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076 幼女で繋がる百合友の輪

 ルピナスちゃんに続いて、アマンダさんを見送り終わると、リリィが私に「ねえ?」と話しかけてきた。


「ジャスミン。まだホテルに戻らないの?」


「うん。まだ確認したい事があるから」


「確認したい事?」


「うん。ニクスちゃんもごめんね。つきあわせちゃって」


「え、ええんよ。そんなん気にせんといて」


 私がニクスちゃんに謝ると、ニクスちゃんが一瞬だけ頬を赤らめて微笑んだ。


 あれ?

 ニクスちゃん?

 何で今頬を赤らめたの?

 あ。

 そっか。

 ずうっと露天風呂にいたから、風邪でもひいたのかも。


「ウチな、ジャスがあんなにかっこいい子やなんて、思わんかったわ」


「え? どういう事?」


「私にはわかるなのよ」


 うんうんと、スミレちゃんが頷く。


「うふふ。ニクスもジャスミンの魅力に気がついたのね」


 え?

 ちょっと待って?

 この流れやめよ?

 凄く嫌な流れだよ?

 風邪、そう。

 風邪をひいたって事にして下さい!


「ウチ、ジャスの事好きになったみたいなんよ」


 ほらー!

 やっぱりそうだよぉ!


「フルーレティさんに立ち向こうた時のジャスの姿が、かっこようて忘れられんのや」


 ニクスちゃんが乙女の顔で私を見る。


 やめて!

 そんな可愛い乙女の顔して、私を見ないで!


「ジャスの魔法は、フルーレティさんと一緒に、ウチの中にある恋の常識も吹き飛ばしてしもうたんや」


「上手い事言うッスね」


 上手い事言うッスねじゃないよ!

 ニクスちゃんは、普通の女の子だと思ってたのに!

 結局そっちにいっちゃったよ……。


 私は頭を抱えて項垂れる。


 せめてニクスちゃんは、リリィとスミレちゃんみたいな変態にはならないでほしいよぉ。


「そう言うわけやから、ごめんなリリー。負けへんで」


「受けて立とうじゃないの」


「私を忘れてもらっては、困るなのよ」


 リリィとニクスちゃんとスミレちゃんが、三人で拳を合わせる。


 何これ?

 本当に何これ?


 その時、オネエさんが「あら嫌だわ! 私ったら!」と、大声を上げた。

 その声に驚いて、私はオネエさんに顔を向ける。

 すると、私はオネエさんと目が合って、オネエさんが私の側まで早足で近づいてきた。


「ごめんなさいねお嬢ちゃん。お嬢ちゃんのお兄さん、気絶しちゃったから私の部屋で寝かせてあげてるのよ」


「え? 私のお兄ちゃん?」


 だ、誰だろう?

 私にお兄ちゃんなんて、いないはずだけど……。

 お兄ちゃんみたいな人ならって。


「あー! たっくん!?」


 そう言えば、たっくんの事を忘れてたよ!

 でも、気絶したって、いったい何が起きたんだろう?


 私が顔を青くすると、オネエさんが困り顔で苦笑する。


「どこも怪我はしていないのよ。でも、さっき帰ったメイドさんいたでしょ? 最初あの子が私を見るなり襲ってきて、その時の衝撃に巻き込んじゃって、それで気絶しただけなのよ」


