犬神の過去
「と、いうわけじゃ」
ズズズ
僕は、犬神様のいれてくれたお茶をすすった。
主さまが、愛用していたものらしい。
リラックス効果があるらしく、まったりとした気分になった。
生存確率もマックスに近かった。
めでたし、めでたし。
話をまとめるとこうだ。
犬神様は、1000年を越える狼の魔物だった。
昔はやんちゃしていて、やりたい放題していたらしい。
『九尾』と呼ばれヒト族や、他の魔物たちにも恐れられていた。
この山を根城にしていて、近寄るものはみんな排除していた。
魔物化が進むと、理性を失い暴力的になるらしい。
ある時、ヒト族の魔導士がこの場所に住みついたので、勝負を挑んだ。
反対に、こてんぱんにやられてしまった。
その時、浄化の魔法をかけられ理性をとらもどしたらしい。
それ以来、魔法の研究を手伝ったり、一緒に狩にいったり穏やかな日々がつづいた。
いつからか、尊敬の意を込めて『主さま』と呼ぶようになった。
犬人族や兔人族などの、弱い獣人達が住みついたが、以前のように追い出すことはなく、逆に外敵から守ってやるようになった。
ヒト簇の間にも、『九尾』が改心した噂が広がり、この地を獣人達の神聖な場所とし近寄らなくなった。
触らぬ神に祟りなし。というように。
獣人達は、彼女を敬うようになり『九尾』は神となった。
今では、3っつの獣人集落が出来『犬神の里』と呼ばれている。
オークやコブリンなどの魔物達も、犬神様を恐れて近寄ってこない。ヒト族の奴隷にもならなくてよい。獣人達の楽園になっている。
「ちょっと、弟子にあってくる」
と主さまが出掛けたのは、10年前のことらしい。
「ヒトノコよ。ここを自由に使っておくれ」
「ありがとうございます」
そして、10年の月日が流れた。