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098 幼女はかつてない程の強敵と出会う

 ルピナスちゃんのママから、上着を借りて、それをリリィに着せる。

 他にも代えのパンツだとか、色々とあれば良かったのだけど、借りられたのはそれだけだった。

 それと、ルピナスちゃんのママから魔族達について、情報を聞く事が出来た。


 村の皆と別れた私達は、ラークの家に向けて再び出発し、何事も無く無事に到着した。

 静かに家のドアを開けて中に入ると、家の中は、しーんと静まりかえっていた。

 私達は音をたてないように、こそこそと静かに家の中を調べ出す。


「いないッスねー」


「うん。何処にいるんだろう?」


 私とトンちゃんが、こそこそと話していると、ルピナスちゃんが鼻をクンクンしだす。

 そして、次にルピナスちゃんのお耳が、ピクピクと動いた。


「ジャスミンお姉ちゃん。たぶんこっちだよ」


 ルピナスちゃんはそう言うと、足音が出ていないとは思えない程の、凄い速度で走り出した。


 ルピナスちゃん凄い!

 と言うか、もの凄く速いよ!

 って、リリィも凄い!

 余裕でついて行ってる!?


 私はルピナスちゃんを必死に追いかけるが、あまりにも速くて追いつけない。

 と言うか、音を立てずに進むので精一杯だ。

 すると、トンちゃんが私の肩の上から、私の頬をつんつんと突いた。

 そして、呆れた顔をして口を開く。


「ご主人。風の加護を受けているんだから、飛んだ方が速く移動できるッスよ」


 あ。

 そうだよね。

 すっかり忘れていたよ。


 私は魔法を使って宙を舞う。

 おかげで、かなり快適に進んで、すぐにルピナスちゃんに追いついた。


 それにしても、ラークのお家広すぎだよ。

 結構進んだよ?

 私、最初こんなに広いお家の中を、猫ちゃんの姿で動き回ってたんだね。

 迷子にならなくて良かったぁ。


「いた。ママが言ってた通りだよ。パパも一緒」


 ルピナスちゃんがそう言って、いくつかある部屋のドアの前に立った。


 やっぱり、ルピナスちゃんのパパもいたんだね。


 ドアは少しだけ扉が開いていて、私にも部屋の中の話声が聞こえてきた。

 私は声の主を確かめるように、そっとドアの隙間から、部屋の中を覗いた。


 おじさん……。

 早く、早く助けてあげるからね!


 ルピナスちゃんのパパの目には、光が無かった。

 それもそのはずだ。

 ルピナスちゃんのママから話を聞かなければ、その理由がわからなかっただろう。

 ルピナスちゃんのパパの目から光が消えた理由。

 それは、魔族に操られているからだ。

 ベルゼビュートの能力ではない。

 別の魔族がいるのだ。

 スミレちゃんに思い当たる魔族がいないか聞いてみたけど、人を操る魔族が多く存在するようで、わからないようだった。

 だけど、私には一人、会った事は無いけど思い当たる魔族がいた。


 前世の私の記憶が正しければ、多分だけど……って、あれ?

 オぺ子ちゃん?


「いいよいいわよ! はい! そうそう! そのポーズ!」


「あ、あのさ。本当にこんな事で、ルピナスちゃんのお父さんを、元に戻してくれるの?」


「もちろんよ!」


 え?

 何この状況?


 私の目に映ったのは、とてもとても不思議な光景でした。

 まず、不思議なのがオぺ子ちゃん。

 何故か猫にされたはずのオぺ子ちゃんは、元の姿に戻っていたのだ。

 そして、オぺ子ちゃんは可愛いポーズをしていた。

 そんなオぺ子ちゃんをケット=シーの黒猫ちゃんが、カメラを構えるようなポーズで、色んな角度から見ている。

 極めつけは、ルピナスちゃんのパパがホワイトボードを持って、光の角度を調節していたのだ。


「何あれ?」


 リリィがいぶかしげに、部屋の中の様子を見つめる。


 うん。

 私もそう思うよ。

 本当に何やってるんだろう?

 でも、どうしよう?

 これ、今出て行っちゃダメなのかな?

 って、あ。

 ルピナスちゃんが笑いを堪える為に、お口をおて手で塞いでる。

 やーん可愛い。

 ルピナスちゃん頑張って!

 

「あー。わかったなのです。あれは、前世のベルゼビュート様の真似っこなのよ」


「真似っこ?」


「はいなのです。前世のベルゼビュート様は、よくああして猫たちをカメラで撮っていた様なのです」


 あー。

 それで真似っこ。

 なんだか、そう言われると可愛く見えてきたよ。


「はい。じゃあ、次は脱いでみよっかー」


 おっとー?


