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第3話 アニマ

「あれー?嬢ちゃんこんなとこで一人?」

「へぇ、かわいいじゃん。」


 そう言って姿を現した二人の男。明らかに口説こうとしている。

 隊服を着ているので恐らくここに滞在している隊員だろう。


「あ、新入隊員なんだ!じゃあ、あっちでお祝いの一杯おごるよ!ね?」

「勝手にスキャンしないでくれますか?あと私、人を待ってますから。せっかくのご厚意ですが、結構です。」

「つれないねぇ、ちょっとくらい良いじゃんかよ。」


 あからさまに嫌がっても男たちは引き下がらない。


(めんどくさいなぁ、さっさとあっち行ってくれないかな。)


 ここで事を荒立てるつもりもない春香は途方に暮れてしまった。入隊早々、問題に巻き込まれて送り返されるのだけはごめんだった。

 すると今度は背後から気配がした。なにかとそちらを向くと、一人の女性が立っていた。


「おい、やめないか。嫌がっているだろう。部隊内でのわいせつ行為はご法度(ごはっと)だぞ。」

「げっ!あんたは....!」

「ヒィィィッ!し、失礼しましたー!」


 その女性の顔を見たとたん、二人とも真っ青な顔で逃げて行った。その姿は凛々しく、それでいてどこか母性も感じさせる。


「あ、あの!ありがとうございます。」

「うん、ここではあんなのもいるから気を付けるんだぞ。じゃあ、私はこれで。またどこかで会おう。」


 そう言うとまた歩いて行った。なんてすてきな人だろう、と春香は見とれていると、そこへ光司とタケルがやって来た。


「あっ、お待たせ―!西連寺待った?ごめんごめん、ちょっと荷ほどきにてこずちゃって。」

「俺はわざと遅れてきた!なんかそっちの方がクールっぽいから!」

「いやそれはダメだろ。」

「ねぇ、光司くん、タケルくん。君たちは女神を信じるかい?」


 遠くを見つめながら春香は問うた。


「「はい?」」

「いやぁ、あたしは出会ってしまったのかもしれないと思ってさぁ。」


 そう言うと春香は唐突な質問に唖然としていた二人に何が起きたかを話した。


「へぇ!確かに憧れる人だ!僕も会ってみたいな!」

「俺ならそんな奴ら、一発でぶっ飛ばしてたぞ!」


 三人が話しているとふと時計に目をやった光司が慌てる。

 現在の時刻、9時26分。


「ああああ!もうすぐ指定時間過ぎる!急がないと遅れるぞ!」

「ホントだ!急がないと怒られちゃうよぉ!」

「くっそー!俺はこんなことで出ていきたくはねぇ!」


 そう言ってできる限り走った。が、はじめてくる場所を走りながら特定の場所に行くのは至難の業。それでも道を間違えないのはAIのおかげだろう。


「次ノ曲がり角ヲ、右折シテクダサイ。次二、50メートル直進デス。」

「これは助かるな。僕だけじゃ絶対無理だ。」


 全力疾走したおかげで9時30分ぴったりに訓練場についた。するとそこには先ほど一緒にいたほかの新入隊員たちもいた。


「ふぅ、間に合ったね。」

「あぁ、結構ギリギリだったけど。」

「俺、なんか、余裕、だった、けど、な。ハァハァ....」

「うそつけ、息上がってんじゃん。」


 すると丁度、各部隊の部隊長が登場した。三人は空いていた席を見つけると腰をかけたが、何かを見つけた春香が立ち上がった。


「あ!女神さま!」

「ん?あぁ、さっきの。やあ。」


 すると女神さまとやらも気付いたようで手を振り返す。つまり、春香を助けたのはこの第19部隊の部隊長だった。


「へぇ、あの人が。」

「なんでぇ、そんな強そうには見えないぜ?」


 最初の数分は入隊式で話された内容そのままだった。皆聞き流していると今度は各自、配属された部隊に割り当てられた訓練エリアへ行くことになった。

 もちろん、部隊長も一緒に付いてくる。


「では、改めて自己紹介しよう。私は第19部隊隊長、日ノ宮(ひのみや)美木みきだ。よろしくたのむ。」

「「はっ、よろしくお願いします!」」

「ん、よろしい。」


 一通り自己紹介を済ませると今度は倉庫のようなところへ連れてこられた。暗くてよく見えなかったが微かに漏れる光で何かあることは確かだった。だが、その正体は隊長が明かりのスイッチを入れると共にはっきりと正体がわかった。


「なんだ、これ。」


 思わず光司は声に出してしまった。

 そこにあったのは無数のカプセル。大きさは子供一人分ほど。中には不気味ともいえる何かがうごめいていた。誰も近づこうとしないのを見ると、日ノ宮隊長が前に出て説明を始めた。


「たしかに気持ち悪いよな、これ。けど、君たちがこれからAUSFの一員として活動するにあたって、こいつらはみんなの力になるんだぞ。まぁ、百聞は一見に如かず。こんな感じだ。」


 他の皆に下がるように言うと隊長は何かを唱えるように口を開いた。


「出番だぞ、アマテラス。」


 すると隊長の付けていた指輪が溶けたようになったと思ったとたん、みるみるうちにその体を覆っていった。だが本人は決して苦しむそぶりは見せない。

 一瞬でその指輪から出てきたものは完全に隊長を飲み込んでいた。


「ギャー!隊長が変なもんに食われた―!」


 当然、そこにいた者全員が慌てた。それもそのはず、目の前で一人の人間が得体のしれない物に飲み込まれたのだから。

 すると隊長の声が聞こえてきた。


「みんな落ち着いて。私は大丈夫だぞ。ほれ!」


 するとよく見るとその物体は今度ははっきりとした形を成していた。それは鎧のようなもので、体を完全にガードしていた。真紅のその鎧の顔の辺りにはバイザーらしきものがあり、そのおくにはたしかに笑顔の日ノ宮隊長がいた。

 皆を落ち着かせた後、その恰好のまま説明は続いた。


「これは私たちAUSF専用の兵器、アニマだ。ウボリアン達の圧倒的な戦力に対抗できる力を私たちに与えている、いわゆる相棒みたいなものだぞ。テレビでも時々出ているだろう。」

「はい、でもやっぱり装着の瞬間は初めてだったので、僕たちも少々驚きました。」

「そうだろうね。でも今からは当たり前になるんだぞ。君たちも見ただろう。普段アニマはこんな展開しっぱなしではなく、このカプセルに入っているうねうねした物なんだぞ。」


いつの間にか先ほどのスーツは消えていた。まるで存在もしなかったように。

不思議そうにしていると隊長は提案をした。


「とにかく、ここにあるカプセルの中から好きなのを選んでくれ。ホント、感覚的にでいいぞ。」


と言われてもどう選べばいいのかも分からない中、タケルが真っ先に一つ選んだ。


「俺はこれにする!」

「どうやって選んだんだ?なんかコツとか....?」

「いや、お前が見てピーンと来たものにすればいいだろ。眺めていたってなんもならねぇ。」


そうアドバイスを受けた光司はカプセルの間を歩き始めた。たしかに眺めているだけでは何も感じない。最後列に着いたとき、端の方にあったカプセルに目が行った。近づくにつれてより一層何かのつながりを感じていた。


「これ、なんだろう....?」


その不思議な感覚に連れられ、近づいて行った。

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