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084 幼女が始める異世界猫生活

 私の名前はジャスミン。三毛猫の子猫なの。

 今日はお友達の豆柴のシロちゃんと一緒に、追いかけっこしたり隠れんぼしたにゃ。

 隠れんぼしていたら眠くなっちゃったから、今からシロちゃんのモフモフに包まれて一緒にお昼寝するにゃ。


 って、お昼寝してる場合じゃないにゃ!


 私は肉球パンチで、シロちゃんのモフモフをモフモフする。


 さすがシロちゃんのモフモフ。

 私が気絶してる間に、優しく包み込んでいただけの事はあるにゃ。


 モフモフ。

 モフモフ。


 って、モフモフをモフモフしてる場合でもないにゃ!

 この状況を、どうにかしないと!

 そうにゃ!

 今の私は猫。

 猫になった今の私なら、シロちゃんとお話が!


「ワン!」


 うん。

 そんな都合の良い話無いよね。

 知ってたにゃ知ってたにゃ。

 だいたい猫と犬じゃ、別の動物だもん。


 私はキョロキョロと周囲を見回した。


 たぶん、ここってラークの家のリビングだよね?

 あ。

 そうだにゃ。

 私、リリィと一緒にラークの家に来たんだもん。

 リリィを捜そう!

 リリィなら、今の私にだって気付いてくれるはずだにゃ!


 そうと決まれば善は急げ。

 私はリリィを捜す為、ドアの隙間から部屋を出る。

 シロちゃんは、私の事を気にかけてくれているのか、後ろからついて来た。


 ラークの家の中って、結構広いんだにゃぁ。

 それと、シロちゃんを飼ってるからかにゃ?

 部屋のドアが殆ど開いてる。

 ラッキーだにゃ。


 部屋のドアが開いているおかげで、私は一つ一つ部屋の中を確認していく事が出来た。


 いないにゃぁ。リリィ。

 何処にいるのかにゃぁ?


 にゃぁっと私が悩んでいると、上から聞きなれた声が聞こえてきた。


「ご主人~。ご主人何処ッスかー?」


 トンちゃん!?


 私は声の聞こえた方へ顔を上げる。

 すると、そこには宙を飛ぶトンちゃんの姿があった。


「本当に何処行っちゃったッスかねー? 普通は契約してるから、居場所がわかるはずなんスけどね~」


 やっぱりトンちゃんだ!

 なんだか初耳な事を言ってるけど、今はそれどころじゃないよね!


ニャーニャー(トンちゃーん)!」


 あれ?

 私、猫の鳴き声しか喋れなくなってるにゃ。


「この家は猫も飼ってるッスか? ボク、猫は苦手なんッスよねー」


 トンちゃんと目が合うが、全く私だと気付いた様子はない。

 それどころか、嫌そうな顔をして、避けるように飛んでいく。


 嘘でしょう!?

 待ってトンちゃん!


ニャーニャニャニャ(トンちゃん気づいて)」 


 私が必死に呼びかけるも、トンちゃんは何処かへ飛んで行ってしまった。


 ど、どうしよう?

 本当の本当にヤバいよ。


 私が不安になっていると、シロちゃんが私の顔を舐めて、体をすり寄せる。


ニャー(シロちゃん)


 シロちゃん。

 なんていい子なんだろう。

 それに比べてトンちゃんってば、猫は苦手なんッスよねーじゃないにゃ!

 猫ちゃん可愛いでしょ!

 失礼しちゃうにゃ!


 その時、大きな影が私を覆う。

 私は何だろう? と影の正体を見上げて、その影の正体を見て目を輝かせた。


ニャニャー(リリィ)!」


「こんな所でどうしたの? 子猫ちゃん」


 リリィが優しく微笑む。


「あら? 子猫ちゃん。よく見ると、誰かに似ているわね」


 え?

 リリィ。

 もしかして、猫になっちゃった私がわかるの?


「うふふ。なんとなく、ジャスミンに雰囲気が似ているんだわ。ジャスミンが聞いたら、怒ってしまうかしら?」


 やっぱりそうだ!

 全然怒ったりなんかしないにゃ!

 リリィ大好き!


