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第15話:親と子【上】

前回から随分期間が空いてしまい申し訳ございません。

私生活が忙しく危うく失踪間近でしたが、本日より再開できると思います。

今後ともよろしくお願い致します。

 順調に吸血鬼たちを捕獲していって、現状三十人目を縛ったところだ。

 途中何人かフェイの向かった方から吸血鬼が飛んできたからあいつはあいつでやりたい放題やってんだと思う。


「オラァ!」


 目についた吸血鬼をまた一人ぶっ飛ばしたところで、遠くに倒れた吸血鬼の山を見つけた。

 そのうえではフェイが俺の様子を見ていた。

 どうやら向こうはもう全員終わったらしい。

 俺も結構ハイペースで片づけてきたつもりだったが、やっぱり力の使い方に慣れてる分向こうの方が今は効率よく倒せんのかね。

 ま、今は競えるような相手がいるからな、この百年なんてあっという間に超えるくらい成長できるだろうさ。


「随分早かったな」

「うん。そっちも今のが最後かな」

「もしかしたらまだいるかもしれないけどな」

「いても僕らならどうとでもなるでしょ」

「それもそうだ」


 そんじゃ、さっさと親父に会いに行こうかね。

 向こうもまさか久しぶりの親子の再会がこんな形になるなんて思ってもみなかっただろうよ。

 ……っと、そういえばゲッセルの姿が見えないけどあいつはどこに行ったんだろうか?

 まさか城の倒壊で一緒に潰れたなんてことあるわけないだろうし、親父と一緒にいるのか、もしくは別の場所にいるかのどっちかだろうな。

 あいつにも随分とお世話になったからな、一言くらい言っておかないと気が済まないんだが。


「さっさと行って終わらせるか……」

「うん。……終わりってよりかは始まりって感じだけど」

「あ? なんか言ったか?」

「これから大変だなって言ったの」

「あー、けどまぁ何とかなるだろ。俺とお前なら」

「ふっ……そうだね」

「頼りにしてるぜ――相棒」


 瓦礫の山を登っていまだ形を保ったままの玉座の間へ向かう。

 扉は変形してまともな方法では開かなそうな雰囲気だったから思いっきりけ破って中に入った。

 赤いカーペットの先を見れば、幅の大きな階段、上り切ったところにある玉座には親父が座っておりこちらを見下ろしていた。


「よォ、久しぶり。相変わらず元気そうだな」

「……この騒ぎはお前が原因か」

「そうだな」

「目的は復讐か?」

「いや? 追放される前からずっと言ってたけどな、俺はこの国……吸血鬼の考え方が大嫌いなんだ。ただ死なねぇってだけで自分たちが偉いと勘違いしてるこの種族がな」

「フン、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。死を超越した我ら吸血鬼は神にも等しい存在。その他の下等生物をどう扱おうと我らの自由であろう」

「そういう考えが嫌いなんだっつの。確かに俺ら吸血鬼はその再生能力のおかげで死という概念が存在しない。その羽で大空をはばたくこともできる。人間よりも力が強く、自前の爪は強力な武器だ」

「それがわかっていながらなぜ人間の味方をする?」

「吸血鬼が誰よりも優れてるなんて考え自体が間違ってんだよ。唯一のとりえなんてその再生力くらいで、力だったら獣人に俺らよりも強い奴らはいくらでもいるし、空を飛ぶことも可能な種族はいる。繁殖力では散々見下して来た人間に劣る……しまいには吸血鬼絶対殺すマンの天使たちまで現れた」


 後足りなかったのはきっかけだけだったんだ。

 天使、人間、獣人たちが手を組めば吸血鬼は決して恐れるほどの存在じゃない。

 今はまだ虐げられ続けたせいでそれをする気力がないだけ。

 勇気ある者が声を上げれば、それに賛同する者たちが現れる。

 何年、何十年先には今まで抑え続け出来た反動が帰ってくる。


「正直言ってもう詰んでると思うけどな」

「弱者が何人集まろうとも吸血鬼には勝てぬ。刺され、切られれば死ぬ。死という枷を背負っている時点で他の生物が我らに勝つことは不可能だ」


 親父はそう言って玉座から立ち上がった。


「いくら話しても考えは変わらなさそうだな」

「もう説得は諦めるの?」

「あぁ。バカは死んでも直らないっていうが、そもそも死なないやつらに何言っても仕方なかったんだろうな」


 気を使って今まで黙っていたフェイにそう答えると、俺は翼を広げ、闇剣を出現させた。

 お前が弱者だと切り捨てた存在はもういないと。

 ここにいるのはお前に対抗しうる存在だと、そう見せつけるように大きく翼を広げた。

 漆黒の羽が舞い落ちる。


「お前、その姿は……」

「親父の理論で言うと、今俺は誰よりも偉いことになるんだが……そこんとこどうなんだ?」

「ふっ……あっはっはっは!!」

「あ? ついに頭でもおかしくなったか?」

「そうか、お前が適合したか!」

「適合だ? 何言ってんだ――」

「アベル。天使の血を吸って無事だったのはお前だけだ。どの吸血鬼も天使の力と反発し合い、再生力が著しく低下し、崩壊した」

「なんだと?」

「いくら実験を繰り返そうとも天使の血に適合した吸血鬼はいなかったんだよ」


 嘘だろ?

 何の気なしに試しに吸ってみただけなんだが、まさかそんな危険をはらんでいたとは……。

 もしかしたら俺も崩壊してた可能性あんの?

 なんだそれもっと早く言っとけよほんとにさぁ!


「ふむ、やはり器の問題だったのか。天使の力を受け入れるだけのスペースが普通の吸血鬼にはなかったと言う事か……面白い。アベルよ、お前の力を見せて見ろ!」

「――ッ!!」


 親父は言うなり凄まじい速度で俺に迫ってきた。

 ノーモーションで繰り出される攻撃に反応しきれなかった俺は腕に爪をかすらせたが、ぎりぎりで回避することができた。


「アベル!」


 すぐにフェイも光剣を出して親父に反撃するが、親父はフェイの方を一瞥もすることなく余裕そうにあしらう。

 フェイも光剣を至る所に創り出し、立体的な動きで攻撃を当てようとするが、そのことごとくを防ぎ切った。


「反射速度はまぁまぁだな。次は攻撃面だが……しかしその前に、いい加減鬱陶しい。別のものと遊んでいろ」

「――くッ!!」


 親父はそう言うとフェイに向かって横なぎの攻撃をする。

 光剣でそれを受けたフェイは壁を突き破って吹き飛ばされてしまった。


「フェイッ!」

「さて、邪魔者はいなくなったな。それではその剣で私に攻撃してみろ」


 親父は両手を広げ、そう言ったのだった。

Twitterにて初めてファンアート?なるものを頂きました!

描いて下さった方は@tane_hanashi_No様です。

フェイをいただいたんですが、自分の中の想像とドンピシャで同じだったのですごくテンション上がりました!

本当にありがとうございました!

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