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096 幼女も時には凹みます

 ラークの家へ向かう途中、私に抱っこされているリリィが話しかけてきた。


「頭の上で眠っているのって、精霊でしょう? 何処で知り合ったの?」


 あ。そうだ。

 紹介するの忘れてたよ。


 私は猫ちゃんにされてからの事を、簡単にリリィに説明をした。

 すると、リリィは私を見上げて微笑んだ。


「そう。本当に村の近くにも精霊がいたのね。ジャスミンの言った通りになって、良かったわね?」


「え? 私、そんな事言ったっけ?」


「ジャスミンったら、覚えていないのね? 言っていたわよ」


 リリィはそう言うと、クスクスと可笑しそうに笑いだした。


 うーん。

 でも、たしかに言ったような気がする。

 いつだったっけ?


 私が思い出そうとしていると、私の肩の上で座っているトンちゃんが、よいしょと立ち上がる。


「ご主人。そろそろッスよ」


 そう言って、トンちゃんはくるりと回転しながら飛んで、私の肩から離れた。

 私はトンちゃんの言葉でハッとなり、ルピナスちゃんを見た。


「ルピナスちゃん。ここから先は危ないと思うの。だからルピナスちゃんは、ここで隠れて待っていて?」


 私がそう言うと、ルピナスちゃんが目をうるうると潤ませる。


「ううん。私もジャスミンお姉ちゃんと一緒に行く」


 うう。

 めちゃくちゃ可愛いよ!

 出来る事なら一緒にいたい!

 でも、今更だけど危険な場所に連れて行けないし……。


「幼女先輩。さっきの地下での出来事を考えたら、一緒に連れて行っても大丈夫なのですよ」


「え?」


「ケット=シーの動きについていくどころか、捕まえていたなのです。スピードだけなら、私より高いなのです」


「そうなの!?」


 私は驚いてルピナスちゃんの顔を見る。

 目をくりくりさせたいつも通りの可愛いそのお顔に、思わずニヤケそうになるのを首を横に振って抑えて、もう一度見る。


「ルピナスちゃんって、そんなに凄かったんだね?」


「うーん。わかんない」


「そっかー。わかんないかぁ」


 可愛いなぁ。もうっ。


 私は耐えられなくなり、ルピナスちゃんの頭をなでなでする。


「ご主人。ニヤケてないで早く行くッスよ」


「あ。そうだった」


「しっかりして下さいッスよ~。ハニーがこのままじゃ、ボクとしてはお先真っ暗なんスから」


「あはは。ごめんね」


 反省しよう。

 リリィが相変わらずすぎて、この状況をつい軽んじてしまっていたよ。

 村の皆も猫ちゃんにされちゃってるし、もっと真剣に向き合わないとだよね!


 今も猫にされてしまった村の皆と、何度もすれ違っていた。

 それなのに、私は気を抜きすぎだったのだ。

 私が、しっかりしよう! と、気合を心の中でいれたその時、ぞろぞろと猫ちゃん達が私達を囲うように集まり出した。


 え!?

 な、なに!?


 私がその様子に困惑をしていると、私達を囲む猫ちゃんの内の一匹が口を開く。


「良かったわ。ジャスミンちゃんとルピナスちゃんは無事だったのね」


 あ。

 その声は。


「ビリアお姉さま?」


「そうよ。気がついてくれて嬉しいわ」


 ブーゲンビリアお姉さんが答えると、私に抱っこされているリリィが、ぴょんっと地面に下りた。


「ビリア。ここにいる猫は、みんな村人なのね?」


「そうよ。って、貴女リリィちゃんなの?」


「ええ。それより、何かあったの? 私達は今、先を急いでいるのだけれど?」


「実は……」


 ブーゲンビリアお姉さんが後ろを向く。

 すると、ブーゲンビリアお姉さんの後ろから、2匹の猫ちゃんが現れた。

 そして、2匹の猫ちゃんが私の目の前に来ると、私を見上げた。


「ジャスミン。君だけでも逃げるんだ」


「そうよ。なにもジャスミンが、魔族なんかと戦う必要なんてないじゃない」


「パパ? ママ?」


 その目は悲しそうで、私を本気で心配していてくれている目だった。

 私はそのパパとママの目を見て、少しだけ目に涙が溜まった。

 しかしその時、パパとママが一瞬だけピクリと体を震わせ、態度が急変する。


「と言うのは冗談で、ジャスミン。何とかしてくれ!」


 え?


「そうよ。このままじゃ、部屋の掃除も出来ないし、食べ物だって困るでしょう?」


 ええぇーっ!?


「いやあ。本当はジャスミンの良き父として、逃げろと言いたい所なんだよ?」


 言いたいと思うなら、それを貫いた方が良いと思うな。


「私だって、大事な娘に危険な事をさせたくないのよ?」


 だったら、させないように態度で示した方が良いよ。


 私はパパとママの発言に、がっかりして落ち込む。

 すると、ブーゲンビリアお姉さんが慌てて、私とパパとママの間に立つ。


「じゃ、ジャスミンちゃん。お父さんもお母さんも、本心ではないのよ? ほら。今はこんな状況だし、色々と。ね?」


「ビリアお姉さま。……ありがとー」


 と言いつつもショックが抜けなくて、私がしおれていると、今度はルピナスちゃんが私の頭を撫でてくれた。


 うう。

 ルピナスちゃんは、やっぱり天使だよ。


「大丈夫よジャスミン! 精霊と契約してるんだもの。魔族なんて怖くないわよ!」


「そうだぞジャスミン! 精霊と契約していれば、百人力だ!」


 パパもママも酷いよ。

 そりゃあ、私だって元々、パパとママを助けようって思っていたよ。

 でも、上げて落とすような言い回しなんてされたら、私だって傷つくんだもん。

 最初から、助けてって言ってくれればいいのに。

 こんな言い方されたら、私だって、私だって……。


「パパもママも大っき――んーっ!?」


 私が大っ嫌いと叫ぼうとした時、背後から誰かに手で口を塞がれる。

 そして、すぐに私の口から手が離されたので、私は慌てて口を塞いだ人物を見て驚いた。


「ルピナスちゃんのママ?」


 私の口を塞いで言葉を止めたのは、ルピナスちゃんのママだった。

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