第5話:なれないことをすると必ず失敗する……ソースは俺
ちょっと遅くなってしまいすみません。
無事投稿出来ました。
「アベル? おーい。起きてー?」
「んぁ?」
「やっと起きた? お風呂で寝るの危ないからやめなって言ってるのにどうしても寝ちゃうんだね」
「……んー。出る」
「待ってるから早くしてね」
どうやら俺は寝ていたらしい。
湯船浸かってると異様に眠くなる時あるんだよな。
特に今日は1日中薪割ってて疲れてるし……。
軽くシャワーで体を流してから俺は風呂を出た。
身体を拭いてからパジャマに着替えると、フェイの待つリビングに向かった。
若干のぼせ気味ってのと寝起きってので俺はふらふらしながら部屋に歩いた。
何とか無事たどり着くと、部屋の中からはめちゃくちゃいい匂いがして、一気にさっきまでの眠気は消し飛んだ。
「ビーフシチューか」
「今日は頑張ってくれたからね、アベルの好きな物を作ったよ」
「もうちょっと手伝ってくれれば楽に終われたんだけどな」
「僕はアベルのためを思ってあえて手伝わなかったんだよ。ほら、ライオンの親は我が子を崖下に突き落とすって言うでしょ? 僕も同じ感じ」
「なら明日はお前のことを崖から突き落としてやるよ」
「別に僕は飛べるからいいけどね」
「その翼って鳥の翼みたいに焼いたら食えたりしない?」
「よく本人にそんなこと言えるよね」
なんて馬鹿な話をしながら俺たちはビーフシチューを食べ始める。
ここの所ずっとフェイの料理ばかり食べてたせいで、だんだんこいつの料理じゃないと満足できない体にされてきてる気がする。
餌付けというかなんというか。
もうすでにフェイのいない生活とか考えられないもんな……。
「どう?」
「相変わらず美味い」
「ならよかった」
分かり切ってることを毎回必ず聞いてくる。
最初のころはつらつらと言葉を並べて料理をほめてたけど、俺のボキャブラリーが貧弱なのと、そんな大した言葉はいらないってことに気づいてからは一言「美味い」と伝えるようにしてる。
「隠し味にあるものを入れてるんだけど、何かわかる?」
「あー? ビーフシチューだろ? ……分かんねぇけど牛乳とか?」
「不正解ー。 これがわからないと僕を理解できてるとは言えないね」
「わかった。絶対ロクなもんじゃないだろ」
「なんでそんなこと言うのさ」
フェイは頬を膨らませて不満そうな顔で俺を見る。
そんな顔でこっち見られても困るんだが、今までのお前の行動を振り返ってみてみろよ。
俺と同じこと言うぞ。
「お前のこと理解してるからこんな答えになったんだけど」
「正解は愛情でしたー!」
「じゃあ俺正解じゃん。ロクなもんじゃなかっただろ?」
「そんなこと言うと次から愛情入れないよ?」
「なんでそんな脅しみたいな言い方してんの? 別に入らなくてもいいだろ」
「あーあ、味気ないご飯になっちゃうな」
「味噌なしの味噌汁とか出してきそうで怖いんだけど……」
フェイはそれには答えずに、不敵な笑みを残してキッチンに向かった。
それから「どっちがいい?」と聞きながらふたつのケーキを持ってきた。
イチゴのショートとチョコの二種類で、フェイの視線はチョコの方に注がれていた。
俺はそんなフェイに苦笑しながらも、イチゴショートを選んだ。
「なんでケーキなんてあんの?」
「アベルがお風呂に入ってる間に村長さんが持ってきてくれたんだよ。畑でとれた新鮮な野菜と、ケーキをくれたんだ。奥さんの手作りらしいよ」
「へぇ……。器用なもんだな」
お菓子作りなんて面倒なことよくしようと思うよな。
普通にメシ作れるのもすげーのにさらにはケーキまで作れるとかさては最強か?
