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プロローグ ――ネトゲ中毒者の憂鬱――

※この物語は完全なるフィクションでございます。

よく言われるのですが、獣化伝なるMMORPGは存在いたしません。



「学校……だるっ!!」



「高卒」

その表面上だけを得る為だけに通う高校。

実際はただみんなで授業を聞き流しているのが現状である。



俺の通う星稜【せいりょう】高校は、県内でダントツの馬鹿高。

母さんには申し訳ないが、楽な道を選ぶためにレベルを5つ落とした。



ごめんね、母ちゃん。

将来の好物は親の脛【すね】になりそうだが、頑張って社会に出るよ。



初夏の空の下、チャリを漕ぐ脚は緩慢と。

遅刻常習犯は俺だけじゃない、他にも……。 

 

「お、奇遇だなぁ虎獅ぃ。学校まで一緒に行こうよ」



そう、こいつも遅刻常習犯だ。

現在時刻、8時38分。HRは40分からだから、確実に遅刻である。



こいつは俺の悪友……ではないが、友達。

名前は星野遥霞【ほしのはるか】だ。



因みに俺は中村虎獅【なかむらとらじ】

俺も遥霞も、今年で高2になった。



「虎獅っ、そういやさ、俺お前に良い情報があるんだ。教室で授業中に話そうよ」



いや前言撤回だ。こいつは俺の悪友だな。

授業中に話される教師共の気持ちにもなって見ろ。と言いたい。



「マジで?楽しみ~」



が、俺にその様な事を言う資格は……、

無いと言った方が正しいだろう。



腕時計を確認する。もう45分。

HRはとっくに始まっているのだが、俺達はやっと学校に到着した。



「もう遅刻だしな。歩いて行こうか」



俺は悪友遥霞のその言葉に頷く。

何故なら、僕は楽な道が大好きですから。





     ☆ ☆ ☆ ☆    






「またお前らは。一々遅刻処分書を書く俺の身にもなってくれ」



「「すんませーん」」



この高校では、遅刻をすると職員室へ行って先公にその旨を告げて書類を書いて貰わなきゃならない。

俺と遥霞は、そのために担任の先公である坂田の元へと来たわけだ。



「……っと。じゃ、次も気をつけろよ」



「はーい」



書類を書き終えた坂田は、俺達に遅刻処分書の証明書を渡し、どこぞへと消えた。

失礼しました、と職員室を後にした俺達は、自分達の教室へと向かう。



……遥霞は何の情報を俺に言うつもりなんだろう?



だが、楽しみは取って置いた方が良い。

今は待つべきだ。



騒音を発てつつ、教室のドアを開ける。

一斉に振り返るルームメイト達には一瞥もくれず、自分の席へ向かった。



……俺は教卓の真ん前の席だけど。



「お、虎獅!ハル!またお前ら遅刻か?」



こいつも俺の友達。

ガタイの良い、長谷奏江【はせかなえ】



「そうだよ、奏江。な?虎獅」



「おう。今日もまた遅刻さ」



数学の授業中、教師も既にいると言うのに俺達は笑いあった。

毎日の事だ。数学教師の加藤は、そんな俺達を見ても少々呆れた顔をするだけ。

酷く怒る事は全くと言って言い程無い。

怒る時は、軽く笑いながら。近年まれに見る優しい教師だ。



「こーらっ。中村、星野、長谷も。今は授業中だぞ」



その言葉に、俺達はまたしても笑う。

加藤の注意はまったりしすぎなんだ。



ふと右に視線を移すと、佐野藍琉【さのあいる】が。視線があった途端、笑顔で手を振って来る。

藍琉も俺達の仲間だ。

……ただ、ちょいとばかり真面目君なだけで、基本俺達と一緒にすごしている。



左を見れば遥霞が、後ろを見れば奏江がそれぞれニヤリと笑っていた。



視力が悪いから、と志願すれば、前列あたりの好きな場所を選べる事を良い事に、俺達は毎度固まって席を選んでいる。

席なんて前列だろうが後列だろうが寝てたらどうせバレるんだ。

なら、みんなで固まって席を寄せた方が、何倍も楽しい。 





「ここの問題の答え書いてくれる人~」



加藤が黒板に次々と訳の分からん数式を白いチョークで書いて行く。



「いないなら番号順な~。……神谷、(1)。川田(2)。君島(3)。桐生(4)だ。」



俺達4人組は誰一人として当てられなかった。

加藤は気まぐれだから、いつ当てられるかがイマイチ分からない。



そして、俺は授業そっちのけで後ろの奏江を見る。

すかさず遥霞が割り込み、藍琉は時折顔を出す。



「……で、遥霞。朝言ってた情報って?」


「ん?なんだ遥霞。俺にも教えろ~」



藍琉は授業に集中しているフリをして、こちらに聞き耳を立てている。

加藤は俺達の相手をするより質問してくる生徒に付きっきりだ。



「おっけー。昨日面白そうなゲームを探してたんだけどさ……」



ゲーム。

俺達は全員ネトゲ中毒者。



昼休み、俺が冗談でとあるネトゲについて独り言を叫んだら、遥霞と奏江に男子便所へと連行された。

その時までは、お互い対して意識をする価値も無い様な当たり障りの全く無い仲。

後から藍琉も着いて来ていた様で。

何かと思えば、自分達もそのゲームをやっているとの事。だから、仲良くしてくれないかと。






この事がきっかけで、俺達は幼馴染みの様にそれぞれ仲が良くなったんだ。


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