「そ、そうだったんだ」


「そうよ。その場に放置も出来ないから、私の部屋に運んで寝かすようにサキュバスの子に頼んだのよ」


「ありがとう」


「いいのよ。それより、今から起こしてくるから、お嬢ちゃんはここで待っててちょうだい」


「うん」


 私が返事をすると、オネエさんははウインクをして歩いて行った。

 すると、スミレちゃんが「私も一緒に行くなのよ」と、オネエさんについて行く。

 オネエさんとスミレちゃんを見送ると、トンちゃんが私の耳元で囁いた。


「あのオカマ一人に行かせたら、眠ってるご主人のお兄さんが何されるかわからないから、一緒に行ったみたいッスよ」


「あ。そうなんだ?」


「放っておけばいいのにね」


「ハニー。ボクもそう思うッス」


 いやいや。

 何言ってるの2人とも。

 ナイス判断だよスミレちゃん。

 あ。そうだ。

 それよりもだよ。


「フルーレティさん。聞きたい事があるんだけど」


 私がフルーレティさんに話しかけると、フルーレティさんが私の目の前に来てひざまずく。


「何だい? お姫様」


 な、なんか恥ずかしい。


「えっと、私思ったんだけど、オネエさ、あ。プルソンさんの居場所を見つけられる能力で、フェニックスの居場所は捜せないのかなって。フルーレティさんも捜していたんでしょう?」


「ああ。その事か」


 フルーレティさんは苦笑して答える。


「残念ながら、それが出来なかったんだよ。理由はわからないけどね」


「死んだんじゃないッスか?」


「いいや。プルソンの能力は、死んだ相手もどこで死んだかわかるんだ。だから、私もお手上げでね」


 フルーレティさんはそう言うと、ニクスちゃんを見た。


「それで関係者である君を、情報を聞きだす為に攫ったんだ」


 ニクスちゃんに私も皆も注目する。

 すると、ニクスちゃんは少しの間だけ沈黙して、ため息をした。


「もうバレてしまったし、隠しきれんわなぁ」


 ニクスちゃんが苦笑して、私を見た。


「ごめんなジャス。今まで黙っとって」


「ううん。いいよ。何か理由があるんだよね?」


「せやね。ウチが師匠の事黙っとったんは、師匠が魔族の裏切者で命を狙われてるからや。それやから、簡単に師匠の事教えてしまえんやろ?」


 師匠?

 って事は、ニクスちゃんって、フェニックスのお弟子さんだったんだ?


「まあ、仕方がないわね。命を狙われてる相手の事を、友達相手と言っても、そう簡単に教えれないわ。私だって、もしジャスミンがそんな事になったら、絶対誰にも喋れなくなるもの」


「ありがとうな。リリー。そう言うてくれると、助かるわ」


 ニクスちゃんはそう言うと、目をつぶる。

 そして少しの間をそうした後に頷くと、深呼吸をして、ゆっくり目を開いて真剣な面持ちで口を開く。


「ウチも、ジャスと同じ転生者なんよ」


「え? えええぇぇえっ!?」


 さっきの告白とはまた違った、あまりにも唐突なニクスちゃんの告白に、私は大声を上げて驚いた。


「ウチの転生者としての能力は、対象を別のものに変える変換能力。その能力を使って、師匠を魔族から人に変えたんや」


 え?

 どういう事?

 何で私が、転生者だって知ってるの?

 ……あ。そうだ。

 露天風呂にいる時に、勢いで前世がどうとか言っちゃったんだっけ?

 って、そんな事はどうでも良いよ。

 転生者としての能力って何?

 そんなの私知らない。

 でも、変換かぁ。

 それなら、いくらオネエさんの能力でも、見つけられないのかも。


「ニクスも転生者だったのね」


「この喋り方は、前世の時の喋り方なんよ。って、そんなんどうでもええよね」


 ニクスちゃんはそう言って苦笑すると、柔らかな微笑みを見せた。


「師匠はな、今はトランスファって言う名前の村におるんよ」


「「トランスファ?」」


 私とリリィの言葉がハモる。


「ご主人もハニーも息ぴったりッスね。あれ? もしかして」


「うん。トランスファは」


 私とリリィが住んでる村なんだよ。と、続けようとした時、ニクスちゃんが目を見開いて突然大声を上げた。


「師匠!?」


 え?

 師匠?

 ここにフェニックスが!?


 その言葉に驚いて、私はニクスちゃんの視線を追う。

 そして、そこに立っていた人物を見て、さらに驚く事となった。


「た、たっくん?」

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