 そして、リリィが私に触れようとした時、背後からラークの声が聞こえてきた。


「ジャスミンの馬鹿は見つかったか!?」


「はあ!? 馬鹿はアンタでしょーが!」


 私の悪口を言われて、リリィが私に触れる前に、怒ってラークを睨みつける。


「あれ? 何で猫なんかが、俺の家に入りこんでんだよ!?」


「え? この子猫ちゃん、アンタの猫じゃないの?」


「んなわけねーだろ! 俺は犬派なんだよ!」


 ラークはそう言うと私の前までやって来て、私の首根っこを掴んで、私を持ち上げた。


ニャー(きゃー)!?」


「ったく、油断も隙もあったもんじゃねーぜ! 猫は外だ外!」


ニャニャニャニャ(うそでしょ)!? ニャーニャニャーニャ(まってラーク)!」


「猫は煩いんだよな! 静かにしろっての!」


「アンタの方がよっぽど煩いわよ。可哀想だから離してあげなさい」


「はあ? 寝ぼけてんのか? ったく。これだから女は!」


 ラークはそう言って、私を玄関から外に放り投げる。

 私は身軽な猫の姿だったおかげで、軽やかに地面に着地した。


「投げる事ないでしょ! 子猫ちゃんが可哀想じゃない!」


「うっせーな! ギャーギャー煩い事言うなら、ジャスミンなんか捜さないで、お前も追い出すぞ!」


「なんですってー!?」


 ガシャンッと、大きな音を立てて玄関のドアが閉められる。


 う、うわぁ。

 なんだか、リリィとラークが大変な事になっちゃったにゃ。

 どうしよう?

 止めに入りたくても、今の私にはどうすることも……。

 うぅ。

 オぺ子ちゃんが今の騒動を聞きつけて、止めに入ってくれることを祈ることしか出来ないにゃ。


 リリィの事が心配になり、私がオロオロしていると、そこに黒猫ちゃんがやって来た。

 そして、その黒猫ちゃんは私をジッと見つめて、目を細めて口を開いた。


「あは。作戦は成功ね」


 え?

 言葉がわかるにゃ!?


「どうしたの? 驚いている様だけど?」


「な、何を言っているのかわかったから……」


 私がそう返事をすると、黒猫ちゃんは可笑しそうに笑う。


「あは。おかしな事を言うのね? 今の私達は同じ猫なのだもの。言葉がわかって当然じゃない」


 黒猫ちゃんはそう言うと、私に近づいて、私の周りをぐるっと一周する。

 そんな中、私は妙な緊張感を感じて、動けずにいた。


「こうなっちゃうと、お得意の魔法も使えない様ね? 風の精霊の加護が消えているわよ」


「え? なんでその事を知っているの!?」


 私が驚いて質問すると、黒猫ちゃんはクスリと笑った。


「あは。何ででしょう? それより、良い事を教えてあげる」


「良い……事?」


 私が訝しげにそう聞き返すと、黒猫ちゃんが目を細めた。


「そうよ。アナタ、この家に来る途中で、猫に触れたでしょ?」


「う、うん」


「アナタが触れたのは、ケット=シーと呼ばれている魔族よ。アナタは、ケット=シーの呪いを受けたのよ」


「ケット=シーの呪い……」


「あは。知らなかった? ケット=シーの呪い」


 そんなの知ってるわけないにゃ。

 ケット=シーって、あの可愛い妖精さんの事だよね?

 この世界では魔族なの?


「ケット=シーの呪い。それは、自分に好意を向けて触った人間を、猫に変えてしまう呪い。人間達は、能力と呼んでいるわ」


 それじゃあ、あの時私が触ったから、こんな事になっちゃったって事だよね!?


「そして猫に変えられてしまうと、二度と元に戻れない」


「うそ……」


「あは。嘘じゃないわ。でも、良かったじゃない? アナタ一人が猫になるわけじゃないもの」


「どういう事?」


「ケット=シーに猫にされた者を、同じ様に好意を向けて触ってしまうと、その人間も猫になるの」


 黒猫ちゃんが妖美な笑みを浮かべる。


「アナタも触ってもらえたんでしょ? お友達に」


 リリィ……。


「アナタはもう二度と戻れない。お友達を巻き込んで、猫として一生を終えるのよ」


 どうしよう?

 触られてない。

 これ、言っても良いのかにゃ?

 可愛い黒猫ちゃんが、可哀想な雰囲気にならないかにゃ?

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