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067 幼女はタオルを巻く事を覚えました

 男湯の立ち入り禁止となっていた露天風呂に足を踏み入れる事で、私はニクスちゃんを見つける事が出来た。

 わけなのだけども……。


「ニクスちゃん」


 私が恐る恐るニクスちゃんに近づいて名前を呼ぶと、ニクスちゃんが私に気がついて振り向いた。


「ジャスも捕まったん?」


「ううん。違うよ。助けに来たの」


 ニクスちゃんは一瞬驚いた顔をすると、私に柔らかく微笑む。


「そうなん? 助かるわぁ。ホンマありがとうな」


「う、うん。でも、なんだか別に助けに来なくても、大丈夫そうだね」


「そんな事あらへんよ。今も、こうして身動きとれんようなってるし」


 ニクスちゃんはそう言って苦笑すると、困り顔で首を傾げた。


「え?」


 身動きとれない?


 私はニクスちゃんとニクスちゃんの周囲を、確認するようにじぃっと見つめる。

 だけど、何も変わった物は無く、ロープなどで縛られた様子も無い。

 あえて言うなら、水着を着てお風呂に入っている事くらいだった。

 露天風呂を見まわしても、ニクスちゃんと小人さん達しかいない。


 何かで縛られてるわけでもないし、周りには小人さんしかいないもんね。

 うーん……。

 怪しいとしたら、水着に何かあるのかな?


「もしかして、今着ているその水着に、何か動けなくなるような魔法がかかってるの?」


 私がそう訊ねると、ニクスちゃんは苦笑して答える。

 

「ちゃうちゃう。これは、フルーレティって魔族が、男湯やで念の為に言うてくれたんよ」


「そ、そう」


 私は再び周囲を確認してみる事にした。

 今度は、誰かがいるかどうかではなく、女風呂との違いがあるかどうかだ。

 もしかしたら、女風呂には無かった何かの装置みたいな物があるかもしれないと、念入りに見まわす。

 だけど、女湯の露天風呂と同じような構造をしているだけで、特に変わった所は無いように見えた。


 わ、わからないよぉ。

 特に変わった物もないし、向こうと違う事なんて、ここに可愛い小人さんがいる事くらいだもん。

 小人さんの事、聞いてみようかな?

 うん。

 それが良いよね。

 もしかしたら、風の精霊さんかもしれないもんね。


「ニクスちゃん。一緒にいる小人さん達は?」


「風の精霊みたいやで」


 やっぱり風の精霊さん達なんだ。

 どうりで凄く可愛いわけだよ。

 なでなでしたい!


 私がそんな事を考えながら、風の精霊さん達を見ていると、白いお髭の生えた精霊さんと目が合った。


「ニクス殿。このお嬢さんは何方どなたですかな? 見た所、魔族ではないようですが?」


 きゃー!

 喋ったぁ!

 声も可愛い!


「ウチの友達のジャスや。可愛いやろ?」


 もう。

 ニクスちゃんったら。

 可愛いだなんて照れちゃうよぉ。


「そうですなあ。とても可愛らしいお嬢さんですなあ」


 ニクスちゃんもだけど、おまかわだよ精霊さん。

 って、そうだ。

 デレデレしてる場合じゃなかった。


「私、精霊さん達も一緒に助けに来たんだよ。捕まったって聞いたの」


「おお。そうでしたか。それはありがたい。ですが……」


 白いお髭の精霊さんが言い淀み、下を向くと、他の精霊さん達も暗い顔をして下を向いた。


 私がどうしたんだろう?

 みんなうつむいちゃった。

 何かあるのかな?

 もしかして、ニクスちゃんがお風呂から出られないのと一緒で、精霊さん達も出られないのかな?

 でも、原因がわからないままだし……。


「ねえ? ニクスちゃん。なんでお風呂から――」


 私が原因を聞きだそうとしたその時、背後から声が聞こえた。


「おいおいおいおい。何処行ったんだあ? プルソンさんよお。オレッチが女湯を覗いてる間に、露天風呂の扉が開けられてるぞ?」


 私はその声に振り返る。

 振り返って見えたのは、前世の男だった頃の私より太ったおデブさんが、露天風呂に入って来た所だった。


 女湯を覗いてた!?

 魔族お得意の変質者だよ!

 私にまだ気がついてないみたいだし、大事になる前に隠れなきゃ!


 そう考えた私が、慌ててお風呂にもぐって隠れようと入ろうとした時、ニクスちゃんが「あかん!」と言って私を止めようとした。


「ここに入ったら、二度と出られんようになるんや!」


「え?」


 ニクスちゃんが私を止めようとしてくれたけど、時すでに遅し。

 私は、すでに腰まで浸かってしまっていた。

 そして丁度その時、おデブさんがやって来てしまった。


「おいおいおいおい。何だ何だあ!? 侵入者が、やっぱりいるじゃあねーかあ」


 私は恐る恐るおデブさんに振り向く。

 そして、私はおデブさんの姿を見てたじろいだ。

 そのおデブさんはガラの悪そうな雰囲気で、身に着けている物も腰布と下駄だけで、それでいて全身のあちこちにピアスをつけていた。

 おまけにそのおデブさんはスキンヘッドで、血管が少し浮いている。

 更に止めで、私がたじろいだ姿を見たおデブさんが、舌なめずりをする。


「随分と可愛らしい侵入者じゃあねーかあ」


 ヤバいよ! 怖いよ!

 私、こういうガラの悪そうな人って、前世の頃から苦手なんだよぉ。


 その時、私がびくりとなった拍子に、体に巻いたタオルがハラリと落ちる。

 そしてその瞬間、おデブさんが大量の鼻血を噴出した。


「ぶふぉー!」


「ひぃー!」


 おデブさんが鼻を押さえて、私をにら……いやらしい目で見る。


「な、なんてーエロい体したガキんちょなんだ! オレッチでなければ、即死だったぜえ!」


 あー。

 うん。

 そっかぁ。

 うんうん。

 まあ、そうだよねー。

 知ってた知ってた。

 なんとなくそうなんじゃないかなって、私気がついてたもん。

 と言うか、またなんだね?

 もう嫌だこの手のタイプの魔族。

 お家帰りたい。


 私は、そっとタオルを拾いあげると、丁寧に体へぐるぐると巻きました。

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