始まりの始まり
辺り一面真っ赤だった。
夕暮れの色なのか、血の色なのかわからない。
僕は、瓦礫に横になって目の前の黒い大穴をぼんやりと見ていた。
まだ、生きている。
運が良かったって言うのかなあ?
白犬が、血まみれの俺の顔をなめている。
(大丈夫? 僕が治してあげるよ!)
白犬の気持ちが伝わってくる。
「シロありがとう」
左手で頭を撫でてやる。
「ワフッ!」
嬉しそうに尻尾をパタパタさせる。
シロが僕の顔をなめ続けてくれなければ、まだ瓦礫の下敷きだっただろう。
しかし、大怪我しながら良く自力で脱出出来たもんだ。
これが、火事場のくそ力ってやつか?
まっ、今は力を使い果たして身動きとれない状態だけどね。
シロさまさまってとこか。
もう一度、シロの頭をなで黒い大穴を見つめる。
目の前に、真っ黒な闇の空間が存在している。
いつもの、朝の散歩をしていたら、突然大穴があいた。
どんどん大きくなって、ブラックホールのように建物を飲み込んでいった。
やばっ!
飲み込まれる!
と思った瞬間、大穴の拡大が止まった。
助かった!
と思ったが、崩れてきた瓦礫の下敷きになってしまった。
でも、僕はついていたのかも知れない。
黒穴からは、魔獣、悪鬼、百鬼夜行と呼ばれるような人外が飛び出してきた。
やつらは、競って人々を蹂躙した。
町中血の海となった。
それでも、人々を食らい続けた。
そして、怪我をした痛みと、惨劇による悪臭で、僕は気を失った。
やつらは、人々を食らいつくし他の場所へ移動していったようだ。
今この場所には、静寂が訪れている。
今ここには、僕一人しかいない。
このまま死んじまうのかと思うと、これまでの嫌な人生も懐かしくなってくるな。
中間管理職のおじさん。
それが、僕だ。
仕事に押し潰されそうな毎日を送っていた。
働き方改革とかいって、労働時間は長くないのだが、いつまでも片付かない仕事をかかえもんもんとしていた。
人見知りで、本を読んだりゲームをしたりするのが好きだったので、毎日会社にいって好きでもないやつらと話すのは苦痛でしかなかった。
結果、出世なんてもってのほかだ。
土日に、どっぷりとゲームやアニメで現実逃避して、心の均衡を保っていた。
彼女なんているわけもなく、この年になっても素人童貞なのは仕方ない。
一時期、フードルにはまった。
(今度、ご飯食べにいこーねえ)
なんて、色恋営業に癒されてた時もあったなあ。
子犬だったシロを拾ったのは3年まえだったかな。
白いモフモフを撫でていたら、そのまま家までついてきて居着いた感じかな。
何で僕になつくのかわからなかったけど、生き物にこんなに好かれたの初めてだったから嬉しかったなあ。女の子だしね。
今では、子供を乗せて走れるぐらい大きくなったけど、長く伸びたモフモフがセクシーだ。
お前が、人間だったら結婚出来たのになあ。
「わふぅ」
嬉しそうに、モフモフの尻尾をぱたばたしている。
うーーん。シロに看取られるのも悪くないかも。
「ウーー! キャンキャン! 」
突然シロがほえだした。
『ゴゴゴゴゴゴーーーー』
静寂を破り、真っ白なブイトール機が飛んでくる。
僕の百メートルくらい近くまで来て翼を閉じ着陸した。
白い四角の箱の扉が開くと、中から『スターウォー○』の白い兵士が3人降りてきた。
ヘルメットをとり、3人でなにやら話始めた。
男二人と女ひとりのグループだった。
「キャプテン、民間人の生存者がいます」
「今回の任務には、人命救助は入っていませんが」
「貴重な生き残りではある」
「本人が、我々に同行する意志があれば救助するということにしては?」
「では、民間人の意向を確認しよう」
助けてくれるのか?
彼女いない歴イコール人生のまま、死んでしまうのも悲しいしなあ。
キャプテンらしき人物が近寄ってくる。
「そこの、民間人。
我々は任務の途中であるが、同行していただけるなら、治療をする準備がある。
貴殿の意思を尊重したいが、いかがであろうか」
えらく、固いな~~
助けてくれるなら、付いていくに決まってんじゃん。
「ワン! 」
「明確な意思表示感謝する。即刻、同行願おう」
って、返事したのシロだし。
まっ、いいか。
白い箱の中は、操縦席と十畳程の居住区に分かれており、思ってたより広かった。
僕は、体に電極のようなものをつけられ、MRIのような金属の筒に入れられた。なぜか、シロも一緒に。
「安心してくれたまえ、最新のナノ治療マシンだ。寂しくないように、ワンちゃんも一緒だぞ。ガハハハハハ」
俺ってスゲーおもしれえって感じにキャプテンが笑う。
「イザナミ、全力で、治療するのだ。」
『リョウカイシマシタ』
船に備え付けのAIが答えると、心地好いそよ風が顔を撫でる。
僕はたすかったんだなあ。
安心したら眠くなってきた。
「では、任務続行」
翼を広げるとブイトール機は上昇し、そのまま黒い大穴に突っ込んで行った。
「えっ!」
初めての投稿です。色々ご指導いただけるとありがたいです。
これから、ゆっくり投稿していきますのでよろしくお願いいたします。
しばらくは、前置きが続きますが、お付きあい下さいませ。