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出席番号一番 渡辺真理

作者: 山目 広介

 幼い頃から出席番号順というものが嫌いだった。

 常に後ろから数えた方が早かったからだ。

 「わ」から始まるし、名前も「ま」からだから遅い。

 だから出席番号が一番というものに憧れていた。

 それが心の準備もできないということも知らずに……。




 それは大学の最初のクラスの説明のときだった。

 理学部の生物。女性が多めだろう。

 時間が余ったというので自己紹介をすることになる。

 そして知った。このクラス、「わ」行の苗字しかいないということに!?


「出席番号一番 渡辺真理さん。自己紹介お願いね」


 いきなり伝えられて頭が混乱を来した。

 いつもであれば前に手本となる人が(私の心が)腐るほどいたのに、今はいない。

 自己紹介で前の人と被らないような工夫をしたりして時間を過ごしていたにもかかわらず、いざ、自分が最初に発言できる状況になって好きに話せるのに、何を言えばいいのか分からない。


「あ、えっと、渡辺真理です。いつもは出席番号が最後の方なので、いきなり自分の番で戸惑ってます。よ、よろしくお願いします」


 頭真っ白なため、現状をそのまま報告し、ぶちぎった。


 渡辺わたなべが続く。美紅みく萌衣めいめぐみ桃香ももか里香りか留美るみれい麗華れいか、と8名。私を含めれば9名だ。

 渡部わたべ綿山わたやま渡会わたらいわたり和町わちょう和鶴わつる、ワトソン、……。

 ちょっと待て。日本人じゃないのが混じっているだと!?

 途中からちょっとホントにいるのか、怪しい苗字が出てきたけども。


 罠部わなべ鰐口わにぐち和沼わぬま我然わねん輪之内わのうち和花わはな和場わば侘寂わびさび倭兵わひょう和風わふう和平わへい和睦わぼく和松わまつ和見わみ和霧わむ和山わやま和湯わゆ和世わよ藁敷わらしき割高わりだか悪者わるもの我等われら和露わろ


 絶対そんな名前の人いないよね。


 分目わんめさんが最後らしい。


「あり得んだろッ!」




 そこで目覚めた。自分のベッドの上だった。夢落ちだったか。

 昨日の入学式が初めてのスーツを着て、見知らぬ街、見知らぬ人々に囲まれて肩が凝ったのが、疲れた原因だろうか。

 朝食を食べて大学へと向かう。

 そこは夢とは違う場所で、夢とは違う性別の講師だった。

 あんな「わ」行が出席番号で一番になるなんて、あり得ないよね。


 説明などが終わった講師が時間が余ったので、自己紹介をしてもらいましょう、と述べた。

 まるで夢のような展開に嫌な汗が背筋を伝う。

 あり得ない、あり得ない、あり得ない。

 急な動機に悩まされ、呼吸が浅く、激しくなり、傍から見れば顔面が蒼白になっていることに気付くぐらいには異常を来していた。


「それでは出席番号一番の方。渡辺真理さん前へ……」



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