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第一章 LOG IN

――見渡せば、そこは獣の世界――

あの文字が消えて画面が暗くなったと思ったら、今度はフワッと光って画面が明るくなる。

画面中央には、俺のキャラらしき3頭身の虎獣人が尻尾を振っていた。



どうやら拠点となる街のようだ。

獣王街【じゅうおうがい】?



目の前にあからさまに初心者は話しかけてね!な感じの狼獣人のNPCが立っている。



……て言うかこいつしか居ない。

仕方無く、そいつをクリック。

すると、画面下に吹き出しと共にカッコいい狼獣人の大きなイラストが。



――NPC、初心者訓練士

【やぁ!獣化伝の世界、獣界へようこそ!君にはこれから世界にはびこる邪悪な動物達を退治して貰いたいんだ。僕の頼みを聞いてくれるかい?】



→はい

 いいえ



これは……初心者チュートリアルだな。

初歩的な事を教えてくれる便利な機能だ。



→はい



――NPC、初心者訓練士

【そうか、ありがとう!所で、君はまだ戦闘を体験した事は無いだろう?街の外へ出てマウスを5匹狩って来てくれ!】



――クエスト開始――

 

マウス5匹の討伐

 

――――――――――



早速クエストか、まぁどのネトゲにもある事だ。クエストを面倒臭がっていたら始まらない。

俺は肉球の形のカーソルを動かし、街の外へと飛び出した。

 

さて、クエストを開始するのも良いが、とりあえずはあいつらを探さないと。

狼族、FAR……聖職者。





いや、見当たらん。こう言う時は目立つ所に居やがれ。

いない奴を探してもどうにもならない。俺はクエストを進める事にした。


その内ばったり会うさ。




マウスは簡単に言うと、ドラ○エなんかに出てくるスライムと同じ、雑魚敵。

モンスターがレベル1の時点で、回復なしで連戦をしなければ負ける事はまず無い。

装備の一覧を開くと、ささやかだが武器と防具をつけている。



胴:レザーアーマー

武器:木の枝

他:空欄


初期武器はやはり、酷い物だ。

まぁつけてるだけマシだと思う。色んなゲームを回ればそれが分かる様になるから。

それと、このゲームはエンカウントバトルでは無く、シームレスバトル?のようだ。

プレイヤーの歩くフィールド上に、モンスターがわんさと溢れている。



まず手始めに。

俺は一番近くにいたマウスをダブルクリックして、キャラを攻撃モードにした。

敵をキャラが木の枝で殴りつけると、敵の頭上に俺のキャラの与えたダメージが飛ぶ。

勿論反撃をしてくるため、それは俺のキャラも同じことだった。


僅か3発ほどで呆気無く昇天したネズミにゃ目もくれず、次々とマウスに奇襲を仕掛ける。



2/5

3/5

4/5

5/5



パァァッ!

その効果音と共に、キャラの頭上にLVUP!!の文字が浮き出る。

最初は上がりやすいんだよなぁ。

俺はクエストの報告のため、街へと一旦引き上げることにした。





     ☆ ☆ ☆ ☆




――NPC、初心者訓練士

【やぁ!お疲れ様!初めての戦闘はどうだったかな?これからは街のNPCからこんな感じでクエストを頼まれるんだ。その時はよろしくね!


戦闘体験も終わったことだし、君はもう十分旅立つ準備が出来ているね】



いやいや、ネズ公5匹なんて猿でも出来るよ!……落ち着け、俺。

NPCに突っ込んでも仕方ないだろう。



――NPC、初心者訓練士

【そこで、まだ幼い獣の君に、試練を与える。

また街の外へ出て、今度はバタフライを8匹狩ってきてくれ】



――クエスト開始――

 

バタフライ8匹の討伐

 

――――――――――



今度は蝶か?


クエスト欄を良く見ると、

報酬:木刀 攻撃力+15

とある。

お、武器がもらえるのか。こりゃやらなきゃだな。



俺は再び街の外へと出て行った。



この手のゲームだと、お目当てのモンスターを探すのに一苦労する事がある。

位置を覚えればいいのだが、最初は誰でも躓く所。

別に攻略サイトでも何でも見れば良いと思うかもしれないが、まずはマップに慣れた方が良い。



バタフライ、バタフライ。

蝶々、蝶々。



マップ内はそんなに広くなく、探していたモンスターは難なく発見出来た。

木の枝を振り回し、俺のキャラは奮闘する。

その動作をみていても、何故か可愛らしいと思ってしまう自分がいた。



……あるぇ、カッコ良く作ったんだけどなぁ。



8匹の討伐は意外とあっさりと終了した。さて、クエ報告……っと。

街へ向けてエリア移動しようとした途端、そいつは現れた。



熊族で、この身なりは盗賊か。

キャラの足元に、名前がある。BEAR、熊?

と、突然そいつから内緒チャットが送られてきた。

別のゲームでは1:1とか言ったりウィスパー、耳打ちとか言ったりもする。


――――――――――

 

【内緒→TIGER】BEAR:虎獅?

 

――――――――――


……熊、盗賊。

そうか、こいつは奏江か。

俺は結構タイピングは速い方だ。5秒と経たずその質問に返答した。



……カタタタ、カタンッ



――――――――――

 

【BEAR←内緒】TIGER:うん。お前、奏江だろ?

  

【内緒→TIGER】BEAR:おうよ。まだ転職してないのか?もう皆待ってるぜ

 

【BEAR←内緒】TIGER:うわっマジで?俺だけ乗り遅れたのかよ。ちょっと熊公手伝え~!

 

――――――――――



転職とは、ゲーム内でいくつかに分かれた職業になる事で、転職するとその職業固有のスキルを使えたり、装備を使用できたりする。


俺は他の二人も呼んで、PTを組んで三人に手伝ってもらい、

最終的に転職クエストまで手伝ってもらった。

ついでに装備も新調して、戦士の鎧を身に着けた俺のキャラが眩しく見えた。


――――――――――

 

【PT】TIGER:いやぁ、助かったわ~

マジさんきゅーみんな

 

【PT】BEAR:お前はいっつも遅れてるんだよなぁ 


【PT】FAR:まぁいいじゃん!虎獅も戦士に転職できたし、ダンジョンのボス狩り行かない?

 

【PT】AIR:いいね、全職集まってたら余裕でしょヾ(*・ω・)ノ゛ 


【PT】TIGER:よっし!みんなで行こう!

 

――――――――――


その後、俺達は学校があると言うのに朝方まで「獣化伝」を続けた。

正直、ネトゲでこんなに楽しく遊んだのは久々で。

朝方までやっていて当然の如く次の日の学校も遅刻したのは、仕方ないと思う。

反省はしているが、後悔はしていない。それだけ、楽しかったから。


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