第3話:純粋吸血鬼と腹黒天使
「じゃあ食べ終わったわけだし、詳しい話を聞かせてもらおうかな」
「……わかった」
「と言ってもまずは軽い自己紹介からしよっか。あの時一回名乗ってるから覚えているかもしれないけど、僕の名前はフェイ。天使ってことで一応この教会で神父なんてやってるよ。村の人たちからは神父さんって呼ばれてるけど、フェイとでも好きに呼んでいいよ」
「俺はアベル。エンペリアルから来たんだけど、道中でゲッセルに襲われて、一回は逃げれたんだが、村の直前で追いつかれてそこからはフェイの知っての通りって感じ」
「アベルね、よろしく」
俺らは互いに名乗り合って現状の確認をした。
今まで大して気にしてなかったが、たしかにフェイは神父服っぽいものを着ているし、なんなら首にロザリオをかけていた。
ザ・神父って見た目をしていた。
「それで、俺が気を失ったあとどうなったんだ?」
「あの吸血鬼は殺したよ。どこかで生き返ってはいるだろうけど、あのくらいなら何度来ても負けることはないだろうしね」
「あのくらいって……あれでも吸血鬼としてはトップクラスに強いんだが」
「じゃあ思ったより吸血鬼って強くないんだね」
事も無げにそういうフェイに、俺は苦笑いを返す。
もし見栄でもなんでもなくそう思っていたんだとしたら、こいつだけは敵に回しちゃいけない存在なんだろうなと思った。
「それで、アベルはどこの街から連れ去られたの?」
「街? なんの事だ?」
「吸血鬼に攫われたんでしょ? それで何とか逃げ出したんじゃないの?」
「いや、俺も一応吸血鬼なんだが……」
「ははっ、笑えない冗談を言うねぇ? もし吸血鬼なら僕が気づかないはずないじゃん」
「いやいや、本当なんだって。証拠も見せようか?」
ほら、と俺が片翼を出すとフェイはギョッとした顔をして俺の羽まじまじと見つめてくる。
「これで信じたか?」
「うん……本当に吸血鬼だね」
「まぁ、俺は国を追い出されたから、元々の夢でもある人間との共存を叶えようかとここに来たんだけど」
「うーん……僕としては人を襲わないなら好きに暮らせばいいんじゃない? とは思うんだけど、周りの人に吸血鬼だってバレた時にどうなるかだよねぇ」
まぁ恐れられることは確実だよな。
俺がいくら危害を加えないと言ったところで信じて貰えないだろうし、村に吸血鬼を入れたってことでせっかく助けてくれたフェイに迷惑をかけることにもなりかねない。
「世話になったな。傷も治ったし俺はそろそろ別の場所に行くことにするわ」
「僕に気を使って出ていこうとしているならそんなことしなくてもいいんだよ?」
「……天使と吸血鬼が一緒に生活してるなんて知られたらお前も罰せられるんじゃないのか?」
「僕はね、吸血鬼の中にもいい奴はいるって信じてるんだよ。天使にだって悪人はいるんだから、そもそも吸血鬼が悪って決めつけてるのがおかしいと思うんだよね」
「変わった考え方してるな」
「よく言われる」
フェイは苦笑してからお茶を口に含んだ。
天使にも変わった奴がいるんだな、なんて思いながらも少しシンパシーを感じていた。
俺も城に居たころは周りのやつらに変わり者ってバカにされてたし。
まぁ、吸血鬼の中で人間と仲良くしようとしてるやつなんて俺以外いなかったしな。
「こんな考え方してたせいかな、僕って友達いないんだよね」
「だと思った。でも、俺も少ないから安心しろよ」
「何の慰めにもなってない言葉をありがとう」
なんかこう考えると俺とフェイって意外と似た者同士なのかもしれないな。
本来なら敵対してるはずの俺らが一番相性がいいってのもおかしな話だけど……。
「……ねぇアベル。ここで僕と暮らさない?」
そんなことを考えていたからだろうか、俺は一瞬フェイが何を言ったのか理解できなかった。
まさかフェイの方からそんなこと言われるとは思ってもみなかったから。
それでも優し気な顔をして俺を見つめるこいつを見てたら、俺ばっかり気を遣うのも馬鹿らしくなって気付けば俺はうなずいていたのだった。
――どうしてこうなった。
教会でフェイと暮らすことを決めて数時間後の現在、俺は村の中心にある少し高いところに一人立たされていた。
「今日から僕のところで一緒に暮らすことになったアベルだよ。あまり生活力がなさそうだから困ってたら助けてあげてね」
眼下に群がる村民たちにフェイがそう説明しているが俺自身は好奇の視線にさらされ、気分は過去にあった魔女狩りの魔女と同じ気分だ。
あいつら人間を滅ぼして亜人の過ごしやすい世界を創るとかほざいてたから吸血鬼が率先して駆逐してたんだよな。
魔女は悪い奴じゃないとか言ってるやつらもいたけど少なくとも俺が見てきた魔女たちは最低最悪な奴らしかいなかった。
もしかして今俺が吸血鬼ってバレたら現代版魔女狩り始まっちゃう?
張り付けにされて焼かれるの?
「えらいイケメンさんだなぁ……」
「まだ若いに、神父様のお世話になるってことは何か事情があるんかね?」
「そんならわしらも力になってやらんと!」
びくびくしながらことの成り行きを見守っていると、人々のそんな声が聞こえてきた。
農村特有の親切さというか、外界の者に対する警戒心の薄さというか……。
六割くらいの人たちには受け居られているっぽいな。
残りは無関心二割、警戒二割って感じか。
まぁ半数以上に好意的に受け取ってもらえてれば今のところは大丈夫だろう。
警戒してる人たちもまさか俺が吸血鬼だとは思ってもいないだろうし、ただ外の人間が信じられないってだけで、これからの俺の行動次第で受け入れてもらえるだろう。
「じゃあこれでアベルの紹介はおしまい。急に集まってもらっちゃってごめんね」
「いえいえ、新しい住民が増えるのは喜ばしい事ですからな!」
「そう言ってもらえるとありがたいよ。細くて弱そうに見えるけど、ああ見えてアベルはそこそこ力持ちだから何か困ったことがあったら頼めばいいよ」
やってくれるよね? というようにフェイがこっちを見てくるので、俺は内心面倒くさいなと思いながらも「任せてくれ」と言った。
「それじゃあ行こうか」
フェイがそう言って教会の方に歩いていくので、俺はそそくさと高台から飛び降りて後を追った。
困りごとを聞いてくれってのも俺が少しでも早く村民の信頼を勝ち取れるようにってフェイが考えて言ってくれたと思えば少しは頑張ろうという気も沸いてくる。
まぁ、実際のところこいつがそんなことを考えているかと言われれば首をひねらざるを得ないけど……。
「……これで僕の仕事が少なくなるよ」
「…………」
そんなことだろうと思ってたけどな!!
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