第1話 始まりの夏
中二の夏
あの日は初夏を迎え、梅雨が始まり、ジメジメと肌に空気が引っ付く感覚があった
下校中に幼馴染の一青 千冬が傘をさして、俺を追いかけて来た
「なっちゃん、待ってよー!」
「千冬の掃除が長いのがいけないんだぞ。」
「もー。すぐそうやって言ってー。男は寛大な心を持った方がモテるんだぞっ!!」
「どーせ俺は非モテですよー。」
下校途中のたわいもない会話の中
地面が縦に大きく動き、突如として大きな地震が起きた
「!!!。地震?。大きくない?」
「大きいな。車道側に寄ろう。建物が落ちて来たら大変だ。」
すると、俺の体から眩い光が放たれた
「な、なんだこれ!!」
「な、なっちゃん?なんで光ってるの!何これ!!」
そして、俺は光と共に姿を消した。
同時に、日本の約800万人の10代、男女が光に包まれ俺と同じ様に姿を消していった
光が消え、目を開けると
目の前には、自称神を名乗る女がいた
その女が言うには、異世界に転移して、魔王討伐をしてほしいと頼み込まれた
俺は仕方なく了承し、異世界に行った
スキルを獲得し、勇者パーティーに入り、なんだかんだで魔王を討伐することが出来た
そして、討伐と同時に、光に包まれ
現実世界へと帰還した。
そして、時は進み
高校1年の春
「…ちゃん。…なっちゃん!」
「…ん?呼んだか?」
「さっきからずっと呼んでるわよ!もぉー。すぐそうやってボケーっと外の景色ばかり見て!側から見たら死んでるみたいよ!まったく。」
「あーごめんごめん。」
「あなたの名前はなんですか??」
「また、それか…。六条 夏だよ。」
夏は毎度お馴染みな質問に呆れて答えた
「うん。よろしい!次!体育だからグラウンドに移動よ!ほらっ!」
俺は千冬に背中を押されながら無理矢理連れて行かれた
俺が異世界で魔王討伐を完了し、現実世界へと帰還すると、驚くべき状況へと変わっていた
全世界に大きな地震と共にダンジョンが現れたのだ
そして、そこから世界の政治や観点、主義などは一変した
ダンジョン発生時は国が侵入を禁止し、自衛隊の派遣や世界各国同時対談が起こった
ダンジョン内で取れるアイテムは、どれも現代科学を超越した物ばかりで、産業、林業、水産業のどれも改革が進み
時代は短いスパンで化学時代から魔法時代へと一変していった
そして、異世界転移から帰還した俺はと言うと
突如光が放たれ姿を消したかと思うと、10分後にはそこに戻っていたのだ
異世界生活は5年はあったと思ったが、こちらの時間軸とはかけ離れていたようだ
その場で泣きじゃくっていた千冬と一緒に家に帰り、現状起こっていることを知り、そのまま時間が流れた
中学を卒業した俺は、都内屈指の名門【都立 帝都シュレイト高校 魔法技科】に入学した
この高校はダンジョンが現れてから出来た新校で、現代日本における最先端の高校と言っていい
学科は3つに分かれていて
【魔法技術学科】
【魔法機械学科】
【魔法一般学科】
となっている
「よーし。じゃ、体育の時間を始めるぞ!今日は100m走だ!ただし!!今回はスキルと魔導武具を使用してやってもらうからな!」
「やっふぉーー!!」
「スキルも使っていいなんて先生太っ腹ー!」
「魔導武具かぁー。」
「ちなみに魔導武具は学校専用の物だ。個人の物は使用しない様に!…じゃ、転移組みと一般組に分かれてくれ!」
転移組とは俺と同じで異世界転移したやつらのことの名所だ
転移組は独自のスキルを持っているのが特徴で、一般組は国から支給された魔核輪で各自に合った擬似スキルをもっている。
魔核輪はありふれたスキルだが、転移組のスキルとほぼ遜色は無い
ちなみに、魔導武具は身体を強化するものも有れば、魔法が打てる物もあり、剣や銃もある
「よーし。分かれたな!2人1組で走ってもらうからな。」
さて、俺は5番目か。
スキル使用って言っても、俺のスキルはこうゆうのには向いていないんだよな
「俺のペアは…。…たしか六条君だよね?よろしくな!」
クラスメイトが夏に向かって言った
「…あ、あぁ。…えーっと。」
「なんだよ!名前くらい覚えといてくれよ!俺の名前は猫頭 喜絃だよ。改めてよろしくな!」
「ああ!猫頭ね。よろしく。」
先生の掛け声と共に100m走が始まった
「そういえば六条君のスキルはなんだい?」
「あー俺のスキルか。【第六感】だよ。」
「第六感?聞いたこともないな。名前から推測するに、感が鋭くなるって感じかな?」
「…まぁ、そんなところだ。猫頭は?」
「俺は【猫化】だ!そのまんまで猫化できるってやつ!」
「それは、使い勝手がよさそうだな」
そんな話をしていると夏たちの番が回って来た
「スキル【猫化】!」
猫頭の金髪の髪が逆立った
そして、魔導武具であるシューズに魔力が行き渡った
読んで字のごとくか…
俺は魔導武具だけでやるしかないな。
スタートの合図とともに夏達はスタートした
猫頭はスタートと同時に砂埃を立てて爆走し走り切り
夏はというと、それに置いていかれる様に後方を走り切った
「猫頭!6.54」
「六条!12.65」
「…50m走か!」
思わずツッコんでしまった…
五輪があったら間違いなく入賞だな…
「はぁー。早くダンジョンに行きたいな…」
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