出合い
昼間は、シロにのって移動。日が暮れたらシロのモフモフにくるまって眠りにつく。快適快適。シロさまさまだ。
あっという間の3日間だったな。
食料は、携帯栄養食と水だったけどちょうど3日分あったし。
「いい感じに進んでるね」
イザナミに話しかける。
「ここまでは、想定内ですので。そろそろ、生体反応が近づいてきました。慎重にいきましょう」
シロは、走るのをやめた。身体を低くしてゆっくりと歩いていく。
森の先には、木の柵で覆われた広場があった。
藁葺き屋根の集落が見える。
こんな山奥に住んでる人いるんだなあ。
さすが、異世界。
小さな子供が出てくる。
粗末な布を紐で縛った服を着ている。
まっ、僕も似たようなもんだけどね。
よくみると、身体中もふもふの二足歩行する犬だった。
さすが、異世界。
「メスイヌの仲間でしょうか」
「犬人族かな?
だったら、友好的な民族だと思うけど」
「さすが、無駄な知識はお持ちですね。では、接触を図ってみましょうか? 」
「……」
僕、人見知りだし。結構びびりだからなあ。
「PTリーダーのあなた様にお任せしますわ」
「むむむ」
やあやあみなさ~~ん。
って明るくフレンドリーにいくべきか。
おたすけくださ~~い。
って卑屈にいくべきか。
もともと、決めるの苦手だったしなあ。うーーん。
「ワン!」
僕を乗せたまま、シロが走り出した。
「えっ!」
広場まで一気に走り抜けると、尻尾をパタパタさせながら、犬人族の回りを走り回る。
だ、大丈夫ですか~シロさん。
広場の真ん中で、大勢の犬人族に囲まれてしまった。
「℃%&#」
「〇〆々仝」
「〇〆々#」
何を話してるのか、全く解らん。とりあえず、生命の危機は避けられたようだけど。異世界ものなら、ご都合主義で言葉解ったりするんだけどなあ。
「言語解析終了致しました」
「えっ」
「メスイヌを神様の使いと勘違いしているようですよ」
「イザナミ、言葉解るんだ。」
「携帯スーパーAIですから」
ディスプレイの巫女が胸をはって得意気にしている。
「もっと、誉めていただいてもよろしいのですよ」
「……」
広場の先には、小道があった。僕たちは、その先に行くよう犬人族に勧められた。
小道の先には、川が流れており、大きな滝があった。
「ヒトノコよ、どうやって此の地にきた」
遠くから、声が聞こえる。威厳のある、心に響く声だ。
滝の上を見上げると、大きな白犬が立っていた。
スッと、滝の上から目の前に飛び降りてきた。シロの5倍はある巨体なのに、その動作は静かだった。
ゆっくりと、僕たちのまわりを歩きながら、舐めるように見ている。
にいっ、と犬歯をみせると話しかけてきた。
「ヒトノコよ、この地には何しにきたのじゃ」
僕は正直に、此れまでの経緯を話す。
威圧されて、身体が動かなかった。ビビりな僕だからではなく、あきらかに、彼女からはある種の力が伝わってくるのだ。
「なるほど、話は解った。その娘を、我の後継者として育てる代わりに保護してやってもよいぞ」
「ワン!」
「ほう、娘はやる気じゃなあ。さすが、我が見込んだだけはある」
シロの方をみると、尻尾を力強くバタバタさせている。
(任せて、僕頑張るから)
シロの想いが伝わってくる。
シロありがとう。
ここまで乗せてきてくれて。
僕と一緒にいつもいてくれて。
涙の滲んだ目で僕は言った。
「よろしくお願いします」
「ようこそ、犬神の里へ」
犬神さまの声はとても優しく、笑顔はとても神々しかった。