表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/45

第5話 ご対面

「よっ、諸君!」


 そう言って現れたのは一人の女性だった。見たところの年齢は10代後半か20代前半ほどで、若い。服装はミニ着物というものに近かく、緋色の羽衣を掛けていた。


「みんな、紹介しよう私の相棒のアニマのアマテラスだ。」

「ちわーっす!」


 動揺を隠せずにいた一人の隊員が疑問をぶつけた。


「隊長、これは一体?」

「それはボクから説明しよう、村本(むらもと)隊員!」

「えっ、なんで俺の名前を....」


 教えてもいない自分の名前を言い当てられた村本という男にその女性は話を続けた。


「ボクはさっき美木ちゃんが言った通り、アニマのアマテラス!君たちにも入っているAIのシステムを利用してボクの人格を発現させているんだ。ちなみに村本隊員の名前はスキャンを使っただけだよ。」

「って言うことは....」


 光司が何かに気付いたのを見るとアマテラスは感心した様子で歩み寄っていった。


「そう!君たちの今、身に着けているアニマたちにも人格があり、このように体を構成できるって言うことさ!」


 熱弁し終わると同時に今度はじっくりと光司の方をガン見する。


「それより君、起動させたアニマの名前を聞いて良いかい?」

「ああ、タケミカヅチです。」


 そう言うと光司は先ほど腕時計に形を変えさせたタケミカヅチを見せる。


「やっぱり!ちょっと話があるから発現承認出してやってくれない?やり方教えるから!」

「あ、はい、いいですけど....」


 発現承認とはアニマの中にある人格が出てきて自律的に行動することを使用者が許すことだと言う。やり方は簡単でウィンドウにあるメニューから承認をだせる。

 光司がその通りにするとAIとは別の声がした。


「あーっ、やっと出してもらえるのか。久しぶりの外はどうなってるのかね?」


 明らかにあの時、大富に向かっていった時に聞こえた声だった。

 すると今度は右腕についていた時計がアマテラス同様、変形を始め、一瞬にして光司の横には一人の青年が立っていた。高身長で体格も良く、深い緑色の髪をしていた。


「おっ、お前が俺の主人か!よろしくな!」

「はぁ、よろしくお願いします....」

「ハッハッ!そんな堅苦しくしなくても軽くいこうぜ!」


 そう言って腕を回すタケミカヅチを見てタケルに似ているなぁ、と光司は思った。


「やぁやぁタケミカヅチぃ。調子はどうだった?」

「よう、アマテラス。相変わらず元気はつらつだな。」


 どうやらこの二人は知り合いらしい。まぁ呼び出してほしいと頼んだところで何らかの関係はあるはずだった。

 すると次は隣の方で大きな音がした。そちらを見るとなんと大きなドラゴンが座っていて、その横にはびっくり仰天のタケルがいる。


「あーあ、あいつドラゴニックか。あのシリーズは結構面倒だぞ。」

「あぁ、ボクもあれはなんて言うか、破天荒すぎると思うんだよな~。」


 先に出てきていた二人も苦笑いをしていた。無理もない、そこには大きな牙を光らせたドラゴンがいるのだから。


「だれだ!このマラク様を呼び覚ます者は!」

「ん?!しゃべった!」


 春香が驚きながら言った。それと同時にタケルが大声で言い返した。


「おう!この俺だ!この藤塚タケル様だぁ!」

「ん?あぁ、この姿ではここでは動きにくいな。しばし待て。」


 そう言うとマラクはまた形を変え始めた。しばらくすると今度は人間に近い姿をしていた、と言うかさっきの大きな体に反して今度は小さくなり、どこからどう見ても子供だった。さらしのようなものをしていたので恐らく女の子だろう。


「おい、ちょっと待て、さっきのでかいのがお前?」

「そうだ、あの姿は竜化と言ってな。ドラゴニックシリーズは皆できる、というかあれが我の真の姿だ。」

「つーか今ただのガキじゃん。正直弱そうだな。」

「なんだとー!」


 すると鈍い音を立てながらタケルの腹には拳が撃ち込まれいた。地面にうずくまってしまったタケルを見ながらマラクは続けた。


「いいか、我はそうやって我の姿を愚弄するものが一番嫌いなのだ!次そんな真似してみろ!今度はパンチ一つじゃ済ませないぞ!」


 その仲裁に入ったのが今度はまた見たこともない女性と男性。女性の方は長い金髪を伸ばしており、すまして立っていた。一方男性の方はダンディという言葉が似合うような容姿で、西洋の鎧のようなものを付けていた。


「ちょっとそこのドラゴニック。先ほどから見ていますけどもう良いんじゃありません?私たちの使命はこの者たちと共に戦うことであって、決して争い合う中ではないはずですよ。ねぇシグルズ?」