人間マジ強い。
「僕もクッキーくらいなら作れるけど、ケーキとか手間のかかるものは大変だから作るの躊躇しちゃうんだよね」
「奥さん有能説が浮上してきたな」
「僕と奥さんどっちが有能だと思う?」
「なんですぐに比べたがるんだよ。奥さんだけど」
「もう明日から奥さんにご飯作ってもらいな」
素直にフェイって答えるのが気恥ずかしくて照れ隠しに奥さんって答えたら、フェイが拗ねてそんなことを言い出した。
「俺からしたらお前も十分すごいから……」
「……ん? 今なんて?」
「二度は言わないからな!」
「『俺からしたらお前も十分すごいから……』」
「聞こえてんじゃねぇか! そんでもってモノマネすんなよ!」
「か、かっこ……ふふっ、かっこいい……じゃん……ぶふっ!」
「うるせー!! 今後お前のことは絶対に褒めない!」
「あははっ、ごめんて……。もう笑わないから!」
「絶対褒めない! ぜっっっっったい言わないからな!!」
ちょっとかわいそうかと思って珍しく褒めたらこれだよ。
もう二度とこういうことはフェイには言わないと固く心に決めた。
羞恥で熱くなった顔を冷ますように俺はケーキを一気に頬張った。
ケーキの味も分からなくなってしまったのでもったいない気もしながらも、俺はさっさとケーキを食べて自分の部屋に閉じこもった。
「アベル! ちょっと聞きたいことがあるんだけど!」
ふて寝してからどのくらい経っただろうか?
外はまだ暗いからそんなに時間は経ってなさそうだけど……。
「……あんだよ」
「今すぐ村長さんの家に行ってくれる? 少し困ったことが起こってて」
正直まださっきのことを根に持ってるから断りたいところではある。
小さい男だと思われてもしょうがないが、まぁそれだけ俺の心が傷つけられたということで。
ただ、今のフェイにはいつものふざけた様子は一切なく、本当に切羽詰まったように呼んでいる。
いつものおふざけならそれでいいし、一旦村長の家に行ってみるか……。
「わかった。準備してからすぐ向かう」
「僕は先に村長さんの家に行ってるからね」
「あいよ」
さて、普段あれだけふざけ倒してるフェイがこんなにも焦るなんて一体何事なんだろうな。
俺は急いで支度をすると村長の家に向かった。
家を出ると、通常であればもう村の中は闇に包まれている時間帯にも関わらず、今日は至る所で火がたかれ、村中が煌々と輝いていた。
明らかな異常事態にさすがの俺も気を張り直してさっさと村長の家に入った。
「来たね……。もう村の様子を見て何かしら感づいてはいるかもしれないけど、今この村ではある問題が起こっている」
「俺が呼ばれたってことは何か力の必要なことなのか?」
「いや、その問題ってのが危険な獣が現れたってことなんだけど、現れたのが吸血鬼の領地の方かららしいんだよね。だからアベルなら何か知ってるんじゃないかって思って」
「獣だぁ? そんなもんそこら中にいるだろ」
「普通の獣なら僕もそこまで気にしないんだけどね、今回はそういうわけにもいかないんだよ」
「なんか普通じゃなかったのか」
「うん。見た目は二足歩行の狼なんだけど武器や防具を装備していたらしい。それも一体だけじゃなくて数体でまとまって行動していたとか……」
ふむ。
なんだそいつら、全く心当たりもないんだが……。
そもそもなんだよ二足歩行の狼って。狼は普通四足歩行だろうが!
似たような奴らなら俺も知ってるけど、聞いた情報と一致する部分が動物で二足歩行ってことくらいなんだが……。
「お前も知ってるかもしれないけど、亜人の中に獣人族ってのがいるだろ。そいつらは吸血鬼の領地に多くいたけど、俺が知ってる獣人の中にそんな武装してるやつらはいなかったぞ」
「侵略するにあたって装備した可能性は?」
「基本的に獣人ってのはその動物の特性が強化された存在なんだよ。狼の獣人も見たことがあるけど、あいつらは武装なんかしなくとも自前の爪や牙、毛皮なんかに守られてるから何も持たずとも戦えるんだ。むしろ武器や防具なんてつけてる方が動きにくくなるんじゃないか?」
「そっか、わかった。それじゃあこれからその獣を駆除しに行くからアベルも着いてきて」
「は?」
「もしアベルの知ってる獣人と何か関係がありそうなら話し合いもできるかなと思ってるんだけど。まぁもし違かったらその時は僕が責任をもって駆除するから安心してよ」
「うーん、そうだな。行くか」
獣人たちも人間同様吸血鬼に搾取される側だった。
そこから逃げ出して人間の国に来た獣人って可能性が全くないわけじゃないもんな。
もしそうならフェイに頼んで見逃してもらおう。
そうして俺たちは暗い森の中を狼の獣を探すために歩き回るのだった。
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