第12話 夏と実技試験
俺と千冬は国役所の奥にある、探求者試験実地会場閲覧席に座った
試験会場には沢山の人が探求者になろうと集まっていた
「探求者になるには、3時間の学科講習を受けることと、実技試験があるけど、これはまた人が多いな。」
「最近では老若男女沢山の人が探求者になる為に試験を受けに来てるってニュースで見たわよ」
「まぁ、確かに簡単に金を稼げて、税金も免除なんて夢の職業だからな。たが、あくまでもモンスターを倒したらだ。死と隣り合わせの職業ってことは忘れてはいけない。」
「そうね。ダンジョンが一般公開された時は今よりももっと多くの人が探求者になったけど、比例して死者数も上がったわよね」
「俺が探求者になった時は学科だけだったが、今は実技試験までついてる。それだけ国も死者数の増加に目をつぶれなくなったってことだ。まぁ、生半可な奴がなって人口が減る方が国としては痛いからな。」
「そろそろ始まりそうね!」
「あぁ。試験官は…。へぇー。これは厳しいかもな。」
俺は有名な探求者や、実力のある探求者は一応頭に入れている
今の時代ネットを使えば好きな探求者ランキングやらカッコいい探求者ランキングなど出てくるからな。
あの試験官はランキングなど有名でもなんでもないが、経歴がとんでもないので俺は知っている
「厳しいって?」
「見てればわかるよ」
実技試験の内容はもっとも簡単で単純である
モンスターの魔核の代わりに試験官が身につけている的を時間内に攻撃して当てればいいだけだ
もちろん、国役所から支給された魔導武具やスキル、魔法を使用するのはアリだ。
形式は1対1
時間は2分間
これがもし本物の魔物相手だとしたら2分間戦って勝てない場合は逃げるのが得策だ
よく考えられてるな…
実技試験に参加している人数は57人
その内20人が脱落していった
試験官に触れることすら出来ずに
「な、なにあの動き!Bランク探求者でも攻撃をあてるのは難しいわよ!」
「あの試験官の名前は谷原 茂国だ。元陸上自衛隊二等陸曹だ。あいつはまだダンジョンが現れて間もない頃に自衛隊としてAランクダンジョンに入って誰一人として欠けることなく帰還した。当時25歳で転移組だそうだ。スキルまでは知らないがな」
「自衛隊…。そんなの試験でありなの?」
「アリだから今あそこにいるんだろ。まぁ、遊び半分で来たやつにはちょうどいい試練だろ。それに試験官は丸腰だ、そんなのに勝てないんじゃこの先の未来はないだろうな。」
試験を受けに来た連中が1人、また1人と次々に試験に落ちていった
これで…計34人の脱落か
やはり元自衛隊だけあって身のこなしはピカイチだな
「こんなに強い試験官相手に一恵達大丈夫かしら…。むしろ試験がこんなにレベルが高いなら探求者試験を受けてるクラスのみんなも危ういんじゃない?」
「いや、大丈夫だろ。曲がりなりにも魔法学校に通ってるんだ。それぞれ自分のスキルや魔法武具は使い慣れてるはずだからな。相手が格上でもしっかり手を抜いて合格はできるように振る舞ってるから、問題はないはずだ。それよりも、次は梵さんの番だぞ。」
「一恵。がんばって。」
梵さん魔法武具は右手首につけたバングルか…
首に魔核輪をつけてるから一般組として、長距離魔法が得意なスキルか?
「千冬、梵さんのスキルは知ってるのか?」
「一恵のスキルは【木枯らし】よ。風スキルの下位互換で弱い風を操れるとか。」
「ふむ。まぁ、見てから考えるかな」
梵さんは右手を前に出して茂国の周りを弱い風で囲った
だが、茂国は手を大きく振り払い風を消した
すると、地面から細いこよりのような風の塊が茂国めがけて現れた
茂国は驚きすぐに後ろに体を曲げて避けた
瞬間、梵さんは足に風魔法を使用してスピードを上げ的をタッチした
ピーーーーーー
『梵 一恵 合格!!』
「さすが一恵!!」
ほう。これは驚いたな。スキルの使い方が上手いな
確かに弱い風でも細く長くすれば殺傷能力は上がる
梵さんの見た目のオドオドさとは裏腹に攻撃方法は随分と前衛的だ
「よく自分のスキルを熟知してるな。素晴らしい戦いだった」
「あ、次猫頭くんよ!」
猫頭は梵さん以上に問題ないだろうな
スキル【猫化】は身体能力の向上と動体視力も上がるだろ
なら丸腰の相手じゃ歯が立たないだろうな
猫頭は猫化で機動力を上げあっけなく的を攻撃して合格した
『猫頭 喜絃 合格!!』
だろうな。スキルとポテンシャルならAランクでもおかしくないさ。
「2人とも合格できたな」
「2人ともすごいわ!私たちも負けてられないわね!」
そして実技試験は最後の1人を残して段々と終了していった
次で最後か。
結局合格者は梵さんと猫頭だけだったな
次も消化試合だろう
「!!。あいつ…。」
「??。どうしたの?なっちゃん」
「千冬。次の試合見ておいた方がいいぞ。きっと一瞬だ。」
現れたのは見た目は中学生くらいで派手な赤髪と一際目立つ少年が立っていた
試験がスタートすると共に熱気が会場中を包み、茂国は少年と距離があるにもかかわらず避ける行為をしていた
そして、少年は足から強い炎が現れ、とんでもないスピードで的を破壊した
その衝撃で茂国は後方に吹き飛んでいった
『日野 火弘矢 合格!!』
「な、何あれ!何が起こったの!?」
俺は全身から汗が出た
「最初にみせた熱気で蜃気楼を作ったんだ。そして、そのあとは足の火魔法で超速移動とはな…」
まさか、こんな奴が今まで探求者じゃ、なかったなんてな
日野か…覚えておこう。あいつは確実に上がってくる。
この時俺は少し笑っていたかもしれない。
そして、猫頭達は無事学科講習も終わり、ギルドカードを手に入れた
そして俺達は駅に向かって歩いていた
「改めて2人とも試験合格おめでとう!」
「ありがとう!!」
「一青さんにそう言ってもらえるとうれしいな。ありがとう!」
「ほら!なっちゃんも!」
「あ、あぁ。お、おめでとう。」
「もー!声が小さい!」
「ハハ!夏君は本当に一青さんには勝てないみたいだな。ありがとう!」
「わ、私も。ありがとうございます。」
そして、駅につき俺達はそのまま各自帰宅となった
「じゃ、2人ともまた明日ね!」
「今日はありがとうございました。千冬ちゃんも、また明日ね!」
「俺も今日は充実した1日になったよ!ありがとう!夏君もまた明日な!」
「あ、あぁ。じゃあな。」
猫頭と梵さんは駅に行き、俺と千冬は俺のバイクで家に帰ったのだ
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