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第8話:二年後

投稿が遅れてすみません。

ちょっと朝からごたついてて投稿するのを忘れてました( ̄▽ ̄;)

 俺が村にやってきてから随分経った。

 正確には二年くらい。

 たった二年じゃ何か変わることもなく、何事もなく平穏な毎日を過ごしていた。


「ねぇ、吸血鬼(ヴァンパイア)の動きが活発になってきてるって話聞いた?」

「あー、近所のおばさんがそんな話してたような気がする」


 どこでそんな情報を仕入れてくるのか分からないけど、奥様方の情報網すごすぎるんだよなぁ。


「て言っても、人間たちには天使がいるしそんなに問題はないんじゃねぇの?」

「うーん、どうだろうね。こっちが向こうに特攻を持ってるように向こうも僕たちに対して強いところがあるし……」

「何よりフェイが強いし」

「それこそ数で押されたらどうしようもないからね?」


 フェイはそういうけど、俺からすればフェイが負けるところなんて想像できない。

 何か有事の時は基本二人で行動していたから、フェイの強さは嫌ってほど分かってるつもりだ。

 村が盗賊の集団に襲われたときも、村人一人に怪我させることなく盗賊を全員捕縛してたくらいだし、俺が今まで出会ってきた生き物の中で一番強いんじゃないかって言う疑いが出るくらいには強い。


「それで、この村は吸血鬼の領土が近いこともあって、守護してる僕が吸血鬼領の様子を見てくることになったんだよね」

「は? お前ひとりで?」

「いや、後三人一緒に行く天使がいるらしいけど、正直面倒臭いんだよねぇ」

「たった四人で人外魔境に偵察に行くとか天使って阿保なのか?」

「そうは言っても、いざ戦争になるってなったら人数が少ない分後手後手に回らないといけないから敵情視察は必須なんだよね」


 吸血鬼も天使の攻略法を模索してたはずだから、この二年で何か見つけたんだろうか?

