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第11話:フェイの実力

「アベルも相当強くなったらしいし、そろそろ僕たちも攻勢に出るべきかもね」

「そうだな。今のままじゃ人間が安心して住める場所が少なすぎる。そもそもお前が殺された時点でもう守りに徹する気もないしな」


 これまで力がなかったからあいつらに何をされてもやり返してこなかった。

 それに今までのことをあれこれ言っても意味がないと思ったから仕返しなんてこと考えずに生活していたが、俺の身内が傷つけられてまで黙っててやる義理はない。

 人間に味方する吸血鬼が現状俺以外いない以上あの国にいる吸血鬼は皆殺しにしても何ら問題はないような気もする。


「僕たちだけで行ってどうにかなると思う?」

「愚問だな。俺とお前で組んで負ける道理はないだろ?」

「ふっ、それもそっか……ならいっそのこと僕たちだけで行っちゃう?」

「数の暴力なんて話にならないくらいの圧倒的な力でぶっ潰そうぜ」

「なんか僕のいない間に随分暴力的になっちゃったね」

「もともと俺はこんな性格だったろ。この村にきたての頃は村人と仲良くなるために猫かぶってたんだよ」

「そういえば初めて会った時も結構口が悪かった気が……」


 あー、ゲッセルに襲われてた時のことか。

 確かにあの時は結構ゲッセルのことを煽り散らかしてた記憶があるような無いような。


「まぁそんなことはどうだっていいだろ? お前も復活したてでまだ本調子でもないだろうし、少し体を慣らしてかないとな」

「あ、じゃあ成長したっていうアベルの実力でも確かめてみようかな」

「そんなこと言ってぼこぼこにされても文句言うなよ?」

「僕の力をたった百年使っただけでもう使いこなした気でいるの? 光剣の真の力を見せてあげるよ」


 今の俺がフェイ相手にどのくらい戦えるのか楽しみだな。






 そしてやってきました、教会の裏庭です。

 大分前までは結構な量の植物が育てられていたが、俺一人になってそんなに育てる必要もなくなってしまったせいで畑は大分収縮してしまった。

 こんな状態の畑をフェイに見られたら何を言われるかわかったもんじゃないな、なんて考えいたのにそんなことすっかり忘れてここに連れてきてしまった。


「なに、これ……?」

「あー……えっとですね……」

「僕の育ててた野菜たちは? 畑がこんなにぼこぼこなのはなんで?」

「そのですね、俺一人だとこんな草そもそも食べないわけでして……放置してたら知らないうちに枯れてたからちょうどいい広さだったしお前の力の練習にって使ってたらこんなことになってました……」

「お前はさぁ……」


 いや、言い訳させてほしい。

 確かに畑を八割近く荒れ地にしたのは悪い気もする!

 だけど、そもそも野菜を喰わない俺が、一人になったときにこうなるのは予想できたことではないだろうか?

 つまり俺のことを放置して勝手に死んだフェイがすべて悪いということで……。


「そんな言い訳が通用すると思ってんの?」

「……もしかして口に出てた?」

「野菜を喰わない俺が~のあたりから全部声に出てたね」

「いやぁ、俺が全部悪いなぁって」

「今更遅いって……」


 なんだかんだ言いながらも、しょうがないなぁ、みたいな感じで許してくれるからこいつはチョロいと思う。

 すぐに詐欺とかに引っかかりそう。


「まぁそんなこと言っても畑が直るわけでもないから、早速やろうか」

「おう。お前の頭ぶち抜いてやるぜ」

「楽しみにしてるよ。今からコインを投げるからそれが地面に着いたら始めでいい?」

「ん、かかってこい」

「じゃあ行くよ」


 そう言ってフェイは真上にコインをはじいた。

 太陽の光を反射してきらきらと輝くコインを見ながら、俺は手の中に闇で出来た剣を創り出し、翼を出現させ最速で接近できるようにする。

 コインの落下と同時に翼をはためかせた推進力をそのまま地面を強く踏みしめた。


「――ッ!」


 反応できたのはほぼ奇跡に近いだろう。

 手に持った闇剣でフェイを切りつけようとしたその瞬間、俺の目の前にフェイの光剣が出現し俺を貫こうと迫ってきていた。

 すんでのところでよこに転がることで回避したが、気づくのが後一秒遅かったら頭から剣が生えるという流行を先取りしすぎたファッションをすることになるところだった。


「よく避けたじゃん」

「あっぶねぇな!! お前の剣だけ発生速度段違いじゃねぇか」

「そりゃあ僕のメインウェポンと言っても過言じゃないし、使うのにいちいち時間がかかってたら使い物にならなくない?」

「まぁいいさ、俺にはほかにも手があるんだから、なッ!」


 フェイと話しながら俺は闇剣を投擲する。

 しかし、それもフェイに届く前に光剣に弾かれて空を切る結果となった。


「じゃあ少しだけギアを上げるよ?」


 そう言うと、いきなり背後から光剣が三本飛んできた。

 風を切る音で接近に気付いた俺は、新たに闇剣を創り出すと一本を弾き、残りの二本は横に飛んで回避した。


「そっちばっかり気にしてていいの?」

「――クッソ!」


 光剣に気を取られていると、すぐそばまで迫っているフェイに気付くのが遅れてしまった。

 振りかぶった光剣を防ごうと闇剣を出すと、闇剣ごと俺の手まで切り飛ばされた。


「はぁ!?」

「うーん、見た目は再現できてるけど、まだ弱いかな。密度が低いっていうか、ちゃんと中まで詰まってない感じするよね」


 つまり俺の闇剣が打ち負けた理由は剣の密度の違いってことか。

 そもそも剣の密度とか今まで一度も考えたことなかったんだが……。

 もっと中身が詰まってるイメージでもすればいいのか?

 なんて考えているとフェイは今まで出していなかった翼を出現させると数回はばたいて見せる。


「調子も戻ってきたし、もうちょっと本気出そうかな」

「どうせ死なねぇし、どんとこい」

「じゃあ遠慮なく」


 瞬間、衝撃が俺の腹を襲った。

 見えない速度で近づかれ、殴られたのだと気付いたのは吹き飛ばされている最中だった。

 光剣で切らなかったのは俺に慈悲を与えてのことか、それともほかの理由があるのか。


「ぐはッ、はぁ、はぁ……ばっかじゃねぇの……? 今の俺でも見えないってどういうことだよ……」

「まだまだって事だね。これが見切れないうちは、僕と真正面から戦うのはやめた方がいいかもね」

「ほんと出鱈目な強さしてんのよな」


 吸血鬼の不死の力で、傷はもう完全に再生しているけど、これからどうすっか……。

 攻撃は見切れないし、俺の攻撃は通らない。

 唯一のアドバンテージと言えば、いくら傷を負っても絶対に死なないってことくらいだけど。


「よし、だいたい分かった」

「……あん?」

「戦う力は手に入れたけど、まだうまく使いこなせていないっていうのがアベルの現状だね。そこに関しては僕が教えられるからどうとでもなるけど」

「もう終わるか?」

「うん。僕もなまった身体をほぐせたし、アベルの実力も確認できたから満足」

「若干俺は不完全燃焼感あるけど? まぁ今回はフェイの準備運動がメインだったからこのくらいにしといてやるよ」


 現状の実力に満足しているわけでもないから、今よりも強くなれるのならフェイに師事するのもやぶさかではないけどな?

 負け惜しみと言うことなかれ。

 さすがに百年修行して手も足も出ないとは思わなかったんです。

 次はせめて膝に土をつけるくらいはしてやりたいところだ。

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