第12話:急に力を持つと性格が悪くなるやつ
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復讐は何も生まない、なんて言葉が存在するが俺はそう思わない。
過去の鬱憤を晴らすことにもなるし、決別という意味では復讐も悪いものではないと思う。
少なくとも俺は復讐を悪だとは思っていないし、やめた方がいいなんてことも思わない。
相当なことでないと、人間って報復なんて考えても行動に移せないものらしいし、されるってことはそれだけ相手に問題があるってことだろう。
「と言う事で、吸血鬼どもを一匹残らず駆逐したいと思います」
「何が『と言う事で』なのか分からないけど、いきなりどうしたの……?」
「いや、こうしていざ力を手に入れて見ると、あんなにひどい扱い受けてたのが腹立たしく感じてきてさ。いっそのことこの世界の膿にしかならない危険思想を持った吸血鬼たちは根絶やしにしたほうがいいのではないかって思って」
「どっちかって言うとこっちの方が危険思想だと思うけどね」
「うっせ。吸血鬼なんて生きてたって百害あって一利なしだろ」
「でもそれだとアベルも害あるってことにならない?」
「俺は実質半分天使みたいなところあるから例外ってことにしよう」
はい決定、吸血鬼は全員ぶっ飛ばす。
俺は四捨五入したら天使だから天使ってことで。
「全然話変わるんだけどさ、俺今まで生きてきてお前以外の天使って一人しかあったことないんだけど、他の奴らどこで何してんの?」
「天使もそんなに数が多くないしね、まぁそれぞれの管轄で人間を守ってるんじゃない? ここの村が僕の管轄であるようにそれぞれ守護すべき場所ってのが決められてるからさ」
天使ってそんなふうになってんのか……。
こいつの補佐とか言ってたアルマもどこかしら守るべき場所があんのかね?
「てことは俺らで吸血鬼の所に突貫してる間この村は誰も守るやつがいなくなるってことか?」
「そうなるねぇ……ま、ちょっと強めの結界でも張っておけば大丈夫じゃない? なんなら今回はアベルも使えるんだし」
「それもそうか、ってなるとあと何しないといけない?」
「行ってる間の僕らのご飯作らないと。そんなに時間をかけるつもりもないけど、万が一があるか分からないからね……日持ちするものでも準備しておくよ」
適当に吸血鬼ぶっ飛ばしてさっさと帰ってきたいしな。
ただ、フェイの言う万が一も無いとは言いきれないのも事実。
現にフェイは一度それで死んでるわけだしな……。
用心するに越したことはないだろうよ。
戦いになるかもわからんけど、戦いにおいては臆病になった方が強いとも聞いたことがある気がするしな。
俺のうろ覚えの知識だからあってるかわかんねぇけど。
「全部終わったら改めて村人たちに挨拶しようか。半分くらいは僕の知らない人達だからね」
「おう、そうしてやれよ。お前のこと覚えてる奴らもずっとお前のこと気にかけてたんだからな」
「……本当にここはいい所だよね」
「そうだな」
最初にここにたどり着いた時は小さい村だ、なんて思いもしたけど、人口の少ない分大きな町より横との繋がりが強い。
困ったことがあれば村総出で手伝うことも平気であったし、祭りごとなんて言ったら参加しないのは病人くらいなもんだった。
人間と比べれば老いるのが遅く、いつまで経っても外見の変わらないことで、少なくとも俺の事を知ってる村人には俺が人間でないことくらいバレているだろう。
それでも俺がこの村に居続けることが出来たのは、一重に村人の優しさに寄るところが大きい。
「“僕達で守らないと”って言うほど村人たちは弱くは無いのかもしれないね」
「……人間は団結力と繁殖力がバケモンみたいに優れてるからな。統率の取れた集団ほど厄介なもんもそう無いだろうよ」
「実際僕がいなかった百年間、何事もなく発展出来てるわけだしね」
「初めは守られてるのも仕方ないとはいえ、いつかは人間も天使の元から飛び立つ時が来んのかもしれねぇな。それがもしかしたら俺らで吸血鬼をボコボコにした時なのかもしれんし」
時代は変わる。
俺たちみたいな長寿な種族は川のように流れる時代に追いついて行かないといけないんだよ。
天使っていう天敵が現れても尚、世界の頂点に君臨し続けている気でいる吸血鬼共と同じにならないためにはな。
「それもこれも全部吸血鬼をどうにかしてからかな」
「あぁ、俺もいい加減『人間と吸血鬼の共存』なんて机上の空論だって気づいた。これまで一方的に搾取され続けた人間がなんの不満も抱いていないわけもないし、無駄にプライドの高い吸血鬼がそんなもの賛成するわけもない」
「一度徹底的にわからせた方がいいかもね。本当の捕食者がどっちなのかをさ」
「あの凝り固まった選民思想をプライド諸共粉々に粉砕してやる」
散々バカにしてきた俺にボロ雑巾のようにやられた時、プライドだけは高いあいつらは一体どんな顔をするんだろうな?
憤怒に顔を染めるのか、それとも強者と分かって媚びるのか……。
まぁどうなるにせよ今から楽しみだ。
俺もフェイも準備は比較的直ぐに終わった。
元々持っていくものと言えば食料と我が身くらいで、大して準備するものもなかった。
「早速行くか」
「忘れ物はない? ハンカチ持った?」
「遠足行くわけじゃねぇんだから……」
「でも何があるか分からないでしょ?」
「いや、まぁ……それはそうなんだけどさ……」
釈然としないながらも、言われた通りハンカチをポケットに詰め込む。
「折り畳み傘とか要らない?」
「それは絶対いらねぇだろ」
「そう? でも何があるか――」
「あー、もう!! わざとふざけてるだろお前!」
「いや、そんなことは無いけどね?」
「ならなんで目逸らすんだよ、俺の目見て言ってみろよオラ」
「そ、ソンナコトナイヨ」
「…………」
「うわぶっ!」
なんか無性に腹が立ったから軽めに一発顔面を殴ったらオーバーリアクションも甚だしく吹き飛んで行った。
どこで見つけてきたのかわざわざ血糊まで口から垂らして俺の方に手を伸ばしてくる。
「あ、アベル……僕はもうダメだ……。ここから先は一人で行くんだ、死んで行った仲間の意志を受け継いで……!」
「……おう、任せとけ」
「あ、そこは『へっ、俺はアイツらのことを仲間だと思ったことは一度もないね!』って言いながら死にかけの僕にナイフを刺すシーンだから」
「この上なくクズだな! ていうかなんだシーンって!」
「茶番はこのくらいにしておいてそろそろ行こうか」
「全部お前から始めてきたんだけど……何こいつ怖いんだが?」
フェイが指を鳴らすと、べっとりとついていた血糊は綺麗さっぱりなくなっており、何事も無かったかのように立ち上がっていた。
何がとは言わないけど、次は本気で殴ろうとそう決意したね。
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