第8話 夏の寝言
「な、なにすんだよ!は、離れろよ!」
俺は千冬を無理矢理突き放そうと暴れたが、千冬は必死に抱きついたまま離れようとしない
千冬が強く抱きつくから胸があっていることに気づき俺は暴れるのをやめた
こ、こいつもしかして、ノー…
まずい!離れたいけど…どーすれば。
「ひっぐ。ひっぐ。なっちゃん!私なっちゃんと離れ離れになるの嫌だよー!ずっと今までなっちゃんと喋りたくて…、なっちゃんと一緒に歩きたくて…なっちゃんの側にいたかったのに…。なっちゃんがいない人生は私嫌だ!!お願いだから、私の側にいて…。前みたいに一緒に2人でいようよー!!」
千冬は泣きながら俺に言ってきた
「ち、千冬。とにかく一回離れてくれ…。」
千冬は鼻を啜りながら俺から少し離れてくれた
「俺も千冬と一緒にいたい気持ちもある。けど、俺と一緒にいたら千冬が孤立しちゃうだろ。だから今のままがお互いいいと思うんだ。」
「そんなの嫌だ!私が孤立しようと、変な噂が流れようと、なっちゃんと2人でいられればそれでいいの!なっちゃんはなにも分かってない!私が今までどれだけ悲しかったか…苦しかったか…。なっちゃんが痛い思いをしたら私も痛いの!!周りになんて言われようと私は本当の六条 夏を知っている!!なっちゃんは本当の一青 千冬を知っている!それでいいじゃない!!私は100人に好かれるより、なっちゃん1人に好かれる方がいい!!」
「ち、千冬…。」
「だから前みたいに一緒にいよう…。私がなっちゃんを守るから…。だからなっちゃんも私を守って…。お願い。」
「…。わかった。ほんとうにいままでごめん。」
「いいの。これからも今まで通りよろしくね!なっちゃん!!」
千冬は俺に飛び乗ってきた
だーかーらー…
まぁ…今日ぐらいいっか…
千冬の体が冷めないようにホットミルクを作り渡した
「ほらっ。あったかいうちに飲めよ。」
「…ありがと。」
「?。どうしたんだ?顔も合わせないで。」
「…。冷静になったら私大胆なことしすぎた…。それにノーブラだったし。下も…。」
!!!。し、下!!
「……。ま、まぁ、とりあえず落ち着いたら帰れよ。お前も受験控えてるんだから体大事にしないとな…」
「そういえば、なっちゃんってどこ受けるつもりなの?」
「俺は帝都シュレイト高校の魔法技術学科だ。」
「ええ!あの都内に新しくできた超名門の魔法学校!!??たしか、新設校でも相当高い偏差値って聞いたよ」
「あぁ。魔法はまだ世界では発展途中に過ぎない。けどいずれ優れた魔法使い達が日本を、いや…世界を左右するに違いないからね。今のうちに学んでおくのも有りだろ。」
「…じゃ、私もそこ行く…」
「…は?嘘だろ?いや、絶対無理だって!今から勉強して受験に間に合うのかよ!」
「なっちゃん。私が今学年で何番目か知らないでしょ?」
「知らない…けど。」
「へへーん。2番目だよ。」
「まじで?」
「まじで」
俺ですら必死に勉強して8番目なのにその上?
ありえない…。っていうか、このままじゃ俺の方が落ちそうじゃない?
まずい。まずすぎる!!
「わかった。千冬が受験するなら応援する。だが、それならライバルだ!負けないからな?」
「いいよ!やってやるんだから!明日から一緒に図書館いこーね!」
いや、だからライバルって…
まぁ、いいか…
「あぁ、よろしくな!」
そして、冬も明け、春
受験も終わり、俺と千冬は合格発表を見に来ていた
「なんでいちいち受験番号見に行くんだよ…。今時携帯で自宅で見れんだぞ?」
「いいじゃない!やっぱり自分の目で見ておきたいでしょ!」
「なら千冬だけで行けよ…。うぅー寒い」
「ほら!ついたよ!番号確認して!」
「まったく…。702…702…702……!!。あった!!あったぞ!!」
「ゔっぅ。ゔっぅ。」
「おい!どうした千冬!」
「724…あったあっだよぉぉーー!」
千冬は泣きながら俺に抱きついてきた
「おい、みんな見てるからやめろって…」
「よがぁったー!!これでまたなっちゃんと一緒にいられる!よかったよー!!」
「ハハハハ。やめろって千冬。お前は本当に泣き虫だな。…ハ…ハハ。千…冬…。や…めろって…千…冬…」
ボスゥッ
突如俺の頭に軽く衝撃があった
ん?
なんだ…
俺が上を向くとそこには電子書籍を持った先生が目の前に立っていた
「一青がどうしたんだ??首席のお前が授業中に居眠りとは…。いい度胸だ。次12ページ頭から六条!読め!」
「は、はい!!」
俺はどうやら昨日の疲れで寝てしまっていたようだ…
教科書を読みながら千冬の方を向くと、顔を赤らめて笑いを堪えている姿が見えた
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