 天使側の戦力を全くと言って良いほど知らないから、何とも言えないけど、フェイレベルの強さの天使がぞろぞろいるんなら吸血鬼に勝ち目はないように思えるけど……。


「って言う事で、僕は明日から吸血鬼領に行くからその間村と教会のことお願いね」

「そういう大切なことはさぁ、もっと早く言ってくれない!?」

「ごめんごめん、早く言わなきゃって思ってたんだけど、今の今まで忘れてた」

「もうお前がそういうやつだってことは分かってるからいいんだけどな!」

「帰ってくるのは早くて一月後になるかな。遅くなるとどれだけ拘束されるか分からないや」

「なんか天使もなかなかにブラックな労働なんだな」

「その点アベルは楽でいいよね。吸血鬼なのに無関係決め込んでゴロゴロしてるんだから」


 別に好きで無関係なわけじゃないんですけどね。

 向こうが俺なんていらないって言うんだからしょうがない。

 俺のせいじゃない。


「無茶して怪我すんなよ」

「心配してくれるんだ?」

「お前が帰ってこなかったら誰が俺に飯作るんだよ」

「アベルだって少しくらい料理できるようになったんだから僕がいなくも何とかなるでしょ」

「自分で作るのと誰かが作ったのを喰うのは違うだろ。何もしなくても飯が出てくる環境を手放したくないだけだわ……」

「こんな生活力の無い吸血鬼を一人にして置いたら僕が帰ってくる頃には教会がゴミだらけになってそうだね」


 さすがに片付けくらいできるっての。

 別に心配してるとかそんなんじゃ決してない。

 ただ、こいつ物事を一人で解決しようとする癖があるから、他のメンバーに迷惑をかけるんじゃないかって思ってだな……。


「……お別れ会する?」

「帰ってくんだからそんなもんいらねぇよ。その代わりさっさと帰ってきて美味い物作ってくれ」

「うん、わかった。とっておきを振舞うから楽しみに待っててよ」


 明日から敵地に向かうとは思えないほどにいつも通りの生活をしてその日は終わりを迎えた。

 フェイが信じられないくらい強いのは近くで見てきた俺が一番分かってる。

 だけど嫌な感じが胸の奥底でしているのを俺は薄々感じていた。


 フェイが朝早くから出発するのを見送ってから、俺はいつもと変わらない生活を送っていた。

 ただ、たった一人いないってだけで教会はいつもの何倍も広く感じて少し感傷的な気持ちになってしまった。






 フェイが吸血鬼領の偵察に行ってから何日経っただろう。

 惰性で生きていたせいで曜日感覚なんかがおかしくなってる。

 適当に料理して、フェイの分まで用意して、それを次の飯に回す。

 そんな生活をしていると、珍しく教会に人が尋ねてきた。


「ごめんください……アベルさんはいらっしゃいますか?」


 教会の扉を押し開け入ってきたのはブロンドの髪で法衣を身にまとった女だった。

 法衣を着てるってことは教会の関係者か……。

 確か教会関係者って天使しかいなかったはずだからこいつも天使なのか?


「……俺がアベルだけど」


 少し警戒しながらそう返すと、女は手に持っていた紙と俺を見比べてからうなずいた。


「ご本人様ですね。(わたくし)フェイ天使長様の補佐をしておりますアルマと申します」

「あー、ご丁寧にどうも。さっきも名乗ったけど、居候のアベルです」


 ちょっと待て。

 俺の自己紹介もひどいもんだけど、それよりなんか聞き捨てならない単語が聞こえてきたんだが?

 フェイ()使()()ってなんだ。

 あいつそんな役職についてるとか一回も言ってなかっただろ……。

 その補佐がこんなところまで何しに来たのかもわからんけど、天使長がインパクト強すぎて全然考えがまとまらない。


「今回私がこちらに来たのはフェイ様から言伝を頼まれているからです」

「……わざわざありがとうございます」

「現在吸血鬼との戦闘が激化しており、フェイ様は前線を離れることができない状況です。ご存じかもしれませんが、当初フェイ様は偵察の予定で吸血鬼領に向かわれました。しかしそこではもうすでに吸血鬼たちが戦力を整え進軍してきている最中でした」

「なるほど」


 ……吸血鬼にそんな徒党を組んで攻めるなんていう考えはなかったはずなんだが、この二年で何か変化があったんだろうか?

 親父がなにかしたのか、それとも別の何かがあるのか。


「こちらの領地に侵入させる訳にはいかないとフェイ様と三人の天使達で吸血鬼の足止めをしています。そこで本題の言伝になるわけですが、『もう少し遅くなりそうだから待ってて。僕がいないからってゴロゴロしてないでよ』とのことです」

「あー……」

「それでは私は前線に戻らなければならないのでこれで失礼します」

「わざわざありがとうございました。俺からもフェイに伝言いいですか?」

「大丈夫ですよ」

「『早く帰ってこないと俺の方が美味いもん作れるようになっちまうぞ』って言っといてください」

「かしこまりました。それでは失礼します」


 丁寧に頭を下げてからアルマさんは教会を後にした。

 それにしても嫌な予感ってのはどうしてこうも当たるんだろうか……。

 フェイのことだから何事もなくひょっこり帰ってきそうなものだけど、それでも少しだけ――ほんの少しだけ心配だ。


「……俺に力があればな」


 ほかの吸血鬼が持ってるものをどれかひとつでも俺も持っていれば。

 他者を圧倒する力があれば、障害になる存在を粉砕することができるのに……。

 空を自由に飛び回る羽があれば、今すぐにでもフェイの元に飛んでいってやれるのに……。


 ちょっとした怪我をした時、フェイは毎回俺に血を飲むか聞いてきた。

 俺はその度にまだ必要じゃないって断ってきたけどその選択は本当に正解だったんだろうか?

 いざこうして必要になった時にはもう遅いのに。


 今の俺はこうしてフェイの帰りを待つことしか出来ない……。

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