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第2話 もう一人の仲間

 しばらく二人はたわいもない話をしていた。どこの区画に住んでいたか、趣味はなにか、好きな食べ物など。


「よっお前ら!なんか楽しそうに話してんじゃん。俺も混ぜてくれよ♪」


 そんな声と共に、二人の肩に腕がまわった。その勢いでよろけて三人とも転んでしまったがその男はすぐに立ち上がると自己紹介を始めた。


「俺は藤塚(ふじつか)タケルだ。覚えておけ!いずれ世界最強となる男の名前だ!」


 いかにも不良のような外見。荒っぽい言動。おまけに子供のような自己紹介。よくこんな奴が自分と同じ特殊部隊に入れたもんだと光司は思わず考えてしまった。


「あっ、はじめまして。あたしは―」

「春香、だろ?で、お前は光司。さっきのデバイスで全部わかっちゃうぜ。」


 見た目に反して随分と器用らしく、先ほど埋められたデバイスを使いこなせるまでになっていた。これは使えると踏んだ光司はすぐに話しかけた。


「でもすごいな、そんなにすぐに使えるようになるなんて。僕にも教えてくれよ。」

「おう!まかせろ!このタケル様にかかればこんなもん朝飯前ってんだ!」


 タケルはわかりやすく説明をはじめた。まず、自分たちの視界はウィンドウと呼ぶ。そしてそのウィンドウで何をしてほしいか頭に思い浮かべれば大体のことは自動でできるそうだ。ネットサーフィン、視界に入る物のスキャンなど、機能は様々。

 また彼は第一印象とは裏腹にとても礼儀正しく、知性的な面も兼ね備えていた。根気よく二人に教え、間違っても決してめんどくさがったり、嫌な顔はしなかった。


(すまなかった、藤塚さん....)


 心の中でそう謝る光司がいた。しばらくすると三人は先ほど会ったばかりの仲ではあっても、何年も前から知り合いのように打ち解けていった。

 色々といじっている間に列車は目的地に到着した。そこはたくさんの人が行き交う大きな施設で、一つの町のようだった。

 すると浅井支部長が言った。


「諸君、この道を真っ直ぐ進んでいったら宿舎に着く。各自の荷物は部屋に運んであるので荷ほどきが済んだら9:30に訓練場に向かってもらう。場所はさきほどあたえたAIが示してくれるだろう。では、解散!」

「「はっ!」」


 一同がそう答えるとまた列車に乗って行った。それを見送ると今度は言われた通り宿舎を目指した。その中で光司、春香、タケルは三人で足並みをそろえて向かっていった。

 建物の前に着くとまたAIの声が聞こえた。


「指定ノ部屋ヲ表示シマス。指示二従ッテ移動シテ下サイ。」


 すると一人ずつのウィンドウに部屋番号が映った。


「僕は918号室か。結構上の階だな。」

「あたしも9階みたい。922号室だって。近いね!」

「へー、ここ男性と女性分けてないんだ。」

「まぁ、スペースの節約らしいからね、あたしは全然気にしてないし!」


 そんな会話に入っていけない人が一人。タケルだ。


「あーあ、俺だけ5階かよ、つまんねーの!」

「残念だったね、タケルも近かったらよかったな....でも時々顔出しにくし、まだまだ会えるさ!」

「そうそう、せっかくここへ来てはじめてのお友達だもん、離れているからって忘れたりしないよ!」


 こうして一行はエレベーターに乗った。5階でタケルと別れ際に9時に棟の前で待ち合わせの約束をし、光司と春香は自室へと向かった。


「結構狭いな。」


 荷物をほどきだすとドアが開いた。誰かと思い光司はドアへと向かった。


「あっ、どちらさ....へ?」

「あれ?」

「ん?」

「んん?」


 そこに立っていたのは紛れもなく女の子だった。

 二人とも思わず首をかしげてしまう。


(いやいや、なんで?ここ僕の部屋だよな?ここはひとまず....)


 そう思って話しかけようとするとその女の子は大声を出した。


「キャァァァー!なに、あんた!?」

「わ!わ!ちょっと待って!僕は決して怪しい人じゃないから!」


 急いで表に出ても扉にはしっかりと918号と書いてある。荷物も置いてあったのだから部屋間違えたわけでもなさそうだ。


「うそよ!じゃあなんで男のあんたがあたしの部屋にいるのよ!?出てけ―!」

「うわっ!やめろよ!痛い痛い!わぁっー!あっ、ちょっ、椅子は投げるなよ!」

「うるさい!問答無用!」


 すると二人のもとに一人の男が走ってやって来た。どうやらここの管理人らしい。


「すいません!お二人の部屋の振り分けにミスがありました!データベースに入力ミスがあったようで....今、正しいお部屋にお連れしますので!」


 そう言われて落ち着いたのか女の子も物を投げるのをやめた。


「なーんだ、そういうことだったんだ!早く言えばよかったじゃない。」

「ちょっ、言わせてくれなかったのは君の方じゃないか!」

「はいはい、じゃあね!」


 そういうとさっさと出て行った。着いてすぐのハプニングに動揺した光司だったが、頭をさすりながら荷ほどきを続けた。


「イテテ、こりゃたんこぶできるぞ。なんでこんな散々な目に遭わないといけないんだか。おっといけね、もうすぐ9時じゃん。」


 一方、春香の方はもう荷物をほどき終え、宿舎の前で二人を待っていた。


「二人とも遅いなー....もう時間すぎちゃってるじゃん。」


 ウィンドウで時計を確認しながらあきれている春香を見て遠くでニヤリと笑う影が二つ。

 見定めた獲物をじっくり観察する獣のように近づいてくるが、春香はまだ気がつかない....

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