10才下のストリーマーに死ぬほど舐められてるので死にたい
なぜ俺はこいつとつるんでいるんだろう?いつも暴言ばかり浴びせられているのに。マイクの向こうにいるアイツの顔が浮かぶ。
『けみ。よえぇ。これは人権ねぇわ』
確かに『マキヲ』は俺よりFPSゲームが上手い。
『だからいつまでも同説2桁なんだよ』
同じゲームを同じ時間に一緒にプレイして配信しているのに『アイドル系ストリーマー』の『マキヲFPSチャンネル』は30000人に見られていて俺の『ゲームをするけみ』チャンネルは視聴者96人。
『30年無駄に生きてきたんだね。ストリーマー辞めて今のバイトから正社員になった方がいいよ!』
「……はははっ。キツいなぁ。マキヲは」
『えっ?あんた笑って誤魔化せる年齢じゃないよ?真剣にやれよ。おら。次の試合行くぞ』
「ご、ごめん」
・
『マキヲかっけぇ』
『マキヲの金魚の糞。けみ』
『こんな大人になりたくねぇ。勉強頑張ります』
・
コメントもみんなマキヲの事ばかり。視聴者もみーんなマキヲの味方。もう俺本当にストリーマーやめようかな?
『チュッスー』
『うぇーい』
ゲームに新しく参加してきたのはマキヲが誘った18才『地雷系女子』の新人ストリーマーのピカリ。新人って言っても、もう10000人は放送に集まる超格上なんだけどね。20と18の子と一緒にゲームするの辛い。ピカリちゃんもまたゲームが超上手いんだ。案の定最初にダウンさせられたのは俺。
『グズけみ!蘇生するからこっちこい!』
『マキヲ君!私がカバーする!』
「ははっ。ごめんね」
『笑って誤魔化すなっての!キモいんだよ!』
「……」
ゲームに復活出来るまで暇なのでピカリの放送のコメントをスマホで見た。
『マキヲはいいけどこのおじさん?とはコラボしないで。ピカリのブランドが落ちるよ?』
『けみとかいう。おっさん。女来てから張り切りすぎてキモすぎ。お前なんかがピカリと話すな』
『このおじさん外して二人でプレイしてくださいこのおじさん外して二人でプレイしてくださいこのおじさん外して二人でプレイしてください』
あーあ。こっちのチャンネルでもアウェーかぁ。
『いやー。マジでけみは才能ゼロっす。1000時間プレイしてこれっすかぁ~?』
「あははー。ごめんねぇ」
『いや~。マキヲさんが言うようにけみってほんとキモいっすね~わろけます~』
「笑って笑ってー。笑ってくれた方が楽だよー」
『あんたみたいな底辺を見てると落ち着きますわ~』
「あははー。はっはっはー」
やばい。泣きそうだ。決めた。やめる。俺もう放送しない。一人でゲームしてた方が楽しい。若者にいじめられるのもうやだ!
『ピカリさぁ。あんま喋ってねぇで蘇生セット拾ってきてくれねぇ?』
『えっ?あっ?うん』
マキヲが強い口調でそう言ったのでピカリは少し怯えたように返事をした。マキヲも同意してくれると思っていたのだろう。
マキヲ。何だか機嫌が悪くなったな。それから俺がゲームに復活するまでの20分間ずっと空気が悪かった。
ピカリがマキヲを笑わせようと俺をイジるがマキヲは露骨に無視をして俺に罵声を浴びせる。なんだろう?俺をイジるネタはマキヲの大好物なのになんで機嫌悪いの?
