くだらない話
「ねえ」
「なんだよ」
「何か話をしてくれない?黙って食べているのだったら一人で食べるのと変わらないわ」
「そう言われてもなぁ。話題なんて何もないぞ」
「つまらないわね」
「っ…。お前って結構辛辣だよな」
「べつに、普通よ」
「この程度でダメージを受ける俺のメンタルが弱いだけなのか?」
「そうね。あなたのwクソザコメンタルが…w悪いわ」
「言いながら笑ってんじゃねぇよ」
「あなたの反応が面白くて、つい」
「おもちゃにするのやめてね?ほんとに」
「ごめんなさいね」
「まあいいよ。“話をしろ”だっけ?じゃあ、、最近あった俺と海道の爆笑エピソードを話そう」
「私、プリンが好きなのよ」
「話の変え方が強引すぎるよ。そんなに聞きたくなかった?俺の話」
「まぁ、そうね」
「話しろって言ったのお前だぞ?選り好みする権利ないだろ」
「でもつまらない話は聞きたくないわ」
「まだ聞いてないんだから分からないだろ?」
「なんとなくわかるわよ。そんな話を聞くくらいなら、くだらない話をする方がいいわ」
「俺の話はそこまで面白い話でもなかったし、それでいいよ」
「じゃあくだらない話をさせてもらうわ」
「おう」
「私、プリンが好きなの」
「それはさっき聞いたな」
「黙って聞きなさい、ここからが本題だから。私はプリン好きとしてマンゴープリンが許せないの」
「なるほど?」
「プリンっていうのは、卵液を元にしているもののことでしょう?マンゴープリンは卵を使っていないのよ?」
「たしかにそうだな」
「マンゴープリンはゼラチンで固まっているのだから、マンゴーゼリーに改名すべきだわ」
「ゼリーと言われても違和感が残る気がするぞ。マンゴープリンはゼリーというには濃厚すぎるだろ」
「そうね…。マンゴーゼリーに改名すると全国のゼリー好きの方に迷惑がかかってしまうわ」
「迷惑とまでは行かなくても、他のゼリーから村八分にされる可能性はあるなぁ」
「私はマンゴープリンという名前が許せないだけで、味はどちらかといえば好きな部類なの。村八分なんて可哀想だわ」
「プリンから村八分にしておいて何を言うか」
「こうなったらアレしかないわね」
「アレ?」
「 “新しい名前を考えよう” のコーナーよ」
「コーナーになっちゃったよ」
「マンゴープリンもマンゴーゼリーもダメなら新しく付けるしかないでしょう?」
「まあそうか、そうかもしれないな」
「 “マンゴードロム” なんてどうかしら」
「おぉー、高貴なイメージを醸し出しつつトロッとした質感を表しているとは…。なかなかやるじゃないか」
「でしょ?次はあなたの番よ」
「俺の番か…。“マンゴーレムルナ”だな」
「結構うまいじゃない。次は私ね?」
「待ってくれ」
「どうしたの?」
「これ以上思いつく気がしない」
「何よ、まだお互い一つしか出してないじゃない」
「一個が限度だ。存在しない単語を作るなんて、そうやすやすとできるものじゃないだろ?」
「じゃあマンゴープリンはどうなるのよ。 “マンゴードロム” になるの?それとも “マンゴーレムルナ” ?」
「もうマンゴー豆腐でいいだろ」
「投げやり過ぎないかしら。豆腐好きの方々が心配だわ」
「気にする必要はない」
「なぜ?」
「豆腐界隈には掟破りの前例があるからだ」
「前例ってなによ」
「胡麻豆腐、卵豆腐、杏仁豆腐。これらは大豆を必要としない」
「大豆を使わずに豆腐を名乗れるの!?なんという懐の深さ!」
「豆腐ファンの方々はたかが一つ紛い物が増えたくらいじゃ、気にも留めないだろうな」
「完敗ね」
「2000年の歴史は簡単に崩せるものじゃないのさ」
「じゃあこれから、私達の間でマンゴープリンはマンゴー豆腐と呼ぶことにするわ」
「まじで呼ぶのか」
「当然よ。ゆくゆくはSNSを使って世間に浸透させるのだから」
「気合いがすごい」