「え? そ、それは」


「あは。いいじゃない。男なんだから」


「で、でも」


「ほらほら。早く早く」


 鼻息を荒くして迫るケット=シーに、体を縮めるようにオぺ子ちゃんが怯える。


 こ、これは!

 凄いよオぺ子ちゃん!

 なんだか、とってもやらしいよ!

 っじゃないでしょ!

 アウトアウト!

 男の娘相手でも、これはアウトだよ!


「ちょっと待ったーっ!」


 私は勢いよく扉を開けて、部屋の中へと入った。


「そこまでだよ! ケット=シーちゃん!」


「あら? 誰かと思えばアナタか。あは。ようこそいらっしゃいました」


「ジャスミン。それに、リリィとルピナスちゃんも。皆、来てくれたんだ」


「うん。オぺ子ちゃん! ラークはどこ? それにたっくんが来なかった?」


 私がオぺ子ちゃんに訊ねると、オぺ子ちゃんが部屋の隅っこに指をさした。


「ラークはあそこに」


 え?


 オぺ子ちゃんが指をさした方に目を向けると、部屋の隅っこで寝ているラークの姿があった。


「ラークさ。魔族に、フェニックスっていう魔族だと勘違いされてて、ふてくされて寝ちゃったんだ」


 子供か!?

 あ。子供だ。


「タイムさんは見てないよ」


「あの馬鹿、先に出て行ったわりに、全然使えないわね」


「あは。私わかっちゃったかも」


 私達の会話を聞いていたケット=シーが、愉快そうに笑いだす。

 その様子を私達が訝しく見ていると、ケット=シーが目を閉じて上を向いた。


「アナタ達に良い事を教えてあげる」


 ケット=シーが目を開けて、私と目を合わす。


「私はアスモデ」


 その時、ケット=シーの姿がみるみる大きく、違う。

 姿を変えていく。


「魔族と、私を知る皆からは『色欲幼女』なんて、呼ばれているわ」


 ケット=シー改めアスモデは、言葉を言い終わる頃には、完全に姿を変えてしまった。

 その姿は、悪魔の羽と尻尾を生やした、私と同じくらいの見た目の女の子だった。


 やっぱり。


 私は心の中でそう思った。

 私の予想は当たっていたのだ。

 前世で七つの大罪をネットで調べた事があり、ベルゼブブが暴食で知られ、色欲にアスモデウスと言う名があった。

 アスモデウスは、アスモデとも呼ばれている。

 ルピナスちゃんのパパが操られている事を聞いた私は、疑問に思った。

 何故、ルピナスちゃんのママだけ、操られなかったのかと。

 そして私は気がついたのだ。

 その答えが、操った魔族の正体が、魅了能力を持つ女の魔族だからだと。


 でも、まさか黒猫のケット=シーちゃんの正体がアスモデウス、アスモデだったなんて。

 それにしても、この子凄い。


 私は、私と同じくらいの見た目となったアスモデを見る。


 見事なまでの幼児体型。

 つり目で八重歯がチラ見している、小悪魔っぽい感じの可愛い顔立ち。

 そして、大きめぶかぶかのタンクトップ。


 って、あれ?

 下穿いてない?

 あ。穿いてる!

 穿いてるよ!

 今一瞬チラッと見えたけど、パンツだけ穿いてるよ!

 って言うか、なんなのこの子!

 もの凄く、雰囲気がエロかわだよ!


「あは。そんなに見つめちゃいやん」


 と言いながらも、タンクトップを少しだけたくし上げて、パンツをチラ見させるアスモデちゃん。


「アスモデちゃんが、ケット=シーの正体だったなの!? ヤバいなのよ! 噂にたがわぬエロさなのよ!」


「く! 私とした事が、ジャスミンの前で、他の子に目を奪われるなんて!」


 あー。

 うん。

 これ本当に、かつてない程やばいかも。

 だってそうでしょう?

 一番頼りになるリリィが、完全に戦意喪失してるよ? 

 ほら見て?

 いつもだったら話を聞かないあのリリィが、自分の頬をパンパン叩いて、目を覚ませとか言ってるよ?

 あ。

 今度は壁に頭を打ち始めちゃった。

 うふふ。

 でも、リリィありがとー。

 おかげで、私は冷静になれたよ。

 ど、どうにかしなきゃ。

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