第二章 お客様各位
皆家に帰り、早速ゲームを起動する。パソコンのデスクトップにショートカットとして置いてある獣化伝公式ホームページをダブルクリックした。直ぐさまインターネットが開き、初めて見た時と同じように様々な獣人の美麗イラストがちりばめられている。
「ログイン……っと」
パスワードとIDを打ち込み、ゲームを始めようとは思ったのだが。
……なんだこれ。
公式サイトのど真ん中に、
「お客様各位」
とドデカく、すぐ目に付くような赤い文字が俺の視界に飛び込んで来たのだった。
思わず好奇心に駆られてその警告文のような赤い文字をクリックしている俺。
そのページにジャンプすると……。
「…………ふざけてんのかよ……クソ……っ!」
俺は、そのページにずらずらと並び連ねられた文に、言葉を失わざるを得ず……。
押し殺そうとした言葉も、口の端から途切れて出て来る程、俺は自分の理解したこの文の内容が信じられなかったのだ。
――――――――――
お客様各位へ申上げます。
現在、「このゲームをプレイすると獣の耳や尾が現れるが、それは何故か」とのご質問を多くの利用者様から聞いております。
症状:鏡や、反射する物に映る影
身体の獣化
感覚気管の発達
当社はこの症状につきましては、
「これからのイベントのため」
とだけお答えさせて頂きますので、ご了承下さい。
尚、この症状は当社の発する特殊な電波により、故意に引き起こしております。身体への悪影響はございませんので、ご安心ください。
その目的は後日改めて公式サイトにて公開させて頂きますので、皆様方、どうかそれまでは獣化伝をお楽しみ下さいませ。
――運営会社エターナルビースト
「これからのイベントのため」?
なら、俺達はそのイベントの出し物かよ。
……しかも特殊な電波?何なんだよ。
早くこの運営会社の目的が公開される事を祈りながら、俺はゲームを起動した。
TIGERを選択、いざ獣化伝の世界へ。
あ、昨日落ちた所は……っと。
……そうか、嘆きの洞穴の第二層か。
まだ街に帰って無かったんだよな。
画面が明るくなると同時に、俺のキャラがフワッと表示される。
周囲を見渡すと、あの三人がもうログインしていて、隅っこに固っていた。
――――――――――
【PT】BEAR:そう言えばこのゲームのPTはゲーム終了しても脱退しないんだな
【PT】FAR:そう言われると、そうだったね
【PT】AIR:あ、たいがー来た。こん(^-^)
【PT】TIGER:皆、こんちゃ(・ω・`)
――――――――――
談笑してはいるものの、三人はあのムカつく文章を読んだのだろうか。