05 あなたの気持ち
レズセ部屋に閉じ込められて一週間が経っただろうか。
2人は依然としてヤることヤらず、部屋の趣旨を一切無視してやろうと決め込んでいる模様。
ーーしかしとうとうそれも叶わぬものとなる。
「……はぁ!? レズセしないと飯は出さないだと!?」
戸口の隙間から1枚の紙が。
「確かにそう書いてあるのかしら。ただ単にあなたがシたいだけではなくて?」
「バカ!//// んなわけねーよ!////」
東堂が顔を真っ赤にしながらその紙を突き出した。それを受け取る西宮。流し見すると納得といった様子でスンと前へ向き直った。
「やるしかないわね」
「!?////」
「だってご飯が食べられなきゃまずいわよ」
「そ、そりゃそうだけどよ……!////」
東堂の胸に葛藤が湧き上がる。
見た目は不良のヤンキー生徒だが、意外にもその素性は乙女である。だからこそセックスとは愛がなければしてはならないと考えているのだ。
対して西宮はどうか。こちらは目的と手段という淡白ではっきりとした価値観でレズセ部屋にいる。そのためか、ご飯が食べられれば裸の付き合いも厭わないということだろう。
東堂はキッと西宮を睨んだ。
「お前、そこんとこどーなんだよ」
「そこんとこって何よ?」
「レズセだよ!//// その……アタシのこと嫌いなんだろ? 嫌いなやつ抱けるのかよっていう話……」
「気は進まないわね」
「…………」
「でもご飯が食べられないのは困るわ。だからヤる。それだけよ」
「……アタシはやだよ」
「あなたが嫌でも私が嫌なの。1食でも抜くと美容に悪いもの」
「お前が嫌なのはどーでもいい! 今大事なのはアタシの嫌の方だっつーの!!!!!」
室内にしばしの沈黙が落ちる。
握りこぶしを固く結んだまま足元を見つめる東堂。
それをただ眺める西宮。
「……こういう行為って特別な関係の2人がすることじゃん。飯のためぐらいで安安とやっちゃいけねぇと思うんだよ……」
「……東堂さん」
「だからワリ……アタシできねぇ。飯は諦めてくれ……」
「言いたいことはわかったわ」
「西宮?」
「つまり私と特別な関係になりたい、ってことでしょう?」
「!?!?!?////」
曲解。しかし的を射ているのか。
西宮の脳内で今までの東堂の行動がフラッシュバックする。
自分と肌を重ねて良いのかと尋ねた時の赤らめた表情。背中を洗わせた時の彼女の艶めかしい手つき。ああだこうだ言いつつも雷を怖がった自分を優しく抱きしめてくれていた腕。
「東堂さん、あなたは私のことが好き。違う?」
「…………!」
西宮の脳内で解が収束した瞬間であった。