090 幼女はマスコットキャラを御所望です
たっくんを撫で繰り回してから、私達は村に戻る事にした。
そして、噴水広場の地下から地上に出てくると、丁度その時トンちゃんの声が聞こえた。
「ご主人~! 捜したッスよー! こんな所にいたんスねー」
「あ。トンちゃん」
トンちゃんは私達に近づくと、私の頭の上で寝ているラテちゃんを見て、嫌そうな顔をした。
「まさかとは思ったけど、ラテと契約を結んだッスか?」
「あれ? トンちゃん、ラテちゃんの事を知ってるの?」
私がそう訊ねると、トンちゃんはため息を一つしてから答えてくれた。
「ボク達精霊は、みんな大精霊様に生を授かるッスけど、ボクとラテは同期なんスよ」
「へぇ。そうなんだぁ」
それなら、トンちゃんとラテちゃんって、姉妹みたいなものなのかな?
というか、精霊さんは大精霊さんに生んでもらうんだね。
大精霊さんかぁ。
ちょっと会ってみたいかも。
精霊さんが可愛い系だから、大精霊さんは綺麗系なのかな?
などと、私が妄想で夢を膨らませていると、トンちゃんが何かを思い出したように急に慌てだす。
「そんな事よりご主人! 大変ッス! 大変な事になってるッス!」
「え? 大変な事?」
「何かあったの?」
ルピナスちゃんも、トンちゃんの慌てぶりに首を傾げて訊ねる。
「ハニーが、村の住人の殆どの人が、猫になっちゃったッス!」
「ええぇっ!?」
私は驚き、ルピナスちゃんとたっくんの顔を見た。
ルピナスちゃんも私と同じように驚いて、私と目を合わす。
そして、たっくんが「やられた」と言って、顔をしかめた。
「ベルゼビュートの狙いはなんだ? 俺とジャスミンだけを、ターゲットにしていたものだと思っていたが」
「村の皆を、猫ちゃんにする理由ってなんだろう?」
「猫ちゃん好きなのかな~?」
「ルピナスちゃん。流石にそれは無いと思うぞ」
「にゃーにゃーと煩い猫ッスね。この猫どうしたんスか?」
トンちゃんがたっくんを睨みつける。
「あ。そっか。トンちゃんは猫ちゃんの言葉が、わからないんだよね? この猫ちゃんは、たっくんなんだよ」
「え? たっくん? それって、あのタイムとか言う名前の、フェニックスのたっくんッスか?」
そう言って、トンちゃんは驚きの表情をしてたっくんを見た。
「うん。ついでに言うと、さっきまで私も猫ちゃんにされていたんだよ」
「えええぇっ!? マジッスか!? あ。もしかして、あの時の三毛猫ッスか!?」
「うん。そうだね。ラークの家にいた三毛猫だよ」
「どうりで見つからないわけッスよ。何でボクは気付けなかったッスかねー」
トンちゃんが頭を抱えるようにして、がっくりと項垂れた。
「でも、おかげで色々わかったッス。ご主人も猫にされたせいで、風の加護が及ばなかったんスね。ラテと契約したのも、大地の加護を受けて元に戻る為だったんスね」
「正解」
私がそう言ってパチパチと拍手をすると、ルピナスちゃんも真似して拍手をする。
拍手をされたトンちゃんは、あからさまに不満げな顔をした。
「ボクが不甲斐無いばかりに、ラテなんかに良い所を取られて、気分が悪いッス」
ラテなんかって……。
トンちゃんってもしかして、ラテちゃんと仲悪いのかな?
私がそんなことを考えていると、トンちゃんが私の顔を見てため息をついた。
「さっきも言ったけど、ボクとラテは同期ッス。しかも、お互い相反する属性ッスから、ライバル意識があるんスよ」
「あ。そうなんだ」
そっか。
火は水と、風は土と相反し合うんだよね。
それでライバル意識があるから、自分が出来なかった事をされちゃうと、もの凄く悔しいんだね。
トンちゃん可愛いなぁ。
私はトンちゃんが可愛く見えたので、頭を撫で始める。
すると、トンちゃんがしかめ顔で頬を染めた。
本当に、トンちゃん可愛いなぁ。
「取り込み中に悪いんだが、ジャスミン。大地の加護を使って、俺とトンペットが、会話が出来るようにしてくれないか?」
「え? そんな事出来るの?」
「ああ。ジャスミンなら、加護を魔力に変換して、イメージして魔法を飛ばせば出来る。今はラテールが眠ってるから、強力な加護は受けられないが、その位なら出来るはずだ」
そうなんだ。
イメージして魔法を飛ばせば良いんだね。
うん。
それなら出来そうかも。
「うん。わかったよ」
私は目をつぶり、猫ちゃんと楽しくお喋りをするトンちゃんを想像した。
そして、妄想を膨らませ、目を開けてたっくんを見た。
「えい!」
私は掛け声とともに、たっくんにポンッと魔法をかける。
すると、たっくんは光に包まれた。
「じゃ、ジャスミン!?」
数秒後にたっくんの周囲から光が消えて、たっくんが姿を現した。
「可愛いーっ!」
ルピナスちゃんがたっくんを見て、目をキラキラとさせる。
「ジャスミン。これは?」
「お喋りが出来る猫ちゃんだよ!」
たっくんは私の返事を聞いて、無言で自分の前足を見る。
「これ、猫って言うより、最早二足歩行の顔がデカい化け猫ッスね」
「化け猫じゃないよ! 私がイメージするケット=シーの姿だよ!」
はい。
たっくんは見事に進化を遂げて、トンちゃんやラテちゃんと同じような二頭身で、二足歩行が出来る私のイメージするケット=シーへと生まれ変わりました。
マスコットキャラ化したと言っても、過言ではありません!
やったねたっくん!
人の言葉が喋れるよ!
可愛いなぁ。




