第三章 タイガー・タイダルウェーブ
ぼーっとした所でハッとして我に返ると、魔法職の四人はとうにその場からいなくなっていた。
あ……そうか、50%……!!
相変わらず、上の空でも攻撃だけはしっかりとやっていたのだが。
改めて見ると、大海の虎のHPは50%になってはいる。……が、スキルを放ってきそうな気配は一向に無い。これも邪獣王の魂の効果か?
スキル発動条件も、プログラムを書き換えちまったって言うのかよ。
……それから遅々として進まない、HPを三人でちまちまと削る作業。
今魔法職の四人に戻って来てもらうのも、なんだか怖い。
ここは前衛である俺達三人が、どうにか気張って行くしかなかった。
補助無しでいると、それだけで背後が心配になって来てしまう。
しかし、それでも今この場で諦める様な発言をする訳にはいかないのだった。
そして今この瞬間になって、魔法職の彼らを呼ばずに良かったと安堵の溜め息をつくのだ。
大海の虎のHPが40%を切った時、それは突然発動した。
〈大海を統べしは我が力なり!貴様らに屈する訳には……いかぬ!!〉
〈タイガー・タイダルウェーブ!!〉
大海の虎のグラフィックが、天を食い破らんとばかりに空を仰ぐ。
すると、大海の虎の足下から、虎の形とかろうじて分かる津波が発生した。
瞬時に俺達三人を飲み込む、虎型の津波に抵抗する術なぞあるはずも無く――
飲み込まれたエフェクトが発生し、俺の黒虎の頭上には、〈2300〉の数字。
……ヤバい!
俺は素早くHP回復アイテムを使用する。
俺のHPは2500、もう少しでオダブツになる所だった……!
うわ、ベアっ!!
俺や緋熊は何とか態勢を立て直したが、ベアは防御力が足りなかったらしい。
力尽きてしまったのだ。
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【PT】TIGER:へるぷ!!
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カタカナに変換する間も惜しく、俺はチャット欄に打ち込んでエンターキーを押していた。