『蘇生完了!めんどいおっさんだわ~。はよ武器拾って来い!犬みてぇにな!』
『マキヲ君ウケる!行ってこい!犬~!』
「ワンワンっ!」
マキヲに蘇生して貰った俺は空気を和ませる為に犬の泣き真似をしながら武器を……拾えなかった。
復活してすぐにスナイパーに撃ち抜かれ雑魚死させられたのだ。マキヲとピカリのコメント欄が俺への罵倒で溢れているのが想像できる。
『もー!状況のクリアリングぐらいしてよ!おっさん過ぎ!けみ!マジであんたゲームも配信も辞めたほうがいいよ!』
「ごめ……」
突然。バキッとかボガッとか何とも言葉にできない音がした。何?地震!?コメント欄を見るとどうやらマキヲがマウスを床に叩きつけたらしい。
『さんを付けろよバカ女!』
『マキヲ……君!?えっ?さん?けみに?何で?』
「何で?」
俺も気になる。
『年上だろーが!』
『でもけみだよ?』
『おめーとけみは初対面だろうよ!てめー口が悪りーよ!けみに謝れ!』
俺もピカリもなぜマキヲが怒っているか分からなかった。俺をいつもボロクソに言ってるのはマキヲなわけだし……。マキヲの怒りは収まらない。悪口大会があったら世界を取れるぐらいの語彙力でピカリを責めに責めた。可哀想にピカリは泣き出してしまった。
『うぇぇ。なんでぇ?マキヲ君に気に入られたかっただけなのにぃ。けみのバカァ』
俺!?
『だからさんをつけろや!』
『マキヲ君もつけてないじゃん!』
『俺とけみは友達だからいいんだ!』
……えっ?そうなの?友達だったの?俺ら。
『友達だったら悪口言ってもいいんですかぁ~?』
『悪口なんて言ってない!けみの器のでかさに甘えてるだけだ!なぁ?けみ!?』
「おっ、おぅ。そっ。そうやで~」
いきなり振られると、とりあえず肯定してしまう自分が情けない。そうか。あれはマキヲの『甘え』だったのか。
『そうだぞー。マキヲはけみには素を見せられるからいつも楽しそうなんだよな』
『この女。二人のプロレスも分からないのかよ』
『信頼してるから安心して暴言言えるんだよ』
そんなコメントが目にはいる。えーっ。視聴者もそう思ってたの?ガチだと思ってたのは俺だけってのと?
『でもでもでもぉ~』
『もういいよ。お前。けみ。デュオ(二人)でやるぞ』
「う……うん」
『待って!マキヲく……』
ブツリ。
マキヲはピカリをサーバーから追い出して通話も切ってしまった。いいのかな?新しくゲームを再開。
『お前。弱いから金武器やるよ』
『ありがとう』
『もう少し堂々としろよ』
……ん?堂々?
・
(俺。気に入った人間ほどボロクソに言っちゃうんですよね。いつかけみさんにも暴言吐きそうで怖いです。嫌われたくないし)
(いいんじゃない?それが君の愛情表現だしそれを理解してくれる人とだけ付き合えばいいよ。俺は君より大人だからどーんとぶつかってこいよ!嫌いになんかならいし若いんだから堂々としなよ!)
(あざます!けみさんに相談して良かったっす!またコラボ配信お願いします!)
・
……高校生だったマキヲとの会話を思い出して何だか耳が熱くなった。会話の内容もだし気が弱いくせに無理して大物ぶってた当時の俺……。
……はっずいなぁ。
『だー!だから雑魚死やめろや!社会不適合者!』
「あーっ!ごめんってば!」
『思い出し恥ずかし』をしていた途中で話しかけられたからついつい怒鳴ってしまった。
『う……うん。蘇生するから待っててね』
「ゆっくりでいいよ」
『……頑張るね。応援してて』
「堂々としてろよ。ここは戦場だぞ!」
『おうっ!』
あー。今日はもうやけくそだ。
『久しぶりにけみが言い返したw』
『古参のけみファンとしては懐かしい光景だは』
『……けみ×マキてぇてぇ』
コメント欄が大分カオスな事になってるなぁ。
考えるのも配信やめるのもやーめた。
この後。俺たちは見事逆転チャンピオンに輝いた。
『よーーし!』
「どりゃあああ!」
Champion・result……『マキヲFPS……ダメージ3680。13キル』
『けみ……ダメージ300。13アシスト』