話してみたら意外と気があうもんだな
ガラガラッ
「うおっ」
「!」
「びっくりした。涼宮さん?こんなとこで何してるの?」
「何って食事だけど」
「それは見ればわかる。俺が聞きたいのは “なんでこんなとこで飯を食ってるのか” って話なんだけど」
「誰も来ないと思ってたからよ。あなたこそこんなところに何の用?」
「俺も飯を食いに来た」
「そんなことはあなたが持ってるパンを見たらわかるわよ。なんで旧棟の奥まで食べに来たのかって聞いてるの」
「そりゃ人がいないと思ったからだよ。涼宮さんと一緒」
「そう」
「あー、お邪魔して悪かったね。君の城を崩すつもりはなかったんだ、許してくれ」
「べつに構わないわ」
「じゃあ俺は別のところで食べるから、失礼するよ」
「なんで?」
「なんでって何?どういうこと?」
「ここで食べればいいじゃない」
「でも、ここは君が使ってるじゃないか」
「一緒に使えばいいわ。私は別に構わないから」
「一人で食べたかったんじゃないのか?」
「べつに。教室で食べたくなかっただけよ」
「俺も似たような理由だったから、君がいいって言うなら断る理由もないんだが」
「じゃあここで食べなさい。一人で食べるのって、意外とつまらないの」
「そこまで言うならお言葉に甘えようかな」
「そう。私の隣の席を使うといいわ」
「ありがとう」
「べつに、なんでもないわよ」
「そんじゃ、いただきます」
「あなた、友達と食べなくていいの?いつも遊んでる河内君のグループとか、海道君は?」
「いいんだよ。河内のグループは俺がいなくてもなんともないし、海道も彼女と食うってさ」
「海道君って付き合っていたのね。知らなかったわ」
「最近別のクラスの奴と付き合い始めたんだよ。今で三週間目くらいかな」
「そうなのね」
「お前こそ友達と食べなくていいのか?飯村さんたちとか仲良いんじゃないのか」
「彼女たちは騒がしいのよ。ベタベタ触ってくるし。お昼くらい静かに食べたいわ」
「わかる。教室はうるさいもんな」
「ほとんど初めて話すわりに、結構気があうじゃない」
「俺も思った。涼宮さんと話すのは気が楽だ」
「呼び方はある程度統一化してほしいのだけれど」
「そりゃ失礼。涼宮さんでいいかな?」
「お前でいいわ。私もあなたって呼んでるんだし」
「そりゃ助かる」
「またここに食べに来てもいいわよ」
「そうさせてもらうよ。ここは陽当たりもいいし静かだから、ゆっくりするのに最適だ」
「私の見つけた穴場よ、存分に味わうといいわ」