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起動

「……そのサイトで気になるバナーがあってさ。

なぁ、虎獅、オンラインゲームの【獣化伝】って知ってっか?」


ニヤついた顔で振られる話題に、思わず食い付く。


「はぁ?なんだよ、それ!超気になる!」 

「だろ?この間正式サービスが始まったゲームなんだけど……めっちゃ楽しいんだよ、これが!」


授業も終盤。

俺達は声を上げて会話を楽しんだ。


「今流行の3Dじゃなくて2Dなんだけど、キャラがカッコ可愛いくてさぁっ!」


遥霞は言わばグループのムードメーカー的存在で、話を聞いていると引き込まれる。


「マジかよ~。なんでメールで知らせてくれなかったんだ!」


奏江が遥霞を小突く。

このやり取りも、最早見慣れた風景だ。


「だって夜中の3時だったんだよ!?」

「まだ起きてるっつーの!」


全くこいつらは……。一体いつ寝ているのかすら分かったもんじゃない。



「じゃあ帰ったらやろうぜー」


昨夜の睡眠時間は5時間を割っているであろう奏江が、俺達に声を掛ける。


「おうよ。遥霞、お前サーバーと名前」


オンラインゲームにおいて、リアル友達(通称リア友)と一緒に遊ぶために必要なのは、


その友達のキャラクター名

サーバーの名前


キャラクター名はどのキャラだか見分ける為に、

サーバーは世界の様なものだから、世界が違うと同じ場所には居られない。

必ず同じサーバーじゃないと駄目なんだ。

 



2時間目から俺達は帰宅したいモード全開。

勿論件のネトゲ、【獣化伝】を早くプレイしたいからだ。

遥霞は、自分のキャラの名前を「FAR」、遠いって意味で「遙」から取っていると言っていた。


そう言えばいつもFARだな、と今更気がついた俺は鈍いのか。

んで、サーバーはWOLFとTIGERがある内の、WOLF。

おまけにキャラの種族は狼に、職業は聖職者にしたようだ。


ネトゲの中で言う聖職者は、主に回復担当で魔法系。

ゲームによってだが、回復魔法と補助系魔法を使いこなし、スキルが他職よりも多い、って傾向がある。

まぁ、パーティーでダンジョンに行くなら欠かせない存在だ。


更に聞くと、職業は今は4つあり、戦士、聖職者、盗賊、魔術師だとか。

今の内からそれぞれ決めておこうって事になり、



遥霞はさっきの通り狼の聖職者、

奏江は熊の盗賊、

藍琉は獅子の魔術師、


そして俺は勿論、虎の戦士にする予定だ。



ここまできちんと決めていると、余計ゲームをやりたくなって来てしまう。

下らなくて詰まらない学校の授業が終わって早速、俺達帰宅部は帰り支度をする。


「じゃ、みんなゲームでね」


遥霞のこの一言にそれぞれが反応し、俺は帰路へ着いた。

いやぁ、ケモナーな俺にぴったりのゲームじゃないか。

今後未実装とされる竜が実装されれば、ドララーな方だって大喜びだ。


「ただいま~」


道中のチャリでは呆けていて5回くらい田んぼに落ちそうになった。

田舎過ぎるだろ……。


「おかえり~虎獅~」


おっとこの声は。俺と同じくネトゲ廃人のお母様じゃないか。

やっぱ親子は似るものだ。


「母さん、俺今から新しいネトゲやるから邪魔しないでね」

「はいはい、ご飯今日はおうどんだから!」


階段を駆け上がる俺の後ろ姿を、母さんの声が追う。




「さて、ゲームっと……」


俺はゲームPCの電源を入れた。ゲームPCとは言っても、ウェブが見れない訳じゃない。

ただPC自体の性能……そうだな、メモリとかが良いだけだ。

PCは少し待つと直ぐに起動し、俺はYAHOO!を開いて「獣化伝」と検索した。


「……お、これか」


検索で一番上に表示されたサイトをクリックする。

ジャンプすると、そこには様々な種類の獣人の綺麗なイラストが背景に描かれていた。

これは……けしから……いや、もっとやれ。こりゃケモナー魂をくすぐるぜ。



と言う事で。

俺は早速このゲームの会員登録を済ませ、ゲームをダウンロードした。

流石ゲームPC+フ○ッツ光。

ダウンロードもインストールも直ぐに終わる。


「よし、これで早速獣人を拝めるのか!」


興奮冷めやらぬ俺は、独り言が多くなった気がする。

そんなこんなで、俺はようやくゲームを起動した。





    ☆ ☆ ☆ ☆ 





まずは……名前を入れてください?

俺は迷わずTIGERと入れた。

人気のあるゲームなら、この名前は既に使用されていますと表示され、使えないのだが……。



〈この名前は使用できます〉



おっ!これは嬉しいな。

ただでさえ虎族があるのに、TIGERは使用できないと思っていたからだ。

んで、お次はサーバーを選択してくださいか。



→WOLF【狼】

 TIGER【虎】



サーバーはWOLFっと。

これでやっとキャラクターを作れるのかな。

パッと表示された画面の中心には、可愛らしい灰色の狼獣人が立っていた。


「うおおぉぉ!!獣!」


かく言う俺はこれではケダモノ。様々な獣ジャンルの中で、獣人が一番好きだ。

俺は迷わず種族を虎族にした。毛色はどうしようか。


因みに、画面はこうだ。



→ノーマル【黄】

 ブラック【黒】

 ホワイト【白】



……これは意外にも迷うぞ。

試しに黒を選択すると、画面中央の虎獣人の毛色が、黒地に白縞に変わった。



ぶほっ……かっこええ……。

落ち着け、俺。これではただの変態だ。

白も一応見てみたが、やっぱり一番は黒が良い。



「よし、黒に決定!」




NAME:TIGER


SERVER:WOLF

 

RACE:TIGER

 

COLOR:BLACK

 



OK?


→YES

 NO



YESっと。

さて、次は何かな?

次に表示されたのは、キャラクターの表情やら何やらを変更する画面だった。

凄いな。こんな所にまで凝ってんのかよ。

2Dでカッコ可愛く表示されるのなら、俺は責めてカッコいい感じにしたい。

俺は凛々しい顔を選び、目の色を黄色にした。

次の項目では、毛の癖まで変えられる事にかなり驚いたが。


「じゃあ、ちょいと毛足を長くするかな」


自分の作ったキャラを見れば見る程、俺はキャラが好きになった。

【ENTER】をクリックすると、先程と同じような確認画面が表示される。




FACE:COOL


EYES:YELLOW


FUR:LITTLE LONG



OK?


→YES

 NO



YES……っと。

これまで確認画面だと英語だったのが、キャラクターを作成した途端、日本語になった。



【キャラクターを作成しました。これから獣化伝をお楽しみ下さい】

 


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