第二章 高威力範囲スキル
しかし、そんな心配も最早皆無になりつつあるのだった。
何故ならば、悲嘆のグリフォンのHPはようやく半分を切ったから。
しかも俺達に被害はそんなに無く、回復魔法をするべき聖職者の二名は、仕事が無いのか攻撃に回っている程。
緋熊のHPの減り具合を見ると、成程。
確かにHPが減る速度は遅く、彼らの仕事が無いのも頷けるのだ。
本当にただ防御力が高いだけらしい。時間を掛ければ倒せない訳でもないな。
俺はまたスキルを発動した。
そろそろ40%くらいかな、だいぶ減って来たような気がする。
〈グゴゴ……、全くもって嘆かわしい!
高貴たる我に対しこの様な愚行を働くとは……万死に値する!!〉
〈グリフォン・ザ・フレアウィンド!!!〉
俺はその瞬間、自分の目を疑った。
何……!?
こいつは高威力範囲スキルを使用して来ないはずだぞ!
しかし、目の前に君臨したるグリフォンは俺達全員に向けて、放ったのだ。
〈グリフォン・ザ・フレアウィンド〉を。スキル名は厨二臭いが、侮りがたし。
その威力は絶大、先程までHP100%を維持していた俺と緋熊は、20%くらいにまで一気に削り取られてしまった。すかさずカッツェとファーの素早い後方支援が入る。
ヒールと言う回復魔法を数回もらい、皆は出来る限り態勢を立て直す。
カッツェ、ファー、アイルはさほどHPを削られてはいない所を見ると、
〈グリフォン・ザ・フレアウィンド〉
は魔法攻撃スキルだったようだ。
魔法系職業は魔法防御力が高いため、魔法を食らってもそれほど痛くは無い。
しかし、物理攻撃職の俺と緋熊、ベアは魔法耐性の低さから大ダメージだ。
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【PT】TIGER:WIKIの情報と違うぞこいつ!
【PT】BEAR:あぁ、しかもあんな台詞の事も聞いた事無い
【PT】AIR:まさか現実もだけどゲームまでおかしくなって来たんじゃ・・・
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そう……何かが、おかしいんだ。
それでも、態勢を立て直すと再び各自グリフォンを攻撃し始める。
先程の教訓では俺、緋熊、ベア以外には何ら危険性は無い為だ。
俺達三人が気を付けていれば、
〈グリフォン・ザ・フレアウィンド〉
なんて馬鹿げた攻撃は恐ろしくない。
回復担当さえ生きていれば態勢なんていくらでも立て直せるのだ。
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【PT】緋熊:みんなで一気に畳み込もう!
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緋熊のその一言で奮い立った俺達は、今まで以上に猛攻を始めた。
通常攻撃を挟まず、攻撃はスキルのみでバンバン連発する。
そして、遂に10%をきるグリフォンのHP。
あんな卑怯な高威力範囲スキルに怯えている訳にはいかないから。
今、ラストスパートをかけよう。