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063 幼女の敵は昨日の友

 スミレちゃんがニクスちゃんの匂いを辿り、私達はフルーレティの根城へと到着したわけなのだけど……。


「ねえ。スミレちゃん本当にここなの?」


「間違いありませんなのですよ」


「う、うーん……」


 間違いないのかぁ。


「スミレ。アンタまさか、ジャスミンとお風呂入りたいだけなんじゃないでしょうね?」


 そう。

 スミレちゃんの匂いセンサーで探し出した、ニクスちゃんが連れ去られた場所。

 そこは、スーパー銭湯的なお風呂屋さんなのだ。

 しかも、建物はもの凄く大きくて、まるで温泉旅館のようなスケール感。


「むっ。幼女先輩とお風呂には入りたいけど、今がそういう時じゃない事位、私にだってわかってるなのよ」


「なら良いんだけど」


 リリィとスミレちゃんがそんなやり取りをしていると、お風呂屋さんの中から店員さんが出て来た。


「あら? さっきの子達じゃない」


 いきなり見つかったよ!?

 この店員さんって、サキュバスのお姉さんだよね?

 一先ず撤退しなきゃ不味いよね!?


「もしかして、お風呂入ってくの? どうぞ~」


 え?

 どうぞって、え?


 私が予想外の対応に目を丸くしていると、リリィが私の手を取って「どうも~」なんて言いながら、お風呂屋さんの中に入って行く。


 ちょ、ちょっと。

 リリィ!?


 すると、お風呂屋さんの中に入ってすぐに、他のサキュバスのお姉さんだった店員さん達から「いらっしゃいませ」と、次々に迎え入れられた。


「罠の可能性があるわね」


「十中八九罠なのよ。この建物に入った途端に、ニクスの匂いが消えたなのよ」


「やはり、スミレへの対策をうってきている様ね。それなら、あえて向こうのペースに合わせて、探りを入れるわ」


 リリィとスミレちゃんとアマンダさんががヒソヒソと話す。


 あ。そっか。

 うん。そうだよね。

 危ない危ない。

 私、騙される所だったよ!

 流石だよ3人とも!

 私も油断せずに、しっかり探りを入れるよ!


 と、思った時期が、私にもありました。

 その後の私達の行動はこうです。


 大人2枚子供2枚の入場料を支払って、アマンダさんだけ別行動をして、私はリリィとスミレちゃんの3人で脱衣所に向かいました。

 そして、脱衣所で服を脱ぎます。

 大浴場では湯船につかる前に、体を綺麗に洗う為に洗い場へ向かいます。

 そして私は、頭を洗いながら考える。


 昨日リリィと一緒にお風呂に入って、良かったかもだよね。

 おかげでスミレちゃんの裸を見ても、昨日と比べたら結構平気なんだもん。

 それにしても……。


 私は、横で体を洗っているリリィをチラ見する。


 昨日一緒にお風呂に入った時も思ったけど、リリィって本当に私と同じ9歳なのかな?

 ちゃんと出る所がちょこっと出てて、腰も少しだけきゅっとなってる。

 それに、顔立ちも綺麗で身長も高いから、黙っていれば中学生くらいに見えるんだもん。


 今度は、リリィとは反対側に座って体を洗っているスミレちゃんをチラ見する。


 スミレちゃんも、流石と言える抜群のプロポーションだよね。

 顔が綺麗で美人さん。

 もし私が男の子だったら、ロリコンだったとしても、これはやばいと思うなぁ。

 もの凄くスタイルの良い、美人なお姉さんだもんね。


 私は正面に映る自分を見る。

 そこに映るのは、2人と比べたら、あまりにも成長していない自分の姿だった。


 きっと、2人とも一般男性から見たら、もの凄く魅力的な女の子なんだろうなぁ。

 それに比べて私は、前世の私が思い描く、理想の幼女だよ!


「っじゃないよ!」


 私は頭をわしゃわしゃと洗っている途中で、正気に戻って大声を上げた。


 何呑気に、リリィとスミレちゃんのスタイルとかについて考えてるのよ私!?

 理想の幼女だとかも、今考えるような事じゃないでしょう!?

 しっかりしなきゃダメじゃない!

 って言うか、そもそもお風呂なんて入ってる場合じゃないよ!

 ただでさえ、スミレちゃんがニクスちゃんの匂いを追えないんだから、のんびり洗ってないで手がかりを探さないとだよ!


 私が大声を上げると、私の両隣にいるリリィとスミレちゃんが驚いて私を見た。


「どうかしたの? ジャスミン」


「もしかして、私が幼女先輩のお背中をお流ししても良いなのですか?」


「へ? 別に良いけど?」


「良いなのですか!? 生まれてきて良かったなのですよ!」


 生まれてきてって、大袈裟だなぁ。

 でもそうだよね。

 せっかくお風呂に一緒に入るんだから、流し合いしたいよね。

 って、そうじゃないよ!


「そうじゃなくて、ゆっくりお風呂なんて入ってる場合じゃないよ!」


 私がそう訴えるも、2人は「まあまあ」と言って、私をその場に座らせてきた。

 そして、私は2人に囲まれて、頭をわしゃわしゃと洗われる。

 そんな時だった。


「ジャスミン。気付いてる?」


 私は不意に、リリィに耳元で話しかけられた。


「え?」


 私がリリィの方を振り向こうとすると「そのまま聞いて」と、リリィに制止される。


「浴槽に二人。そして反対側の洗い場に一人。サキュバスがいるわ」


「幼女先輩。このままフルーレティ様の取り巻きのサキュバスを、引きつけるなのですよ」


 その時、ようやく私は気がついた。


 そっか。

 全然考えていなかったけど、私達は囮なんだ。

 よく考えれば、フルーレティに狙われているスミレちゃんと私が一緒に行動してるんだもんね。

 それで、アマンダさんだけ別行動なんだ。

 私達が囮になって、呑気にお風呂をはいっていると見せかけて、その間にアマンダさんが――


 と、私は考えていたのだけど、突然それが阻まれてしまった。


「きゃーっ!」


 私の悲鳴が浴場に響き渡る。


「さあ! 今こそお背中を流す時なのです!」


 ちょっと!

 どこ触ってるのスミレちゃん!?

 背中を流しても良いとは言ったけど、そこ背中じゃないよ!


「なら、私はこっちを洗ってあげるわジャスミン!」


 こらー!

 揉むなー!


「ちょっと! 2人とも! や、やめーっ! きゃん」


 私はもがき2人から逃れようとしたけれど、多勢に無勢。

 私は体の隅々の、ありとあらゆる所を洗われ続ける。


 もうやだ。

 変な声出ちゃったし恥ずかしいよ。

 前言撤回だよ。

 これ囮とかじゃないよね?

 絶対2人が欲望に忠実になってるだけだよね!?


「え? 待って? そこはっ! きゃ。い……や。やめ。誰か」


 私は2人から恐ろしいゴシゴシをされながら、周りに助けを求める。

 すると、サキュバスのお姉さんの1人と目が合った。


 今、私と目が合ったよね?

 お願い助けてー!?

 あれ?

 なんで目を逸らすの?

 なんでちょっと後ろに下がったの?


 こうして、サキュバスのお姉さんがドン引きする中で、私は綺麗サッパリに洗われました。

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