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089 幼女は猫を愛でるもの

 困ったにゃぁ。

 私の頭の上で眠っちゃった。

 眠ってるのを起こしちゃったら、可哀想だし……うーん。

 それに、気をつけないと落ちちゃうよね?


 私はラテちゃんに気をつけながら、出来るだけ頭を揺らさないように、ゆっくりと腰を下ろす。

 すると、それを見てたっくんが口を開いた。


「ジャスミン。そんなに気を使わなくても、大丈夫だぞ」


「でも、落ちちゃうし……って、あれ? たっくん?」


「ん? どうしたんだ?」


 私はたっくんをマジマジと見ながら驚いた。


「何で私、たっくんがまだ猫ちゃんなのに、言葉がわかるの!?」


「あー。それか」


「ジャスミンお姉ちゃんも、猫ちゃんとお話が出来るようになったの?」


「なんでかはわからないけど、言葉がわかるみたいなの」


 私が驚きながらルピナスちゃんに答えると、たっくんが理由を教えてくれた。


「大地の加護を受けたから、言葉がわかる様になっただけだ」


「あ。そっか。ラテちゃんのおかげなんだにゃ」


「だな」


 なるほど。と、私は納得する。


「それよりジャスミン」


「なあに?」


「とりあえず、服に着替えたらどうだ?」


「え?」


 私は言われて、今の自分の姿を確認する。

 そして、全裸になっていた事に気がついた。


「な、なんでー!?」


 って言うか、なんで気がつかなかったの私!?

 バカなの!?


「ほら。一応あっちの部屋に着替えがあるから、早く着替えた着替えた」


「ありがとー。たっくん」


 私は涙目で感謝して、教えて貰ったお部屋まで駆けこんだ。

 そして、お部屋の中に入って驚いた。


 わあ。凄い。

 下着は全部新品だにゃ。

 それに、お洋服もいっぱいある。

 わあ。これ可愛いかも。

 あ。こっちも凄く可愛い。

 凄い凄ぉい。

 って、ダメだよ私!

 今はオシャレなんて、してる場合じゃないもん!

 まずはパンツを穿いて、ティーシャツとヒラヒラのミニスカート。

 それから靴下と……あ。

 良かった。

 ちゃんと靴もあったにゃ。

 厚底じゃない靴を履くの、何年振りだろう?


 着替え終わった私は、ルピナスちゃんとたっくんのいる部屋に戻る。


「ジャスミンお姉ちゃん可愛い」


「ありがとー。ルピナスちゃん。でも、ルピナスちゃんも可愛いにゃ」


 ルピナスちゃんが満面の笑みで、私を迎えてくれる。

 私は嬉しくなって、ルピナスちゃんの頭を優しく撫でた。

 だけど、頭を撫でながら、私は久々に違和感を覚えた。


 厚底の靴を履いていないと、やっぱり違和感を感じるにゃ。

 ルピナスちゃんってば、私より身長が高いんだもん。

 身長が低いと、こういう時に、なんとも言えない気持ちになるよね。


 などと考えていると、たっくんが訝しげな顔を私に向けてきた。


「そのたまに、にゃってつけるのなんなんだ?」


「あ」


 私は恥ずかしさで、自分の顔が赤くなるのを感じた。


「えと、ね。せっかく猫ちゃんになれたから、語尾ににゃってつけたら可愛いかなって思って」


 恥ずかしい。

 恥ずかしすぎるよぅ。

 私のバカー!


「ジャスミンお姉ちゃん可愛いよ」


 ルピナスちゃんがニコニコ笑顔で私に抱き付く。

 そして、たっくんは呆れた顔で私を見た。


「どうりで、中途半端だったわけだ」


「それは言わないで!」


 ルピナスちゃんが私の頭を撫でようとして、私の頭の上で眠るラテちゃんを撫でる。


「って、そうだよ。ラテちゃんの事だけど、何で大丈夫なの?」


「ラテールは眠っている時、大地の加護の殆どを魔力に変換して、自分の安眠の為に使っているんだよ。だから、今ジャスミンの頭上には、特殊な力場が発生してる。試しに、頭を傾けてみなよ」


「う、うん」


 私は心配しながらも、言われた通りに首を曲げて、頭を傾けた。

 驚く事にラテちゃんは微動だもせず、まるで私の頭の上に縛り付けられたように、ピタリとくっついていた。

 それどころか、まるでそこが平地かのように、ラテちゃんの髪やドレスも全く傾く事がない。


「すごーい!」


 ルピナスちゃんが、目をキラキラとさせてラテちゃんを見る。


「ちなみに、ラテールが眠っている間は、最低限の加護しか受けられないからな」


「そうなんだ」


 じゃあ、大地の加護を使った強力な魔法なんかとかは、使えないって事だよね?

 でも、私も元々土属性の魔法は使えるんだし、何も問題ないかも。


「よし。ジャスミンが元に戻った事だし、次は俺の体を戻してもらいたい所なんだけど、こっからが問題だな」


「そっか。ケット=シーに戻してもらわないとだもんね」


「もしくは、ケット=シーを気絶させるか殺すかすれば、元には戻る」


「殺すのはダメ!」


「そうだよ! めっだよ!」


 私とルピナスちゃんに迫られて、たっくんが額から汗を流して「すまん」と、顔を引きつらせる。


「本当は気絶させるのも可哀想だけど、仕方がないよね」


「猫ちゃん可哀想」


「ルピナスちゃん。……よし。たっくんは、このままで良いかも!」


「おいこら。良いわけないだろ」


「えー。でも見てよたっくん。ルピナスちゃんが、気絶させられるかもしれないケット=シーの事を想って、こんなにもお目目をうるうるさせてるんだよ?」


「今の俺の状況が、可哀想だとは思ってくれないのか?」


 たっくんが顔をしかめる。

 それを見て、私は正直な気持ちを答えてあげた。


「凄く可愛いよ。たっくん」


「おい」


「うん。たっくん可愛い!」


「ルピナスちゃんまで」


 あ。

 たっくんが涙目になってる。

 涙目も可愛いなぁ。

 じゃなかった。

 さすがに可哀想だから、協力をしてあげよう。


「たっくん泣かないで? ちゃんと、元に戻してあげるからね」


「うう。ジャスミン」


 私はたっくんを抱き上げて、よしよしと頭を撫でてあげた。

 だけど、たっくんは撫でられた所で正気に戻って、暴れ出す。


「ば、馬鹿! やめろ! 恥ずかしいだろ!」


「ふっふっふー。観念してナデナデさせろにゃー!」


「私もやりたいにゃー!」


 そんなわけで暫らくの間、私はルピナスちゃんと一緒に、たっくんを撫で繰り回しました。

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