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075 幼女で繋がる友達の輪

「あれ? おデブさんとサキュバスのお姉さん達がいないよ?」


 トンちゃんと契約を結んで周囲を見ると、私はおデブさんとサキュバスのお姉さん達がいなくなっている事に気がついた。

 私がキョロキョロと姿を捜すと、フルーレティさんが「それなら」と話しかけてきた。


「流石に町の警備の者が来たから、上手く誤魔化す様に頼んだのさ」


「あぁ。……あはは」


 屋上と化した周囲を見て、私は苦笑した。


 つい忘れていたけど、結構大惨事だもんね。

 主に私のせいだけども……。

 でも、こんなのどう言い訳するんだろう?


 そう思った私の心を読んだのか、フルーレティさんが私に優しく微笑んだ。


「心配しなくても大丈夫さ。私には、これがあるからね」


 フルーレティさんはそう言うと、手のひらの上に氷の塊を出現させた。


 氷の塊?

 あ。

 そっか。


ひょうだ」


「正解」


 フルーレティさんがニッコリ笑う。


 そう言えばそうだったよ。

 フルーレティさんには、雹を作る能力があったんだよね。

 私この能力は、もの凄い戦いの中で使うんだーって思っていたけど、結局使わずに終わったんだっけ。

 でも、この雹がどうしたんだろう?


「これを持たせて、大きな雹が降ってきて、建物が壊れたって説明させてるんだ」


「なるほどぉ」


 って、いやいや。

 無理があるよ。

 って言うか、雹の使いどころそこなの?


 そこで、サキュバスのお姉さんが1人戻って来た。


「フルーレティ様。どうしましょう?」


 あ。やっぱりそうだよ。

 この感じ、やっぱり雹なんて無理がありすぎて、信じてもらえなかったんだ。


「ルピナスちゃんのお母様が、ルピナスちゃんを迎えに来てしまいました。寂しいです」


 って、そっち!?

 寂しいですって……。

 気持ちはわかるけど、紛らわしいよ。


 フルーレティさんが寂しがるサキュバスのお姉さんの腰に手を回し、体を密着させて慰める。


 フルーレティさんの慰め方って、何だかドキドキする。

 見た目がイケメンだから、凄く絵になるよね。


 私がそんな事を考えていると、ルピナスちゃんがサキュバスのお姉さんに近づいた。


「お姉さん。遊んでくれてありがとー。また遊ぼうね」


「うん。また遊びに来てね」


 サキュバスのお姉さんがしゃがんで、ルピナスちゃんの頭を撫でる。

 そうして、名残惜しみながら、私達はルピナスちゃんとバイバイをした。


 ルピナスちゃんを見送り終わると、アマンダさんが私に話しかけてきた。


「私もそろそろ戻る事にするわ。本当は魔族を野放しには、したくないのだけど」


 アマンダさんは、ルピナスちゃんとお話をしていたサキュバスのお姉さんを見て苦笑した。


「ジャスミンのお友達のスミレや、あの子と仲良くなったあのサキュバスみたいな魔族もいるのね」


 アマンダさんがそう言って優しく微笑むので、私もつられて微笑んだ。


「うん。アマンダさんも、もうお友達だよ」


「うふふ。あありがとう。あ。そうだわ。ジャスミン、貴女にこれを渡しておくわ」


 メイド服で今まで全く見えなかったけど、アマンダさんはネックレスをしていたらしい。

 アマンダさんは首元をごそごそとしだして、綺麗なネックレスを首から外して私に渡した。


「えっと、これは?」


「友情の証よ。この先それがあれば、何かの役に立つかもしれないわ。大事に持っていて?」


 わぁ。

 友情の証かぁ。

 そう言うの良いかも。


「うん。でもいいの?」


「もちろんよ」


 私も何かお返しを……。

 って、私、今何も持ってない。

 うぅ。

 我ながらがっかりだよ。


「私も何かお返ししたいけど、今は何も持ってないの」


「うふふ。そんなの、気にしなくて良いわよ」


 私が申し訳なさそうに話すと、アマンダさんは優しく微笑んでくれた。

 そこで、ネックレスの受け渡しを見ていたリリィが、私の手の上のネックレスを覗き込む。


「あらそれ、バセットホルンの紋章が入ってるのね?」


「え? そうなんだ?」


 バセットホルンとは、決して音楽などで使う楽器ではない。

 海底国家バセットホルン。

 その名の通り、海底で作られた国の名前で、魚人達の多くが暮らす国なのだ。


「私、初めて見たかも」


 バセットホルンって、殆ど海ばかりで、陸地が少ない所なんだよね。

 だから、魚人以外の人は、簡単に入国が出来ない所って印象だなぁ。


「そうよね。私達の村だと、見る機会が無いものね」


「うん」


「あれ?」


 リリィが突然驚くようなそぶりをして、アマンダさんを見た。


「バセットホルンの紋章がついた装飾品なんて、国の関係者しか持っていないはずだけど?」


「え? そうなの? じゃあ、もしかして、アマンダさんってこの国の偉い人なの?」


 私がそう訊ねると、アマンダさんは苦笑する。


「いいえ。残念だけど違うわ」


 そう否定すると、アマンダさんはカーテシーの挨拶をして微笑んだ


「私は貴女のお友達の一人になった、見た目通りのただのメイドよ」

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