俺だけでも明るく気丈に振舞わないと。

俺はこいつらの仲間だから。



「……そうだよね。まだそうと決まったわけじゃないし」



「同感だな、藍琉。遥霞もそうだろ?」



「うん。でもちょっと気になるんだけどさ」



一番心配な遥霞は、自分の疑問に思っている事を口にした。

 


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