078 幼女に変態が集まるのは概念です
「いやいや。そんな、もったいぶる様な話じゃ無いッスよ。単純に、転生者は能力を持って生まれるんスよ。そして魔族の殆どの者が、転生者の成れの果てってだけッス」
「え?」
「あ。それと、前世を思い出した転生者は、能力が二つ持ちになるんスよ。結構ボク等の中では常識ッス」
「えええぇぇぇえっ!?」
転生者は能力を持って生まれる!?
魔族が転生者の成れの果て!?
前世を思い出したら能力二つ持ち!?
「ちなみに能力を調べる方法は、本人が気づくか、他者に教えてもらうしかないッスね。能力なんて言っても、普通に生活してると気がつかないようなものばかりッスから」
突然のトンちゃんのカミングアウトに、私は驚きすぎて最後には言葉を失った。
そして、フルーレティさんは先にネタをばらされて、微笑んだまま固まってしまう。
おかげで、何だか見た目が間抜けな事になっている。
「ついでに言っておくと、ご主人みたいな自分の能力に気がつかない人は、意外と多いッスよ。そもそも、能力を魔法だと勘違いする者もいるぐらいッスからね」
「そ、そうなんだね」
いきなり、凄い情報量が入ってきて、凄くびっくりだよ。
と、私が驚いていると、スミレちゃんが口を開いた。
「知らなかったなのよ」
「え?」
声に振り向くと、スミレちゃんも驚いていて、目を丸くしていた。
「スミレちゃんも知らなかったんだ?」
「はいなのですよ。あれ? それなら、私も能力が二つになっているって事なの!? 全然気がつかなかったなのよ!」
スミレちゃんが頭を抱えて驚く。
するとそこで、フルーレティさんが我に返って立ち上がり、スミレちゃんの疑問に答える。
「やっぱり、バティンも前世の事を思い出していたんだね。まあ、気がつかなかったのも仕方がないさ。能力二つ持ちの真相は、魔族の間でも一部の者しか知らない事なんだ」
フルーレティさんの言葉を聞くと、リリィが難しい顔をしながら質問をする。
「普通に生活しているだけだと、気がつかない場合もあるのよね? それだと、ジャスミンの転生者としての能力もわからないわよね?」
「ジャスミンが転生者!?」
たっくんが驚いて、目を丸くして私の顔を見る。
「うん。そうなんだ」
私が苦笑して答えると、たっくんは深く息を吐いて同じように苦笑した。
「でも、私の能力って何だろう?」
今までの経験上、当たり外れがあるのは間違いないもんね。
どうせなら、便利な能力が良いなぁ。
私の疑問に、トンちゃんがクルクル回りながら目の前に飛んできて答える。
「ご主人の能力は、複数の属性を操る能力と、無意識に変態を引き寄せる能力ッスよ」
「え?」
「さっき契約した時に、ボクの中にご主人の情報が流れてきたッスよ」
「ええぇえっ!?」
「精霊と人の契約は、精霊の加護を共有させてあげる代わりに、契約する者の情報を精霊に渡すように出来てるッスよ」
「そうだったんだ。って、そんなの聞いてないんだけど?」
私は今更知らされた事実に、ムッとした顔でトンちゃんを見る。
だけど、トンちゃんは気にした様子もなく、目の前で円を描くように飛び回る。
そう言う事は、もっと早く……あれ?
ちょっと待って?
今、トンちゃんが凄い変な能力を言わなかった?
えーと……。
無意識に、変態を……?
「嘘でしょう!? トンちゃん! 普通に話し続けるから、うっかりスルーしちゃうところだったよ! 無意識に変態を引き寄せる能力って何!?」
私が必死に問い詰めると、トンちゃんは呆れた様子で口を開く。
「あー。そっちッスか。ぷぷっ。くだらない能力ッスよね~? 最初知った時は、思わずボクも笑いそうになっちゃったッス」
笑えない!
笑えないよ!
って、あれ?
「ちょっと待って? トンちゃん。それじゃあ、私の肩の上で微笑んだのって?」
「あれ? 笑いを堪えていたッスけど、もれちゃってたッスか? いや~。仕方ないッスよね」
私はそのあまりにも残念な事実を知って、がっくりと項垂れる。
最悪だよ。
あれ、微笑んでたんじゃなくて、笑いを堪えてただけだったんだ。
ううん。
今はもう、そんな事はどうでも良いよ。
複数の属性を操るって言うのは、凄く納得な能力だし、良い能力だと思う。
だけど、無意識に変態を引き寄せる能力って何?
おかしいでしょう!?
そんなおバカな能力なんてあるの!?
どうりで、前世の事を思い出してから、変態ばかりが出てくるわけだよ!
しかも無意識って……。
せめてオンオフの選択技がほしいよ。
当たり外れの差がありすぎるよ。
と、その時、リリィが腕を組んで私とトンちゃんの目の前に立つ。
「黙って聞いていれば、好き勝手に言ってくれるわね。ドゥーウィン」
「リリィ? ありがとうリリィ。でも、いいんだよ。トンちゃんが悪いわけじゃないんだもん」
そう。
悪いのは、こんなおバカな能力を持ってしまった私。
「いいえ。いい事なんてないわジャスミン。ジャスミンは能力なんてなくったって、全てを魅了し、変態に変える魅力があるのよ! 変態を引き寄せる能力なんて関係ないわ!」
「そうなのよ! そんな能力、関係ないなのよ! 幼女先輩は能力なんて無くても、全世界の人々を、萌え豚に変える実力があるなのよ!」
あのぉ。
変態代表のリリィ、それにスミレちゃん。
2人ともよく考えて?
ほら。
気がつかない?
それ、全然フォローになってないよ?
て言うか、そこなの? って感じ。
それにね、2人とも。
むしろ、私が変態の元凶みたいな言い方やめて?
それ、本当に凄く嫌だよ。
私がそんな事を考えていると、ニクスちゃんが恐ろしい言葉を放つ。
「せやなぁ。たしかにウチも、同じ女の子を好きになるやなんて思わんかったし、ジャスにはそれだけの魅力があるんは確かやね」
同性愛者は変態じゃありません!
恋愛の価値観のお話です!
と、私が心の中で否定していると、リリィとスミレちゃんがうんうんと頷いた。
すると、トンちゃんが真剣な面持ちで口を開いた。
「なるほどッス、自ら変態を生み出して、変態を取り入れるッスか。ご主人流石ッス。そこまで考えていたとはッス」
「考えてないよ!」
そして私は考えた。
よーし!
この能力の事は忘れよう!
うん。
それがいいよね。