「そうですね。我らの主の命は私たちの命。彼らがいなければ私たちはこうして話すこともできないのですから。」


 そう、次に出てきたのは春香のアニマ、ユーノとシグルズだった。すると二人は今度は春香に歩み寄っていった。


「それにしてもすごい子ね。私とジグルズ、両方を使うなんて。」

「えぇ、全くです。まぁ世の中は広いですし、こんなことをしようとする方も出てくるんですね。」

「あ、あのー....」


 春香が声を掛けると二人はすぐに自己紹介をした。


「あっそうだったわね。私はゴッドシリーズアニマのユーノ。どうぞよろしく。」

「申し遅れました、ヒュームシリーズアニマのジグルズと申します。お見知りおきを。と言っても、もう私たちの名前はご存知でしょうな。」

「うん、まぁね。でもこうして面と向かって挨拶するのも大事でしょ。」


 次にスーツ型にする説明だったがこれは簡単で、声帯認証ですぐに覚えられた。

 何人かは少し手こずっていたが落ち着かせるように日ノ宮隊長が言った。


「そんなに焦らなくていいぞ。まだまだ練習はある。根気よく行こうな。」


 一人ずつ自分のアニマを呼び、話したりした。タケルはずっとマラクと睨み合いをしていたがしばらくすると、なにか共通のテーマを見つけて楽しそうに語らっていた。


「それではみんな、今日のところは自由行動としよう。本格的なアニマを使った戦闘訓練は明日からだ。遅れないようにするんだぞ。じゃあ、解散!」

「「はっ!ありがとうございました!」」


 日ノ宮隊長がそう言うと皆ぞろぞろ出ていった。


「じゃあな、アマテラス。またゆっくり話そうや。」

「おう!また今度な!」


 アマテラスと別れるとタケミカヅチは光司の元にやって来た。

 出口の方では春香とタケルが各々のアニマと一緒に待っている。


「じゃあ光司さんよ。行こうか。」

「光司でいいよ。これからは相棒なんだから。」

「そっか!じゃあ俺のこともタケミカヅチって呼び捨てでいいぞ。」

「はい!」


 そう言って二人は他のみんなと合流した。するとさっきまで対立していたマラクをおんぶしたタケルが先頭を走りながら言った。


「おっし!じゃあ正式にアニマも受け取ったことだし、どっかで飲もうぜ!」

「おー!ってあたしあんまり飲めないけど....」

「んなこたぁ関係ない!さあ行くぞ!」


 あまり乗り気ではない春香を引っ張りながらタケルはグングン先を行く。

 この地下の施設でも飲食店などが軒を連ねている。通りを歩いているとマラクが何かを嗅ぎ付けたようで走りながら一軒の居酒屋に向かっていった。


「おぉ!ここから旨そうな匂いがするぞ!ここにしよう!我は久しぶりに飯を食いたい!」

「おっ!たしかに!これは....焼き鳥!俺の大好物じゃねぇか!」


 はしゃいでるタケルとマラクをよそに春香は何か気になったような顔をしていたせいか、ジグルズが尋ねた。


「春香さん、何かお困りごとですか?」

「いや、来たは良いんだけど、アニマのみんなは飲食できるのかなって。だってこう言っちゃなんだけど、機械なわけだし....なんか仲間外れにしちゃうかもって....」


 そこは光司も気にはなっていた。アニマのマラクが食欲を指す発言をしていた点はおかしい。機械が燃料や電力などを必要とするのはわかるが、食事が必要という概念がない。

 考えているとユーノが答えた。


「そうね、確かに私たちは最新鋭の精密機械。そんな私たちでもさすがにエネルギーが必要になってくるんです。基本的には日光、風、時には隊員の体温でそのエネルギーを補充しますが、私たちがそうしようと思えば飲食でも十分補えるのよ。」


 またアニマたちには味覚を含める感覚・感情プログラムが設定されており、隊員の日常でのストレス発散に付き合えるようにされているらしい。

 しばらくは全員楽しく食事を楽しんでいた。酒を飲み、うまい飯を食べながら互いをもっと知り合った。

 だがそんな平和が長続きすることはなかった....


 ズガガ―ン!―――


 何かが崩れる音とともに光司たちは店を飛び出した。


「なんだ、あれ?!」

「あちゃー、マジか....」


 驚いている光司をよそにタケミカヅチは困った顔で頭をかいていた。

 そこにいたのは成人男性より二回りほど大きい何かだった。人間のように四肢のような物がついていたが、他の部分が異様だった。


「なにあれ?!なんか、怖い....」


 優しい顔の春香が険しい顔をしながら聞いた。するとすぐにマラクが答えた。


「あれは人間とアニマを無理やりくっつけたんだろう。共鳴できない人間にそんなことをすればアニマのナノマテリアルが暴走してAIを通して脳に侵食していく。あれはその成れの果ての、ロステッドって言うバケモンだ。」


 そうしているうちにその何かは光司たちの方を向いた。すると今度はうめき声か咆哮とも聞き取れる声を出しながら走ってきた。


「おい!お前ら!」

「るっせぇ!わかってら!」

「まったく、なんでこっち来るのよ?」

「そんなことより早く!」


 そう言うとアニマたちはそれぞれの主人に飛びついて変形を始めた。

 光司のタケミカヅチとは違い、マラクは全身暗い青色をしており、両手の辺りが比較的に大きく頑丈そうな作りになっていた。

 春香の場合、二つ装着しているため随分と変わった形になるかと思いきや、特筆すべき特徴はなく、黄色のボディに黒いアクセントのあるスーツになっていた。


「ウオオオ!」


 また声がしたとたん光司が倒れ、その背中にはロステッドが立っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